いま戦ったら負ける。中国が米国との軍事衝突を避ける「4つの理由」

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国連の場や経済分野を舞台にしたアメリカと中国のつばぜり合いが、ここに来てより一層激しさを増しています。かねてより囁かれていた直接軍事対決を懸念する声も聞かれますが、果たしてその危機は高まっているのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、米中それぞれが抱える国内事情を詳細に解説した上で、互いに「全面対決」する余裕はないと分析。ゆえに両国の対立が軍事面以外のシーンで繰り広げられているとし、その緊張関係の間で岸田政権が存在感を示す必要性を強く訴えています。

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直接対決を回避するために多重化する米中対立構造

9月27日(現地時間)をもって、国連年次総会における一般討論演説が終了しました。政策的な議論は今後も総会・安保理・委員会などで継続されていきますが、政治的なイベントは終了しました。

第76回の国連総会は、これまでにまして米中対立の構造が直接的・間接的に持ち込まれた会合になったと考えます。

例えば、タリバンが実権を掌握したアフガニスタンや、2月のクーデター後、民主化勢力を追放して国軍が実権を握るミャンマーの“代表権”をめぐる米中間の駆け引きは、国連の場で大国間の間接的な対立を浮き彫りにした事案ではないでしょうか。

水面下での対立の落としどころは、【今次会合においては、両国(アフガニスタン・ミャンマー)とも前政権によって任命された大使に代表権を認めるが、両大使による一般討論演説は注視とする】という妥協でした。

代表権についての議論は、10月に開催される信託状委員会に委ねられることになりますが、【タリバンを正当なアフガニスタンを代表する主体として認めるか】、【ミャンマー国軍の実質的なコントロール下にある暫定政権をミャンマーを代表する主体として認めるか】という、両国に対する政府承認の可否という、とても政治的な議論が開催されます。

米国は、タリバン政権側と真っ向から対立はしておらず、カタールの仲介を得つつ、アフガニスタンの今後について協議を続けていますが、現時点では、「タリバン政権によるアフガニスタンの代表権は承認できないとの立場で、それゆえに、失脚はしたものの政府承認済みのガニ政権下で任命された大使に代表権がある」との主張で、欧州各国や豪州・カナダのほか、アメリカの同盟国は同様の姿勢を取っています(日本はこの点について明確にしていないと思われますが、どうでしょうか?)。

中国側(withロシア)は、その反対で、タリバン政権との関係構築を急いでいることと、自国に対するテロ組織の流入をタリバンが食い止めるという“絶対条件”をベースに、タリバン政権の報道官が国連大使となることを支持し、「一刻も早い国内情勢の安定を望む」として、タリバン政権を政府承認して、代表権を与えようとする姿勢です。

ミャンマーの扱いについては、米国サイドは全く議論の余地はないようで、現在のミン・フライン総司令官が暫定首相を務める体制を政府承認することはできないとの立場であるのに対し、中国サイドは政府承認し、これにはASEAN各国も同意しているという状況です。

国連の場においても、自由主義サイドと国家資本主義陣営との対立・衝突が持ち込まれています。

その影響は、安全保障理事会の機能不全にも直結し、エチオピアで行われている蛮行に対しても結束できず、残念ながら、残虐行為の横行を放置する状態になってしまっています。

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