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2年後から年金額が毎年10月に変更?在職定時改定前に現制度を復習

65歳以降も厚生年金に加入して働く人が増えたことで、令和4年からは毎年10月に年金額が変更されることになりました。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、この「在職定時改定」について詳しく紹介するとともに、具体的な事例を用いて詳しく解説しています。

年金受給中の在職者の年金額を再計算して増額させるのはいつなのか?

65歳以降も厚生年金に加入して働く人が増加傾向ですが、それに伴って令和4年4月以降は毎年10月に年金額を変更する事が決まりました。これを在職定時改定といいます。

今現在は65歳以降に老齢の年金を貰いながら厚生年金に加入して働いてる人が、65歳以降働いた期間分を年金額に加えるためには退職して1ヵ月経つのを待つか、70歳誕生日を迎えるかのどちらかでした。

たとえば現在は68歳だとして、65歳以降も老齢厚生年金200万円貰いながら働いてるけど、この3年間働いた分はいつ年金に反映されるかというと退職(つまり厚生年金から外れるという事ですね)して1ヵ月経過しないと年金額を再計算しませんという制度なんですね。3年間働いた分が年金20万円になるのであれば、68歳の時に退職すれば220万円になるけども、退職しなければ200万円のまま貰い続けるという事です。

もし、退職しないとしても70歳になればそこで一旦再計算する(65歳から70歳までの60ヵ月で再計算)。(ちなみに70歳以降に働き続けても70歳以降は厚年には加入できないので、70歳以降の働いた期間で年金が増える事は無い。)それが、わざわざ退職しなくても令和4年4月以降の65歳以上の在職者は毎年10月に年金額を変更します。

なお、この令和4年4月からの在職定時改定の詳細事例は12月2日の有料メルマガで配信します。

事例と仕組みから学ぶ公的年金講座(月額770円税込み毎週水曜日20時にメルマガ発行)登録初月無料。途中で登録されてもその月の発行分はすべてお読みいただけます。

なので今回の無料メルマガ記事では在職者の年金を再計算する退職改定の現在の仕組みを復習してみましょう。ちなみに退職してから1ヵ月経過した月に老齢の年金額を再計算するというのは、65歳前の受給者も同じ仕組みです。65歳まで退職してない人は65歳時点で再計算します。

1.昭和29年9月20日生まれの男性(今は66歳)

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20歳になる昭和49年9月から昭和52年3月までの31ヶ月間は昼間大学生だったため、国民年金保険料を納める必要は無かった(平成3年3月までの学生は強制加入ではなかった)。しかし、将来の事を考えて任意で国民年金保険料を親が納めてくれた。納めた国民年金保険料は全額社会保険料控除として親が節税に使った。

昭和52年4月から平成11年8月までの269ヶ月間は厚生年金に加入。なお、この間の平均給与(平均標準報酬月額)は45万円とします。

平成の金融不況真っ只中だったので失業してしまい、平成11年9月からは国民年金保険料を納める事になった。失業したら特例で失業による保険料の免除ができるが、手続きを忘れたままだったので未納だった。

平成11年9月から平成15年3月までの43ヶ月間は未納だったが、平成15年4月に1年間(平成16年3月まで)の国民年金保険料前納をやった(1年間まとめて支払って一定の割引を受ける)。しかし、平成15年5月に丁度再就職先が決まって、厚生年金に加入する事になった。そうすると平成16年3月まで12か月まとめて支払った国民年金保険料は、厚生年金に加入した平成15年5月以降の11ヶ月分還付となる。普通は還付にはなるけども…直近2年以内に未納期間があると、その未納の部分に還付するはずの国民年金保険料を充てる事になる(充当という)。保険料の時効が2年なので、平成13年4月から平成14年2月までの11ヵ月充当(国民年金保険料納付済み期間となる)し、平成15年4月の1ヵ月も国民年金保険料納付済み期間。

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※ 注意

平成15年5月の2年前なら平成13年5月以降じゃないのか?と思われたかもしれないですね。国民年金保険料の納付期限はその月の保険料は翌月末までとなっています。4月分は5月末までに納めないといけない。5月というのは4月分の納付期限月に当たるので、2年1ヵ月前までが時効内になる。よって平成13年4月まで時効内。

