中国空軍149機の「台湾侵入」は本気の警告。火に油を注いだ米国の動きとは

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繰り返される中国軍機による台湾の防空識別圏への侵入が、10月1日からの4日間だけでも149機を数えるなど、まさに常軌を逸した状況となっています。このような挑発的な軍事行動をエスカレートさせる中国当局の狙いはどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、中国共産党と軍が国際社会に対して発するサインを読み解き解説。さらに適度な緊張関係にある米中の間で、日本が果たすべき役割についても考察しています。

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中国軍149機“侵入事件” 台湾を挟んだ米中にらみ合いと「関係回復」への苦慮

中国で【国慶節】が始まった10月1日から、日本で岸田政権が誕生した10月4日まで、4日連続で中国軍機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入するという“事件”がありました。その数は何と合計149機に上ったとか。

加えて殱16という最新鋭戦闘機から無人飛行機、大型の爆撃機まで、多種多彩な軍用機が参加し、夜間の飛行も行われたというのは、これまでにない規模・機種・形態でした。

最初に関連の情報を得て、分析を行った際、「どうして今、手の内をあえて明かすようなことをするのだろう?」と怪訝に思ったのですが、米軍を含む国際的な社会の大方の予想と見解を覆し、多重的に、かつ緻密に部隊を編成・運用する能力が向上していることを示したと思われます。

また夜間の作戦展開も披露したことで、これまで乏しいと考えられていた夜間作戦遂行能力も向上していることを披露したと考えられます。

今回は空母攻撃群を用いた展開ではなく、空軍機による編隊飛行でしたが、これによりどのようなメッセージを、中国政府と軍は国際社会に送ろうとしたのでしょうか?

恐らく【狭まる対中包囲網への抗議と、中国サイドの覚悟の表明】と【軍事的な拡張と強靭化を図る台湾への警告】があったのではないかと考えます。

狭まる対中包囲網については、【9月のニューヨークで結成されたAUKUS(米英豪による軍事同盟)】、【中国の脅威への対抗を念頭に置いた経済安全保障面での同盟と定義できるクアッド(日米豪印)】、そして【英国がアジアへのコミットメントとAUKUSを真剣にとらえている表れとしての英国艦リッチモンドの台湾海峡通過(航行の自由のアピールと中国への牽制)】という要素があるでしょう。

それらに対する中国政府からの抗議行動と、中国軍による意思表示と捉えることができるでしょう。

AUKUSについては、豪州がフランスからの購入と協力を決めていたはずの原子力潜水艦建造事業に関する契約を突然破棄し、英国がサポートし、米国が原子力潜水艦技術を提供し、必要に応じて米製の原子力潜水艦を売却・納入することも含めたサプライズがありました。

フランス政府は豪州と米国に対して激怒し、駐在大使の召還や首脳会談のキャンセルという外交的な“制裁”に乗り出し、おそらく米仏関係は史上最悪の状態とまで言われました。

今は、ブリンケン国務長官をフランスに派遣することで、何とかよりを戻す形になり、再びTrans=Atlanticの同盟が修復されたように思われますが、フランスが米豪(英)に激怒して国際問題化した際、背後で中国政府がフランスにちょっかいを出そうとしていたらしいという噂もあり、国際政治に闇をちょっと垣間見た気がします。余談ですが。

最近のTPP絡みの中台の動きも、台湾を中国と別の存在、特に国家・政府・政体とみなされることをタブーとする中国政府として、対中抵抗姿勢を鮮明化する台湾に【武力による統一も常に選択肢にある】ことを思い出させる必要があったとのことです。

そして火に油を注ぐ要素があるとすれば、バイデン政権下で一層加速する台湾へのコミットメントの一環として武器の提供・販売、そして軍事的な訓練の供与といった、明らかに中国を敵視していると理解できる米国政府の動きでしょう。

北京曰く「明らかな中国に対する挑発行為であり、中国政府が革新的な利益と捉える台湾に手を出すことは看過できない行動」という激しい反応を示し、「気候変動やコロナへの対策で米中協力を模索するという同じ口で、中国を激しくこき下ろすバイデン大統領とその政権をどうやったら信用できるというのだ?」ということ。

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