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御用“返上”学者、尾身会長の反乱に激怒。菅首相の五輪強行ウラに安倍氏の影

ただただ「安心安全な五輪」と繰り返すのみで、国民に対して安全を担保する方法を説明するどころか、開催に関する提言を出すとした専門家を敵視する姿勢さえ見せていると伝えられる菅首相。五輪がさらなるパンデミックの引き金になりうるとも言われる中、首相が五輪開催を断念できない理由はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、その裏に菅首相の総裁再選を巡る「綱引き」が存在すると指摘。そこには、安倍元首相の思惑が大きく関わっていました。

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尾身氏を敵視する菅首相の背後に安倍前首相の圧迫感

このところ、安倍前首相の再再登板を待望する声が、鳴りを潜めている。安倍氏自身が菅首相支持を、下記のようにテレビ番組で表明して以降、菅政権の継続が自民党内の既定路線になりつつあるからだ。

「総裁選挙は去年やったばかり。1年後にまた総裁を代えるのか。自民党員であれば常識を持って考えるべきだし、当然、菅首相が総理の職を続けるべきだろうと思う」(5月3日、BSフジ・プライムニュース)

総裁任期が今年9月末までだが、という質問に答えたこの放送の時点では、発言の本気度に疑問があった。安倍氏に再再登板の意欲があるとしても、本心を明かすはずがない。建前論や常識論で隠すのが常道である。

しかし、その後も、安倍前首相はこの種の発言をメディアや会合の場で続けた。

「しっかり菅政権を支えながら政策遂行に我々も協力していきたい」(5月24日、ポストコロナの経済政策を考える議員連盟会合にて)

「菅政権はたった1年しかたっていない。政権には春もあれば冬もある。歯を食いしばって、みんなで支えていくべきではないか」(5月26日発行、『月刊Hanada』)

こうなると、まんざら本心を隠して三味線を弾いているとも思えない。どれだけ菅内閣の支持率が落ち続けようと、いかに安倍氏を担ぐ声が党内に高まろうと、菅支持の姿勢を変えない覚悟が固まっていると信じるほかなさそうだ。

むろん、安倍氏が菅氏を思いやっているわけでもなければ、後進を育てる度量や奥ゆかしさを持っているわけでもない。モリ・カケ、桜を見る会、1億5000万円疑惑など、説明責任から逃走中の問題を抱えたまま、新型コロナという国難に立ち向かう自信がないだけのことだろう。

それでも、不人気に喘ぐ菅首相にとっては天の助けに違いない。なにしろ、安倍氏の再再登板がいちばんの脅威だったわけである。当の本人が、支持すると触れ回っている。菅首相は欣喜雀躍、勇気凛々といったところだろう。

安倍氏が実質的オーナーである最大派閥の細田派と、第二派閥の麻生派がまとまり、続投への流れができれば、竹下派も追随する。すでに菅支持を表明している二階氏は幹事長に留まるため、党内の反乱分子を抑えて主導権を握ろうとするに違いない。

では、菅首相の再選は決まったも同然なのか。そこが難しい。コロナと東京五輪・パラリンピックという不確定要素がいぜんとして存在しているからだ。

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安倍氏が菅続投を支持するというのは、あくまで混乱なく五輪を終えることが前提だろう。オリンピックはヨーロッパに残された権威の砦であり、IOCはそれを背景に開催を迫っている。

安倍氏は福島第一原発の汚染水について「アンダーコントロール」と世界にウソをついてまで五輪を日本に招致した張本人である。まさか、新型コロナで五輪中止に追い込まれてもなお、菅支持の姿勢を変えないとは、とうてい思えないのだ。

大会を強行したはいいが、選手や関係者にクラスターが発生したり、外部と遮断するバブル方式がうまくいかずに、「コロナ変異株の祭典」(仏ル・モンド紙)が現実になった場合、“五輪敗戦”の烙印を押され、菅政権の責任は免れないだろう。

安倍氏の発言で続投の芽が出てきたことによるプレッシャーのせいか、最近、菅首相の目の色が変わってきた。五輪をやり遂げたい。とにかくワクチンを打ちまくり、なんとしても7月21日から9月5日までの長丁場を乗り切りたい。そう意気込んだ権力者の耳目には、感染症対策専門家のあたりまえの忠告さえ、邪魔になる。6月4日のアエラ・ドット(「『黙らせろ』尾身会長の”謀反”に菅首相が激怒 意地の張り合いで権力闘争が激化」)に以下のような記事が掲載された。

東京五輪・パラリンピック開催をめぐり連日、新型コロナウイルス感染リスクについて強い警告を発している政府対策分科会の尾身茂会長に対し、菅義偉首相が激怒しているという。「『黙らせろ。専門家の立場を踏み越え勘違いしている。首相にでもなったつもりなんじゃないか』などと怒りを爆発させています。尾身会長を菅首相が最近、ひどく疎んじているのは間違いありません。もともと御用学者として側に置いていた尾身会長が謀反を起こし、自分の敵になったという意識が日に日に強くなっています」(政府関係者)

