日本国民全員が20歳から60歳まで支払う義務がある国民年金保険料。しかし、コロナ禍などで失業し、所得が減ってしまった人も多く見られます。そんな人たちにも「保険料を支払え」となるのでしょうか? 今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では、著者のhirokiさんが「国民年金保険料の免除」について詳しく説明しています。
年金保険料を全く支払ってない月分も年金額に反映してくる年金の免除制度(全額免除)
国民年金保険料は令和2年度は16,540円で、令和3年度は16,610円です。今から60年前の国民年金始まりの時は月額100円だったんですけどね(笑)。現在は結構高いですよね。
昔の人は社会保険料低かったけど、社会保障がまだ脆弱だったので高齢の親や祖父母の生活費は大黒柱の人が自己負担でやりくりしていた。
昔は自分の稼ぎで直接に高齢者の人を養うのが、現代は社会保障が担う形に変わった。核家族化が昭和30年代は進んでいったからですね。
さて、この国民年金保険料を支払うのはこの間の被保険者の話をした中の、国民年金第1号被保険者の人達です。1号被保険者は約1,450万人が対象。
どういう人が国民年金第1号被保険者になるのかというと、自営業の人とか自由業、学生、失業中の人等。
国民年金は20歳から60歳までの40年間(480ヶ月間)が強制加入となり、国民年金第1号被保険者の人は40年は支払う義務があるんですね。約17,000円×480ヵ月=816万円の保険料を支払う事になります。
毎月の負担がなかなか大きい国民年金保険料ですが、令和2年からコロナのせいで所得が減った人や、失業者の人が多くなりましたよね。
自分の目の前の生活を生きるだけで精いっぱいの状況になったりします。長い人生で安定して所得があるという状況とは限りません。
でも20歳から60歳までは国民年金保険料を支払う義務がある。未納にし続けると財産を差し押さえられたりという事もあります。
差し押さえは特に会社経営などをされている人にとっては社会的信用を失い、取引銀行が無くなりかねない。それでも保険料支払え!となるのか。
実は国民年金保険料は免除してもらう事が出来ます(前年所得によりますが)。しかも保険料を全く支払わなくても、将来の老齢基礎年金額に反映するという民間企業ではありえない素晴らしい仕組みになっています。
たとえば令和3年度の老齢基礎年金満額は780,900円ですが、20歳から60歳まで保険料を一切払わない免除にしてもその半分の390,450円の老齢基礎年金が貰えるわけですね。
なぜかというと65歳からすべての人に共通して支給される、国民年金からの老齢基礎年金には給付の半分(2分の1)の税金が投入されているからです。
なお、平成21年3月までは3分の1が基礎年金に反映。税金としては令和3年現在で一般会計の社会保障関係費から11兆円ほどが国民年金に投入されている。
だから、保険料を全額免除してもらってもせめて税金分が将来は年金として支給されるわけですね。
なので将来は年金を当てにしてないから、保険料は支払わない!未納にする!…という人は、税金の旨味すら放棄している事になり、自ら積極的に損をしている事になる。
保険料支払う余裕が無いから…と一応保険料を免除にしてる人は、せめて将来は税金分がしっかり貰える事になる。
なお、国民年金保険料は市役所または年金事務所で免除手続きをする必要がある。ものの数分で手続きは終了する。
しかも、一度の手続きで翌年6月まで全額免除になるだけでなく、過去に未納があるなら最大過去2年1ヵ月の未納部分が免除扱いになる。
ちなみにこの全額免除は国民年金第1号被保険者1,450万人のうち、約40%ほどの人(約580万人)が利用している。概ね平成10年頃から30%ほどの人が全額免除を利用している。
なお、サラリーマンや公務員などの国民年金第2号被保険者の人達(約4,400万人)は保険料を免除するという制度は無い。
一部、産前産後や産休などを取得されてる人が保険料を免除する産前産後免除や育児休業免除制度はある(本人も会社も保険料負担しなくていいが、保険料支払ったものとみなすので将来の厚生年金は減らない)。
サラリーマンや公務員の人は会社が毎月お給料を出してくれるからですね。そこから厚生年金保険料を天引きするから未納にする事はできないし、ちゃんと会社が給料を支払ってくれるのに保険料を免除にする必要は無い。
