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マスコミはスルー。ひと目見て疑うべき戦闘機開発計画の問題点

7月7日、防衛省がF2戦闘機の後継機の開発計画を発表。新型コロナの問題もあるためでしょうか、マスコミ各社はその大枠のみを報じるに留まりました。軍事アナリストでメルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する小川和久さんは、これではレポートすらできないただの「ポーター」と厳しく指摘。防衛省の計画にはひと目で疑うべき点があると解説し、突っ込んで問いただすことができないマスコミに呆れ気味ながらも、今後の調査報道へのヒントを示しています。

戦闘機開発計画を疑わないマスコミって

国民の目がコロナに奪われているうちに、いろんなことがどんどん進んでいるようです。例えば、次の記事にあるような戦闘機の開発問題。

「防衛省は7日、2035年ごろから退役する航空自衛隊のF2戦闘機の後継機について、31年度に量産機の製造を始める基本方針を自民党に示した。ステルス性能など主要機能は原則、国内開発を目指す一方、米英政府や企業と部分協力する方針で協議を進めている。開発協力相手を年内に決定する方針も示した。

 

7日の自民党国防議員連盟の会合で示した案では、今年度から27年度までの8年間で構想、基本、詳細の設計を行い、24~32年度の9年間をかけて試作機を製造。地上試験は27年度から8年程度、飛行試験には28年度から7年程度かける。

 

国内開発を目指すのは、敵のレーダーに捕捉されにくいステルス性能▽味方と連携する「ネットワーク戦闘能力」▽探知機能(先進統合センサーシステム)──などとする案が出ている。

 

一方で米軍と一体的に作戦を遂行する「相互運用性(インターオペラビリティー)」は米国の支援を受け、同時期に新戦闘機開発を進める英国からはエンジン開発で協力を受ける案などを検討している。政府は米英との協議を進める」(7月8日付毎日新聞)

この記事を読んで、メルマガ『ニュースを疑え!』の読者のみなさんは、「あれ?」と思われたのではないでしょうか。時代の最先端をいく第6世代戦闘機だというのに、常識的に見ても開発期間が短すぎるからです。もう一度、記事に出た時間の流れを整理しておきましょう。

  1. 2027年度までの8年に構想、基本、詳細の設計を行う。
  2. その間、2024~32年度の9年間で試作機を製造する。
  3. 地上試験は27年度から8年程度、飛行試験には28年度から7年程度。

つまり飛行試験が終わるのは2035年度ごろ。ちょうどF-2戦闘機の退役が始まる頃に間に合うという寸法です。しかし、構想を描き始める2020年度から飛行試験が終わる2035年までの15年ほどで、本当に国産化が実現するのでしょうか。

メルマガ『ニュースを疑え!』は6月18日号で兵器の研究開発期間を特集しました。それによると、世界の空を飛び回ってきた戦闘機の開発には次のような期間が必要でした。
F-4(5年)、F-15(9年)、F-2(日米共同開発決定から12年)、F-22(19年)、F-35(19年)。
ハイテク化が進むほどに、F-35にみられるように長い期間を必要としていることはもとより、F-2のような日米共同開発となると、共同開発が決まるまでに紆余曲折があり、それから12年ですから、その分、余計に長い期間を必要としたことがわかると思います。

今回は、場合によっては英国も加わる可能性がありますから、米国を交えた3カ国での協議はそう簡単ではありません。そうなった場合の開発期間は、やはりもっと長く見ておかなければならないのではないかと思います。もちろん、共同開発ですから米国、英国が開発した技術を取り込むことで期間が短くすむ事も期待できないではないですが、その可能性は大きくはないと思います。

問題は、上記のような防衛省の方針について、マスコミが突っ込んだ記事を掲載していない事です。少なくとも、開発期間と開発費については疑問をぶつけていかなければなりません。記者が、レポートする立場の「レポーター」から、発表情報を運ぶだけの「ポーター」になって久しいとされていますが、ここは一つ奮起して、戦闘機開発問題の調査報道を期待したいと思います。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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