英国やインドなどからの変異ウイルスが猛威をふるい、緊急事態宣言下にある現在、政府の専門家会議のトップである尾身氏が、東京五輪開催について下記のような警告を発するのはあたりまえのことである。

「我々は五輪を開催するかどうかの判断はする資格もないし、するつもりはない。しかし仮に五輪を開催する決断をなされた場合、当然、開催に伴う国内の感染への影響があって、分科会は我が国の感染をどう下火にするか助言する立場にある」(6月1日、参院厚労委員会)

「パンデミックの状況でやるというのは、普通はない。やるなら、開催の規模
をできるだけ小さくして、管理の体制を強化するのが五輪を主催する人の義務
だ」(6月2日、衆院厚労委員会)

「なるべく早い時期に、我々の考えを正式に、しかるべきところに表明するのが我々の責任」「スタジアムの感染対策は組織委員会がプレーブックでしっかりやろうとしているが、スタジアムのなかだけを議論しても意味がない」「ジャーナリストやスポンサーの行動については、選手よりも懸念がある」(6月3日、参院厚労委員会)

開催するならリスクを洗い出して、その対策を助言し、感染拡大を防ぐ義務がある。その具体的な提言を近々、出したいと表明しているのだ。なぜ、これに「黙らせろ」と憤慨しなければならないのか。提言してもらえばいいではないか。

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だが、政府は分科会に諮問する気は毛頭ない。官房副長官を議長とし関係省庁や東京都の幹部職員、大会組織委員会で構成する「新型コロナウイルス感染症対策調整会議」でこと足りるというのだ。感染症対策の専門家は、あくまでアドバイザーとして二人が入っているだけ。これでは心もとない。だからこそ、尾身会長は専門家による提言を発表したいというのだ。

経済との両立は可能と甘くみていた菅首相のコロナ政策はこれまで失敗を重ねてきた。「専門家のご意見をうかがいながらやっている」と、その責任をなすりつけられてきたのが分科会だ。このまま五輪に突入し、変異ウイルスの集中、分散で日本が世界のコロナ情勢を悪化させるようなことになったら、専門家は何をしていたのかと批判される。今のうちに、言うべきことは言っておかねばならないと思ったのだろう。御用学者と評され続けてきた尾身氏ら分科会メンバーの、並々ならぬ決意がうかがえる。

ところが、これについて、田村厚労大臣は「自主的な研究の成果の発表だと受け止める」と、相手にしない姿勢を示した。露骨な拒否姿勢である。首相への忖度も度を越している。

菅首相が東京五輪の成功に自信満々かというと、そうではない。もし大失敗に終わったら…と募る不安を癒し、「五輪決行すべし」と勇気を与えてくれるのは、やはり旧来の盟友たちである。

その一人、高橋洋一内閣官房参与は5月4日に菅首相を訪ね、30分余り話し込んだ。元財務官僚の高橋氏は第一次安倍内閣の官邸スタッフだったころ、当時の総務大臣、菅氏に、ふるさと納税のアイデアを授けたとされる。おそらくこの30分あまりの間に、五輪開催を強く進言したに違いない。

高橋氏はそれから5日後のツイッターに、日本と各国の感染者数を比較したグラフを示したうえで、「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止とかいうと笑笑」と投稿し、世間の批判を浴びたため、内閣官房参与を辞任した。めっぽうアタマがいいわりにはお調子者の高橋氏が、菅首相との共鳴音の一部を聞かせてくれたようなものである。

ご丁寧に、菅首相や高橋氏の思いを総括してくれたのは、竹中平蔵氏だ。菅首相とは竹中総務大臣、菅総務副大臣としてコンビを組んだ小泉内閣以来の付き合いである。

「オリンピック、やるかやらないかって議論を何であんなにするか、私にはよくわからない」「世界のイベントをたまたま日本でやることになっているわけで、日本の国内事情で世界のイベントをやめますということは、やっぱりあってはいけない」(6月6日、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」)

竹中氏の発言には、開催国の都合に左右されるようでは、オリンピックの権威が損なわれるというIOCサイドに立った見方がにじむ。ヨーロッパの覇権意識の名残を斟酌しているのだろうか。

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商業主義にまみれ、国力PRと経済浮揚の道具に成り果てたオリンピックでも、人とカネを注ぎ込んで、ここまで準備してきた以上、開催にこぎつけたいのは山々である。アスリートたちのパフォーマンスはコロナ禍に沈む我々を勇気づけてくれるだろう。

しかし、さらなる感染拡大の巨大装置に東京五輪がなる事態は何としても避けなければならない。リスクが高いと判断すれば、国家や政治家の威信、体面のようなものは打ち捨てて、ただちに撤退すべきだ。

「安全安心の大会」にすると、菅首相が空念仏のように繰り返すだけでは、安心できない。根拠の説明なしに信頼することなど、どだい無理である。口下手でもいいではないか。五輪を開催するというなら、国民に向かい、自らの言葉で、高々とその意義を語ってもらいたい。

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image by: 首相官邸

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