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専門家が「有事型」と認める小池百合子都知事は首相になれるのか

新型コロナウイルスの感染拡大以来、自治体の首長の存在感が増すとともに、その言動や施策への評価は分かれています。特に注目される1人は、首都東京の小池百合子知事で、「毀誉褒貶相半ばすることが有事型の指導者である証拠」と指摘するのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストで危機管理の専門家でもある小川和久さんです。小川さんは、小池氏が国政に乗り出した当時から即断即決の人だったというエピソードを披露し「有事型」の才を認めます。そして、首相を狙うのであれば、有事型の人間に共通する欠点を克服すべきと主張しています。

小池百合子は首相になれるか

今回は「小池百合子論」です。東京都知事としての小池さんについては、築地市場の豊洲移転、東京オリンピック・パラリンピックの会場問題だけでなく、コロナの件だけでも賛否が分かれる結果となっています。批判する側は、「コロナ対応を政治的なアピールの場にしている」などと言っています。

一方、米国の新聞ワシントン・ポストなどは「安倍首相はトランプ大統領で、小池都知事はクオモ知事」だと、コロナ対応で支持率を下げている米トランプ大統領と、逆に人気急上昇のクオモ・ニューヨーク州知事に例えて評価しています。コロナ対応で毀誉褒貶が相半ばするのは、小池さんが有事型の指導者である証明でもあるのです。

言うまでもなく、危機管理の要諦は拙速です。必要なことを適切なタイミングで実行できなければ国家国民を救うことができないからです。これは時間との勝負でもあります。なんとしても実現しなければならない目的を断行する。かりに法制度を逸脱した行動が生じたとしても、危機管理の目的を達成すると同時に、生じた問題を可及的速やかに健全化させることができて初めて、成熟した民主主義国家と言えるのです。

臨機応変ということは、場当たり的な動きの連続になるのは避けられません。いきなり新たな動きをするのですから、唐突な印象も生まれてくるでしょう。言ってみれば、独断も、場当たりも、唐突も、危機管理としては当然の帰結でもあるのです。

私は国会議員になる前から、小池さんを知っています。1992年6月、私の仕事場の3フロア上に事務所を構えていた小池さんが私の部屋にやってきて、誕生したばかりの日本新党から参院選に出馬した場合の勝敗を尋ねたことがあります。私が「いま出たら当選するんじゃないの」と言うと、「じゃあ出るわ」と言って数日後に出馬、当選に至ったような思い出もあります。

第1次安倍政権が日本版NSC(国家安全保障会議)の創設に向けた「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」を設けたとき、国家安全保障担当の首相補佐官だった小池さんと会議の議員として仕事をしたこともあります。その時も、体調不良に悩まされていた安倍首相を横目に、NSCの一角に食い込もうとする財務省を速攻で排除するなど、有事型の面目躍如たるところを見せました。

小池さんが即断即決の能力を備えていることについて、身近なお話しをしておきましょう。おなじみ西恭之さん(静岡県立大学特任助教)のケースです。

1994年夏、スタンフォード大学で政治学を学んでいた西さんが夏休みに日本の政治家のもとでインターンをしたいと言ってきました。日本の大学生には少ない積極性ですから、私は大臣経験者を含む数人の親しい政治家に西さんの要望を伝えました。しかし、それからあとは日本的な光景が展開され、時間ばかりが経過していきました。履歴書が欲しいとか、その内容を評価してからでないと返事できない、というのです。

それでは夏休みが始まってしまいます。そこで私は、まだ衆議院議員1年生だった小池さんに電話しました。小池さんは、その場でOK。日本に戻ったらすぐに顔を出して欲しいということになりました。私との信頼関係では、ほかに依頼した男性議員たちも同じようなものだったのですが、同じ私からの情報を前に、それをただちに評価して、可否を決められるかどうか、そこに政治家としての資質がのぞいてきます。

そんな小池さんです。難問山積の日本国の指導者として、特にコロナをはじめとする有事と向き合いながら国の舵取りをしていくという点では、抜きんでた能力を備えていることは間違いありません。

小池さんの致命的とも言える課題は、人の意見を聞くことに精力を割かないという点です。とにかく「私は『戦略オタク』」と言うくらい、よく本を読み、勉強もしています。私の意見を聞いてくれたことも少なくありませんが、やはり重点正面に広く目を配り、日頃から人材を配置して政策を練り上げておくことを怠っている印象は否めません。相手に話をさせず、自分の考えを喋りすぎる点は指導者としてあらためなければなりません。

前進することは得意でも、後始末ができないのも有事型の人間に共通する欠点です。小池さんとしては、常に出口戦略をはじめとする「後始末」をきちんとやってのける人材を動かしておく必要があります。

コロナの事態が収まり、中止が囁かれるオリンピック・パラリンピックの問題を乗り切ったとき、小池さんが東京都知事を跳躍点として日本国の頂点に立つことができるかどうか。それは、中曽根元首相が私に「首相になるために10年準備した」と述懐したような地道な努力を、小池さんなりに実行するかどうかにかかっていると思います。(小川和久)

image by: 小池百合子公式Facebook

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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