麻生太郎副総裁が「トランプとの会談」で掘る墓穴。「6月解散」もくろむ自民党に“凶人の情念”を浴びる覚悟はあるか?

 

麻生氏が注意すべき、トランプ裁判の怖い本質

本稿の時点では、検察側は事件に対する悪質な隠蔽工作が行われたという論を繰り広げています。ますますもって、双方とも引き返せない展開になってきました。

そんな中で、裁判所の外側ではトランプ支持者による示威行動が繰り返されています。

この裁判ですが、事件自体は大したことはないのですが、やはりその展開は重要であると思います。まず、事実関係の争いとしては、トランプが元愛人ストーミー・ダニエルズに対する「口止め工作」を行った張本人とされる、当時の私的顧問弁護士のスチーブン・コーエンは、全面的に検察に対して自供しているばかりか、自分の側の主張を本にして公刊しています。つまり、一冊丸ごとがトランプに不利な「コーエン側のファクト」で出来上がっているわけです。

それだけでも、トランプ側としては不利なのですが、トランプの弁護団の取った戦術もかなり無理筋で、「自分はカネを払わなかった」という主張でもなく、また「自分は不倫をしていない」でもありません。終始一貫して、もっと強い「自分はこの女性を知らない、会ったこともない」という全面否定になっているのです。

これは法廷戦術上何かのメリットがあるとは、どう考えても思えません。トランプが強硬に主張してそうなったのかもしれませんが、今後、突き崩されていく可能性はかなりあると思われます。

問題は、実は事実関係でも、また法廷戦術の巧拙でもないようで、特にトランプ支持者の間では、御大が起訴されたことが民主党側の陰謀だというような憎悪といいますか、ネガティブな情念のようなものが渦巻いています。

ところで、この法廷の外では、とんでもない事件が起きています。それは、4月19日の金曜日に、フロリダに住むマックス・アザレロという37歳の男性が、法廷の外のトランプ支持者が集会を行っている近辺で、突然可燃性の液体をかぶって自身に着火、つまり焼身自殺を図ったのでした。救急搬送されたものの、アザレロの救命は出来ませんでした。

この事件、メディアは大騒ぎになることを恐れて、静かな報道しかしていません。ちなみに、アザレロはトランプ支持者ではないようで、その主張は「トランプとバイデンは結託している」というものでした。

また「アメリカだけでなく、世界の政府はやがて破綻するネズミ講だ」とする、一種の「総合的な陰謀論」といいますか「終末思想」のような論理を展開していたようです。具体的には「暗号資産」は彼の言う「ネズミ講」そのものだとして、激しく憎んでいたのでした。

アザレロという人物は、かなり優秀な頭脳の持ち主で、ノースカロライナ大学のチャペルヒル校を卒業後は、ラトガースの大学院で都市計画の修士を取っています。ただ、就職は上手く行かず、そんな中で母親が死んだことに強いショックを受けて、精神のバランスを崩していったようです。そんなわけで、このアザレロの主張というのは、空想的なまでの均衡財政論と、大規模な「あらゆる政府は陰謀であり、ネズミ講である」という妄想でした。つまり、トランプ派ではなかったのです。

そうなのですが、この裁判の持っている一種独特な「敵味方の激しい対決」「その象徴性、ドラマ性」のようなものが、間接的にこの不幸な人物の焼身自殺を喚起してしまったのかもしれません。

また、同時に、トランプ派による抗議の自殺ではないにしても、焼身自殺というショッキングな事件が起きたことで、余計にこの公判を取り巻く異様な雰囲気が強まっているようにも思います。

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