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軍事アナリストが呆れる「戦えない国」ニッポンの愚鈍なコロナ対策

4都府県に出されている緊急事態宣言は、愛知と福岡を追加し6都府県に拡大され継続される見通しとなりました。一方で、大型商業施設やイベントの自粛は緩和が検討されていると伝えられ、日本のコロナ対策の迷走もまた継続の様相となっています。メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんは、危機管理の専門家としての立場から、国や地方のリーダーへの提言を続けていますが、ワクチン接種の優先順位一つをとっても、わが国の危機意識の欠如が現れていると米国と違いを指摘。ほかにも数多くの問題視すべき事例を上げ、教訓にすべきと警鐘を鳴らしています。

コロナで露呈した「戦えない国・日本」

連休明けの講義や講演のためにレジュメを作っています。テーマのひとつは、新型コロナウイルス感染症と日本の危機管理です。第5波以降に迅速に対処するため、未知の感染症が出現したときのため、国の防衛能力を高めるために、これまでの取り組みから教訓を学ぶためです。

しかし、予想していたことではありますが、考えるほどに問題の深刻さに直面することになりました。申し上げるまでもなく、危機管理の要諦は拙速と臨機応変です。時間との勝負でもあります。必要なことを適切なタイミングで実行できなければ国を守り、国民を救えませんから、首相はなんとしても実現しなければならない事柄を断行する必要があります。

ときには、法制度を逸脱した行動が生じることもあるかも知れません。そんなとき、目的達成と同時に、生じた問題を可及的速やかに健全化させるのが成熟した民主主義国というものです。それが日本の場合、スピードだけでなく臨機応変の姿勢に決定的に欠けているのです。

例えばワクチン接種推進担当大臣の河野太郎さんは、テレビ番組でもワクチン接種の優先順位について具体的に話すことができませんでした。このメルマガでもご紹介したように、米国の全米アカデミーズが優先順位を提示したのは昨年10月2日のことで、ホームレス施設まで含む5段階が明示されていました。それだけでなく、米軍への接種は12月の段階で始まっていました。

日本は医療従事者への接種が2月17日に始まりましたが、重要インフラ、清掃、食料品販売、流通などに従事するエッセンシャルワーカーや、国の安全を支える消防、警察、海上保安庁、自衛隊の必要な人員に優先する考えは示されていません。国家社会の安全なくして、医療活動もあり得ないことが理解されていない結果です。

ワクチンを接種する人員が足りないといいますが、英国などがボランティアに短時間の講習をして人員不足を補っているような形は、筋肉注射なのでできるはずです。

これは、24年間放置されてきた化学テロ対策について、厚生労働省が解毒剤の投与を消防士もできるようにしたことを見れば、法律が障害になって不可能ということはありません。医官や看護師を割くように求められる自衛隊には限界があることも理解されていないようです。

感染拡大につながりかねない路上飲みなどについても、罰則規定を持つ都道府県の迷惑防止条例の解釈変更で対処するという知恵も出てきません。

高齢者に接種するための大規模施設を都心に設置することについても、会場まで公共交通機関を使うことによる感染リスクが無視されており、なぜ周辺部に分散しないのか、医療関係者からも疑問が出ています。

米国、英国などのワクチン製造会社との契約をリーガルベースで縛ることもできていませんし、政府が同時進行で国内の製薬会社を全力で支援し、今回のワクチンのみならず、将来的な感染症への備えを固める動きも皆無です。

以上を見るだけでも、何を相手にした場合にも日本が「戦えない国」であることは一目瞭然です。そんな状態から抜け出すためにも、数々の事例は貴重な教訓となるはずです。政府は言い訳などせず、問題点を直視し、解決に取り組んで欲しいものです。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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