麻生太郎副総裁が「トランプとの会談」で掘る墓穴。「6月解散」もくろむ自民党に“凶人の情念”を浴びる覚悟はあるか?

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訪米中の自民党・麻生太郎副総裁が、トランプ前米大統領と日本時間24日午前にも会談を持つことになった。その目的は何なのか。「麻生氏の行動は独断専行ではなく、当然ながら岸田総理も承認しているはず」とした上で、「6月に都議選とダブルで解散総選挙という構想があり、そこから逆算して有権者に『もしトラ』対策ができている自民党をアピールする狙いがある」と分析するのは米国在住作家の冷泉彰彦氏だ。だが冷泉氏によれば、今回の会談は2016年暮れの安倍総理(当時)と比較しても拙速であり、一歩間違えれば日本の国益を大きく損なう恐れがある。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2024年4月23日号より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:24年バージョンのトランプ現象とは何か?

自民・麻生太郎副総裁とトランプ前大統領の「会談」に大きな懸念

本稿の時点で、飛び込んできたのですが、訪米中の自民党の麻生太郎副総裁が現地時間の23日(火)、つまり本号配信のほぼ1日後に、ドナルド・トランプと面会ができることになったようです。

この麻生太郎によるトランプとの個人的関係を構築する試みということでは、既に一回失敗しており、二度目の今回やっと成功ということになります。もしも、実現したらの話です。

この動きですが、何度かこの欄でお話したように、2016年暮れに当時の安倍晋三総理が、当選したばかりの、したがってまだ就任していない「次期大統領」であったトランプを、NYの私邸に訪ねたことがあります。

あの時の安倍氏の行動については、日本国内ではかなり批判がありました。

つまり、就任もしていないのに、こちらから出向いて頭を下げるのは総理として自国を貶める行為だというような批判です。批判としては筋が通る話でしたが、結果的には安倍政権はトランプ政権と「ギリギリのところ」で良好な関係を築くことが出来ました。

結果的にというのは、例えばですが2017年から21年の第一次トランプ政権の期間中には、トヨタや日産の工場配置に文句を言われたり保護主義的な動きはありましたが、日本に直接の「実害」はありませんでした。特に、懸念された在日米軍の引き上げなど、安保見直し論は表面化しませんでした。

また、G7サミットの結束を破壊しようとしたトランプに対して、当時の安倍総理はドイツのメルケル首相(当時)などと連携して、かなり強めの抵抗を示し、一定のプレッシャーをかけることに成功もしています。

麻生氏の「軽率短慮」、安倍氏との比較で明らか

この16年暮れの動きと比較すると、今回の麻生氏の動きはやはり軽率であると思います。

何よりも、アメリカの大統領選において、1期目の現職が2期目を目指して立候補し、選挙運動を行っている最中に、対立候補にも政府与党の特使を派遣したわけです。

このような「二股をかける」行動は、あまり聞いたことがありません。

例えば、ジョージ・W・ブッシュ政権の2004年に民主党のケリー候補に会いに行ったとか、オバマ政権の2012年に共和党のロムニー候補と会ったというようなシーンを考えてみましょう。いかにも不自然であり、現職、つまり現政権のことを考えると、外交儀礼としても、政治的な関係としても、かなり反する行動になります。

また、16年暮れの安倍氏の訪問は、とにかくペルーでのAPEC会議への参加が目的の出張であり、その経由地としてNYに寄ったついでにトランプタワーに立ち寄ったという体裁でした。

さらに言えば、このタイミングでのトランプは、まだまだ心理的にも物理的にも政権を担当する準備ができておらず(といいますか、4年の任期中も今もできていないといえば、できていないのですが)、安倍氏との対面が初仕事のようなものでした。

会談後に、安倍氏が「トランプは信頼に足る」という(勿論、正確な意味での外交辞令)コメントを出した際も、そのコメントはG7首脳の一人として、ある意味「お墨付きを与える」的な効果もあったように思います。

あの時点では、真ん中から左の世論にとっては、ドナルド・トランプという人は、不道徳で女性の敵であり、まともな政治家ではないと世界中が思って(今でもある程度そうですが)いますが、そんな中で「安倍氏のお墨付き」は意味を持ちました。

もっといえば、安倍氏が立ち寄り、お墨付きを与えたということで、日本政府としては、少なくともトランプに「貸し」を作る格好に持ち込めていたのだと思います。

噂によれば、外務省と官邸は、NYの人脈を総動員してトランプ家にリーチしたそうで、ある意味でファインプレーでした。

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