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危機管理のプロが激怒、政府「専門家の意見を聞いて検討」の絶望

首都圏の知事から急かされ2度目の緊急事態宣言を発出した政府は、京阪神の知事からの要請にも「専門家の意見を聞いて検討」と保留。結局発出はしたものの、悠長で緊張感のない対応に絶望感を抱いたと語るのは、軍事アナリストで危機管理の専門家でもある小川和久さんです。小川さんは主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で、未知のウイルスとの戦いに必要な戦略を数々提言してきましたが、その声は届かず、本来そうした提言を諦めずに続けるべきマスメディアが、その役割に無自覚でいることにも苦言を呈し嘆息しています。

「専門家の意見を聞いて検討する」だって(怒)

7日に1都3県に緊急事態宣言が出されました。それに到るプロセス、そして京阪神の2府1県からの緊急事態の宣言要請に対する政府の姿勢を見て、ますます絶望感を深くせずにいられませんでした。

政府は京阪神からの要請に対して、なんと、「専門家の意見を聞いて検討する」と回答したのです。そんなアホな。緊急事態ですよ。緊張感を持ってコロナ対策を進めているのであれば、そんな悠長なことを言っていられる訳がありません。

それに、初めてならまだしも、2回目の緊急事態宣言です。宣言を出すのに専門家の意見を聞かなければならないというのは、少なくとも最初の緊急事態宣言を教訓とし、それなりに備えていればあり得ないことです。それなのに、まるで押っ取り刀のような慌てふためきぶりで、一方ではだらだらと小田原評定を繰り返しています。

私は今回の新型コロナウイルスについて、その正体がわかり、ワクチンなどが普及し、後遺症の出方も明らかになるまでは、最も危険なウイルスとして扱う必要があると言い続けてきました。正体がわかっていないのに、インフルエンザより死者が少ないなどというたわ言で片付けるべきではないとも指摘してきました。

同時に、今回の新型コロナウイルスは武力侵攻以上の脅威と捉えるべきだとも、政府に危機感の喚起を求めてきました。ウイルスは全人類の隣にいて、いつ牙をむくかも知れないからです。

その立場から眺めると、日本の現状は、比較すると新型コロナウイルスより対処が難しくない一定規模以下の武力侵攻を防ぐことができず、攻め込まれ、国土の一部を占領されているに等しい状態にあります。しばしば取り上げられる離島防衛の問題も、コロナ対策の現状を見れば対処能力が皆無だとわかります。これは自衛隊や海上保安庁の能力の問題ではなく、司令塔たるべき政府に国際的に通用する能力が備わっていないからです。

こんな政府に日本の安全を任せておいてよいのか、と暗い気持ちになりますね。しかし、仮に政権交代したとしても事態が好転するとは、日本国民の誰もが思っていないでしょう。政党も政治家も能力に欠ける官僚機構に丸投げし、能力と志を持つ数少ない官僚のほうも限界の中で苦悩する構図は変わらないからです。

この悪循環を打開できる位置にいるのは、実はジャーナリズムなのですが、新聞にもテレビにも、民主主義を機能させるうえで納税者の代表の中心にいるのが自分たちだという自覚が見られないのが残念です。

崇高な理想を掲げている日本新聞協会や民間放送連盟、そこに加盟する各社の皆さん、声を上げてください。キャンペーンを張ってください。どのような取り組みであれば事態を打開できるのか、それを自ら示して、連続的なキャンペーンという形で政府と与野党を問い詰め続けないことには、いかに医療現場の苦闘を伝えたとしても、政府を動かす効果は限られています。そのジャーナリズムもアテにならないとは。自ら考え出す能力を備えず、官僚機構に丸投げとは。ああ、しんど!(小川和久)

image by: 首相官邸

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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