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国民の命と経済が犠牲に。菅総理「五輪絶対開催」は最悪の判断ミスだ

多くの国民から東京五輪に関して中止や延期を求める声が上がる中、G7首脳オンライン会議でその開催の決意を示した菅首相。予定通りならばあと5ヶ月で開会式を迎えることとなりますが、一般国民へのワクチン接種の目処も立たぬ中、果たして開催は可能なのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、大会を日程通りに行うための条件を検討。さらに、東京五輪を「コロナに打ち勝った証」とするための意外な案を提示しています。

ワクチン敗戦で五輪を開催する条件は?

G7首脳会議で菅首相は五輪を開催するというが、それまでにワクチン確保のめどもなく、どうすれば五輪を開催できるのかを検討しよう。

前回、五輪開催をあきらめて、選挙に負けないようにした方がよいのではないかと言ったが、逆に菅首相は、五輪を開催するとG7首脳会議で宣言した。

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それなら、五輪を開催できる条件を検討しようと思う。

現時点で、7月までに国民全員分のコロナワクチンの確保が不可能になっていることが明確化している。五輪開催までに医療従事者のワクチン接種ができるが、65歳以上の人の少数にワクチン接種が行える程度の状況になっている。

2月の実績を見ると、ファイザー製は、週に20万人分が確保できる程度であり、月80万人分であり、6月までに400万人分が確保できる程度である。医療従事者400万人分が確保できる程度だ。

アストラゼネカ製のワクチンは、全量日本で生産するというので、このワクチン生産量で日本の運命が決まる。6月末までにどれだけの生産ができるかですが、初期からフル生産はできないので、どれだけ立ち上がりが急峻にできるかにかかる。

そのワクチンは、4月から供給できるというが、初期には大量生産ができるはずがなく、週20万人分とすると、月80万人分で6月までに240万人分となり、65歳以上の3,000万人分には、足りない。やっても3ヶ月で1,000万人分でしょうから、1/3分の確保である。もう少し多くなる可能性はあるが、全員には届かないはず。

ということで、残念ながら、ワクチン接種ができない状態で、五輪を開催することになる。

菅首相は、東京五輪は、「コロナに打ち勝った証」「安心安全な大会にする」として行うというが、残念ながら、コロナ感染流行中での開催となる。

この状態で五輪を行うことになることをまず、前提として、どうすれば、五輪を行えるかの条件を探るしかない。「無理が通れば、道理引っ込む」であり、大きな犠牲を覚悟した方がよい。

五輪の試合は無観客で行うことであり、聖火リレーも観客なしで行うしかないか、声を出さない条件で観客を少し入れるかでしょうね。3月から始まるので、島根県丸山達也知事が言うように聖火リレーを中止して、車で聖火を運ぶ手もあると思う。

五輪開催では、五輪選手には、世界的にワクチンを優先的に接種してもらい、試合に来てもらうことが必要となる。

もし、接種できないなら、日本で試合前にワクチン接種をしてから競技に出ることも考える必要になる。このワクチンを優先的に確保しておくことである。

東京五輪直前の7月にコロナが蔓延して、1日1,000人もの新規感染者が出ると、国民の健康も守れない、もちろん選手の健康を守れない状態で五輪というのはおかしいので、五輪期間中は、感染拡大しないことが重要になる。

ということは、五輪期間前に、十分感染者数を抑え込むことが必要となる。

だとすると、3月以降も緊急事態宣言と同じレベルの対策をし続けることが必要となる。特に飲食は午後8時以降は営業禁止、GoToトラベルも東京五輪終了以降に再開する方がよいことになる。感染者数を7月五輪開始までは徹底的に抑えて、五輪開催に備えるしかない。

大阪府や兵庫県、京都府などは、2月末で緊急事態宣言解除を要請するというが、西村担当大臣からは、まだ早いと述べているが、その理由がわかることになる。政府は緊急事態宣言の早期解除を中止する方向で検討しているとも伝わる。

経済学者からも「三たびの宣言発出に至れば、それこそ経済は致命的なダメージを負う」との警告が上がったいるが、政府は今までは聞かなかった提言を聞いているのは、五輪開催優先だからである。

五輪に備えるために、感染者数をなるべく小さくしておきたいということである。もう1つ、問題となっているのは感染者数の減少が止まっている点であり、新規感染者の前週比を見ると、愛知と岐阜は下降している一方、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、福岡の8都府県で上昇した。

新規感染者数が300人以下にならないで、東京都小池知事はそれがわかっているので、延長も視野にいている可能性がある。

しかし、その結果は、7月まで8時以降の営業禁止で飲食店を全滅させて、地方のホテルや旅館も旅行会社も多くが倒産することになり、それでも五輪を行うということになる。

経済的な損失が大きくとも五輪を行うのか、経済的な損失を抑えるために五輪を中止するのか、その判断をするべきであるが、菅首相は、事情を知ってか知らずか、五輪絶対開催という判断をしたようである。五輪中止だと4.5兆円の損失になるというが、今や五輪開催すると、その10倍程度の損害になるとも言われている。

このため、失業者数は20万以上になり、日本経済を大きく痛めることになる。特に地方は大変なことになる。

このため、恐らく五輪を開催すると、自民党は選挙も負けることになる。経済的な損失が大きくても、五輪を行う自民党に国民は愛想をつかす。

ここで、一発逆転を狙うなら、菅首相は、G7首脳達にワクチンの日本への優先的な割り当てを行ってもらい、6月までに全国民分を確保することである。

もう1つが、五輪を12月まで、または2022年まで延期して、ワクチン供給を確保してから五輪を行う手である。

そうすれば、ある程度の国民にワクチン接種を行え、集団免疫ができて、コロナ感染の拡大を心配することなく、安心して五輪を行えることになる。これなら、東京五輪が「コロナに打ち勝った証」になる。

菅首相が強気で7月五輪開催を主張するからには、ワクチン確保が十分にできたことを示していると思いたいが、河野担当大臣や厚労省官僚の弱気の発言を聞くと、そうとも思えない。

ワクチン確保なしに7月五輪開催を主張する菅首相の判断力を疑うことになる。もう1つの12月または2022年五輪開催のための交渉を東京五輪組織委員会がしているとも聞いていない。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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