先日掲載の「中国空軍149機の『台湾侵入』は本気の警告。火に油を注いだ米国の動きとは」等の記事でもお伝えしているとおり、エスカレートする一方の中国による台湾への威嚇行為。しかしその裏には、習近平政権の「抜き差しならない事情」が存在しているようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、これまで中国の為政者が権力固めのために他国侵略を繰り返してきた歴史を紹介。さらに習近平氏が現在置かれている状況を分析するとともに、台湾への挑発を激化させる中共の動きに対して警戒を促しています。
【関連】中国空軍149機の「台湾侵入」は本気の警告。火に油を注いだ米国の動きとは
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年10月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
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【中台】中国の不穏な経済情勢、台湾威嚇の裏に権力闘争の激化か
● 台湾の離島に迫る不気味な「緑のオーロラ」の正体は─またも中国による威嚇か?
10月に入り、中国による台湾への挑発行動が激化しています。台湾国防部は、10月4日、台湾の防空識別圏に中国軍の戦闘機などのべ56機が侵入したと発表しました。10月からの4日だけで、その数はのべ149機にのぼるそうです。
● 台湾の防空識別圏に中国軍機の進入が急増 4日は延べ56機
そんななか、中国福建省沿岸から距離にしてわずか10キロしか離れていない台湾の馬祖島で、緑のオーロラが発生していることが話題になっています。その正体は、中国のイカ釣り漁船。この4カ月間、馬祖島付近の台湾海峡に数十~数百隻の中国漁船が出没しているのです。
中国漁船は、イカ領のために緑のLEDライトをつけていると主張していますが、これまで台湾への嫌がらせのために中国漁船を送り込み、台湾の漁場を荒らし回るということがたびたびあったことから、これも台湾への心理的圧力であることは間違いないでしょう。
2014年には日本でも、小笠原諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)に中国船が大量に襲来し、大量のサンゴを密猟していることが大きな問題になったことがありました。しかも、このEEZでは、中国船が無許可で海洋調査を行うといった事案も発生しており、単に民間漁船が密猟のために襲来したのではなく、周辺地域の調査や日本への示威行為だったことは明らかです。
自由時報でも、馬祖の「緑のオーロラ」については大きく報じています。主に中国福建省から来ている中国漁船は、この2年間で数が急増しており、今年は最も深刻な状況で、緑のライトが馬祖の住民や不満を募らせているといいます。
中国は、中国漁船を他国の海域に繰り出し、揉め事になると、中国漁民保護の名目で軍事介入し実効支配へと持ち込むという戦略をとっています。南シナ海もそうして実効支配を強めましたし、尖閣諸島もまさにそうしたやり口で侵略してきているのです。
一般市民を装って敵対行為や破壊活動などを行う軍人を便衣兵といいますが、中国はこの便衣兵の戦法をよく使います。日中戦争においても、軍服を脱ぎ捨てて一般人に紛れ込み、テロ活動を行う中国の便衣兵に日本軍は悩まされました。もちろん便衣兵は国際法違反であり、即座に処刑してもいい対象となっています。
自由時報では、アメリカのシンクタンク「プロジェクト2049インスティテュート」のシニアディレクター、イアン・イーストン氏による「台湾海峡の中央線の北側では、1,000隻の中国民兵の偽装漁船が侵攻作戦の演習を行うなど、大規模かつ激しい活動が展開されている可能性がある」というツイートを紹介しています。
● Ian Easton(Twitter)
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10月9日、北京の人民大会堂で開かれた辛亥革命110年記念大会では、中国の習近平国家主席は、改めて台湾統一について「祖国の完全な統一は必ず実現しなければならない歴史的任務」と述べ、そのうえで台湾独立勢力を「最大の障害」と批判しました。
これに対して、10月10日の双十節、台湾の蔡英文総統は、「私たちは中国により設定された道を歩まない。そこには自由も民主主義もなければ、2,300万人の台湾人の主権もないからだ」と述べ、台湾人民が中国の圧力に屈することはないと応じました。