なお、充当は時効直近2年以内になされますが、「もうすぐ時効にかかる!」という一番後ろの未納の方から保険料を充当して時効で保険料納められなくなるのを防ぐ。

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 平成15年5月から65歳前月の令和元年8月までの196ヶ月間は厚生年金に加入。なお、この間の平均標準報酬額は49万円とします。

20歳の昭和49年9月から60歳前月の平成26年8月までが国民年金強制加入期間(国年加入期間は31ヶ月+269ヶ月+11ヶ月+1ヶ月+136ヶ月=448ヶ月)。

さて、この男性は61歳から厚生年金が貰えてる人ですが、スキップして65歳からの年金額を算出します。

・老齢基礎年金→781,700円÷480ヶ月×448ヵ月=729,587円

・老齢厚生年金(報酬比例部分)→45万円×7.125÷1,000×269ヵ月+49万円×5.481÷1,000×196ヵ月=862,481円+526,395円=1,388,876円

・老齢厚生年金(差額加算)→1,630円×465ヵ月-781,700円÷480ヶ月×405ヵ月(20歳から60歳までの国民年金同時加入してる厚年期間)=757,950円-659,559円=98,391円

65歳時点で65歳未満の妻(56歳とする)あり。

よって65歳時点の年金総額は老齢基礎年金729,587円+老齢厚生年金(報酬比例部分1,388,876円+差額加算98,391円)+配偶者加給年金390,900円=2,607,754円(月額217,312円)

ちなみに報酬比例部分のみの年金月額は115,739円(年額1,388,876円)とします。

さて、65歳(令和元年9月)以降も厚年に加入して働いていた。給与は34万円(標準報酬月額34万円)とします。賞与は無し。65歳以降に年金月額115,739円+34万円が47万円を超えると、年金が停止されてくるが47万円未満なので年金停止は無い。その後、令和3年12月25日をもって退職したとします。65歳(令和元年9月)からの厚生年金期間は27ヶ月とします。

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※ 注意

月の途中で退職した場合は退職月の前月の11月分まで厚生年金期間を数える。12月31日のように月末退職はその退職月まで数える。

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そうすると退職した令和3年12月25日から1ヶ月経った日(1月25日)の属する月である1月分からの年金が以下のように変わる。

増える報酬比例部分の年金は物価とか賃金率を加味せずに単純計算すると、34万円×5.481÷1,000×27ヵ月=50,315円

差額加算は1,630円×15ヵ月=24,450円

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※ 注意

差額加算はなぜ15ヵ月しか増えてないのかというと、ここは480ヶ月が上限だから。65歳時点で465ヵ月厚年期間があったのでそこから加入した厚年期間は15ヶ月分まで反映する。

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そうすると令和4年1月分の年金からは、65歳時点の2,607,754円+報酬比例部分50,315円+差額加算24,450円=2,682,519円(月額223,543円)となる。退職した日から1ヶ月経てば、つまり退職月の翌月から年金が変わるわけですね。

なので令和4年2月15日支払い年金額は12月分217,312円+1月分223,543円=440,855円(所得税や介護保険などの社会保険料は考慮してませんのでご注意ください)

で、余談ですがココで1ヵ月経つ前に死亡したとします。たとえば1月10日に死亡したとします。そうすると退職日から1ヵ月経過する前に死亡してしまうと年金額を再計算しない。何が言いたいかというと、年金は死亡した月分まで貰えますよね。死亡した月分までという事は1月分まで。でも死亡者は死亡した月の1月分だけでなく12月分も貰えてません(2月15日が来る前に死亡したから2ヶ月分貰えてない)。

この時は一定の遺族がこの2ヶ月分の年金を未支給年金としてもらう事になる。この未支給年金を貰う時はさっきの440,855円を貰うのかというと、退職から1ヵ月経過する前に死亡したので再計算する前の217,312円の2ヶ月分である434,624円を未支給年金として一定の遺族が貰う事になる。未支給年金を貰う遺族は、本人死亡時に生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、3親等以内の親族の順で最優先順位者が貰う。

まあそれはともかく、在職中の人の年金額が変わる時は退職してから1ヶ月経った日の属する月か、65歳時点、70歳時点の3点で年金額を変更するというのは現在のやり方なので覚えておきましょう。

※ 追記

年金の繰上げで、本来の支給開始年齢より早く年金を貰ってる人は本来の年金支給開始年齢で年金を再計算する。ちなみに本来の支給開始年齢前に退職しても年金額は変更しない。

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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