さて、国民年金保険料免除は非常に有難い制度なのですが、保険料全額免除を利用していく過程を見ていきましょう。
なお、老齢の年金を貰うには保険料納付期間が最低10年以上の受給資格期間が無ければならないですが、この10年の中には免除期間も含める事が出来る。未納にしてる期間はこの10年には含まない。
他にカラ期間という特殊な期間も10年に含めたりしますが、それは今日の記事では割愛します。
1.昭和64年1月7日生まれの男性(今は32歳)
国民年金強制加入となる20歳の平成21年1月から平成23年3月までの27ヶ月間は大学生であり、時々アルバイトをしていたが国民年金保険料を支払う余力は無かった。
なので、市役所で学生納付特例免除を手続に行い、この27ヶ月の間は国民年金保険料は全額免除になった。
学生特例免除は学生本人の前年所得がおおむね118万円以内であれば適用される(世帯主や配偶者の所得は見ないから免除されやすい)。
学生免除の適用は過去2年1ヵ月以内の未納があればそこまで遡り、翌年3月まで使える。4月から翌年3月までの単位。
ただし、この27ヶ月間は普通の全額免除とは違って将来の老齢基礎年金の額に反映しないが、受給資格期間10年には組み込む。
平成23年4月から民間企業に就職し、平成26年7月までの40ヶ月間は厚生年金に加入する(国民年金第2号被保険者)。厚生年金保険料は給与天引きとして毎月支払う。
失業して平成26年8月からは国民年金第1号被保険者となり、自ら国民年金保険料を支払う事になった。しかしながら退職してしまって、そんな保険料を支払う余裕は無かった。
また国民年金保険料の全額免除を利用したかったが、前年所得は会社に在籍中でそれなりの所得があったから無理だと思ったが、退職特例免除が使える。
退職特例免除で国民年金が全額免除にできるという事だったので、失業手当の受給者証をもって手続きをした。退職特例免除は本人の前年所得は除外して、配偶者と世帯主の所得を見る。退職日の翌々年6月まで最大使える。
ちなみに普通の全額免除基準は(扶養親族などの数+1)×35万円+22万円が所得基準(世帯主や配偶者も基準以内の所得でなければならない)。もし自分だけなら前年所得57万円以内という事。
平成26年8月から平成27年6月までの11ヶ月間を退職特例免除を利用した(将来の老齢基礎年金の2分の1に反映)。
平成27年7月から平成30年5月までの35ヶ月分の国民年金保険料を納めた。
その後、平成30年7月に起こった西日本を中心とした豪雨災害(平成30年7月豪雨)により、住宅や家財に深刻な被害を受けた。
それにより保険料支払うどころではなくなり、国民年金の災害特例免除を利用した(住宅や家財のおおむね2分の1以上の被害が出ると使える免除)。
災害特例免除は災害を受けた月の前月から翌々年の6月まで最大使える。平成30年6月から令和2年6月までの25ヵ月は災害特例免除による全額免除(将来の老齢基礎年金の2分の1に反映)。
令和2年7月から令和4年6月までの24ヵ月は未納にして、令和4年7月から令和10年6月までの72ヵ月間は国民年金保険料を納めた。
令和10年7月から60歳前月の令和30年(2048年)12月までの246ヶ月間は国民年金保険料は全額免除にした。
このように全額免除は所得だけでなく、不測の事態でも利用できたりするので頭の隅に置いておきましょう。
さて、この男性の65歳からの老齢基礎年金を算出してみましょう。
まず、年金期間の整理。
ア.保険料納付済み期間→40ヵ月+35ヶ月+72ヶ月=147ヶ月
イ.普通の全額免除期間→246ヵ月
ウ.学生免除→27ヵ月
エ.退職特例免除→11ヵ月
オ.災害特例免除→25ヵ月
カ.未納→24ヵ月
年金受給資格期間は未納を除く、456ヶ月(10年以上は満たしている)となる。なお、未納期間と学生免除の期間は年金額には反映しない。
・老齢基礎年金→780,900円÷480ヶ月×(納付147ヵ月+普通の全額免除246ヵ月÷2+退職特例11ヵ月÷2+災害特例免除25ヵ月÷2)=780,900円÷480ヶ月×288ヶ月=468,540円
「÷2」という部分が2分の1に反映しますという意味です^^
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