● 「中国の圧力に屈さない」台湾で双十節記念式典、蔡氏が演説
10月6日、台湾国防部のトップは、中国と台湾の緊張は過去40年で最悪の状態であると述べましたが、各国も中国による台湾侵攻について、懸念を表明するようになっています。
● 中台関係は「過去40年で最悪」 偶発攻撃のリスクも=台湾国防部長
欧州議会は20日、「EU―台湾の政治的関係と協力」という報告書の投票を行う予定ですが、それに先立つ19日、欧州連合(EU)のマルグレーテ・ベスタガー副総裁は、EUは中国の脅威に対処し、「一つの中国政策」の枠組みの中で台湾との関係をさらに強化しなければならないと述べました。
さらに、台湾はEUと同様の考えを持つパートナーであり、EUは台湾の民主主義、法の支配、人権、開かれた社会、市場経済に基づく統治システムを引き続き支持し、人と人との交流、サプライチェーンなどでの協力を強化すると表明しました。
一方で中国は、経済成長の低迷が明らかになり、不動産市場も不安定な状況となっています。2021年7~9月の経済成長は前年比で4.9%と、中国経済の減速が鮮明となり、また、不動産大手の恒大集団の巨額負債問題も解決していません。一方で、電力の供給不足により停電が頻発し、中国経済の先行きも不透明になっています。冬が近づき暖房が不可欠となると、さらに電力が逼迫する可能性があります。
もちろん、不動産市場の不安定化は、習近平政権の不動産規制強化が招いたものでもあります。その他、アリババやテンセントなどへの締め付け、芸能界への規制強化などを強めていることは以前のメルマガでも紹介しましたが、習近平は中国経済の発展よりも、いかに企業や経済を自身の統制下に置くかということに腐心しています。
【関連】毛沢東の文革時代に逆戻り。自ら進める変革で“ラストエンペラー”となる習近平
10月初旬には、不動産大手の花様年集団も2億ドルの社債が返済できずに、事実上の倒産に追い込まれました。同社の創業者である曽潔氏は、曽慶紅元国家副主席の姪だということです。
● 中国不動産大手、花様年集団が債務不履行 トップは曽慶紅元副主席の姪
曽慶紅といえば、江沢民派の大番頭で、しかも、習近平を総書記に推した人物です。それだけに、来年秋に開かれる党大会で3期目を狙う習近平としては、曽慶紅が習近平の長期政権化に水を差す行動に出れば、一気に反習近平の流れができてしまう恐れがあります。そのため、曽慶紅や上海閥の力を削ぎ、自身に逆らわないよう脅しをかけていると思われます。香港に国家安全維持法を施行して支配力を強めたのも、上海閥の力を削ぐためだったとも言われています。
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中国ではかつての仲間や恩人ほど、油断できないとされます。漢の高祖(劉邦)は、全国統一後、韓信や彭越、黥布といった功臣を次々と粛清しました。毛沢東も、盟友だった劉少奇や林彪を失脚に追い込みました。
中国では、権力闘争が激化するときほど、対外戦争を仕掛けがちです。トウ小平はライバルの軍隊を絶滅させるために中越戦争を仕掛けました。最近の習近平政権による台湾への威嚇行為は、2022年秋の党大会に向けて熾烈な権力闘争が行われていることの現れだという見方もあります。
しかも、中国という国は、昔から領土大国・人口大国だったわけではありません。中原という場所から東亜・東洋世界に膨張してきました。つまり、中国は対外侵略を繰り返すことで現在の大きさになったのであり、一番危ないのは隣邦なのです。そのため、中国は日本とインドを21世紀の仮想敵国としており、いずれ紛争は避けられません。米中対立もそれに輪をかけています。
中国では「琉球人は福建36姓の子孫」として、尖閣諸島の次は沖縄を狙ってくることは間違いありません。さらには、「弥生人は中国人」として、日本全体を「不可分の固有領土」と主張してくる可能性もあります。中国の為政者が自分の権力固めのために、他国侵略を利用するということは、前述したように、これまでも繰り返されてきたことなのです。
いずれにせよ、このところの中国の動きは非常に不気味です。何かが暴発する可能性もあり、注意が必要です。
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2020年11月配信分
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2020年8月配信分
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