日本を蝕む神社本庁の「カネと思想」土地転がし、男尊女卑、LGBT差別…八百万の神から反社会的 原理主義的カルトへ

20240412shinto-shrine_eye
 

栃木の日光東照宮、石川の氣多大社、鎌倉の鶴岡八幡宮など、近年「神社本庁」を離脱する有力神社が急増している。背景には、上納金や人事介入への不満に加え、反社の関与が疑われる土地転がしなど“不祥事の巣窟”と化した神社本庁への反発があるようだ。強い戦前回帰志向とマイノリティへの差別意識を持ち、神聖な境内で憲法改正の署名集めをさせることでも知られる神社本庁。いやしくも“庁”を名乗るこの民間宗教法人の堕落した本質を、小林よしのり氏主宰「ゴー宣道場」の寄稿者で作家の泉美木蘭氏があばく。(メルマガ『小林よしのりライジング』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:泉美木蘭のトンデモ見聞録・第323回「神社本庁と神道政治連盟のこと」

神社界を牛耳る人間たちの醜聞

前回(「古代の『斎王』と伊勢神宮『祭主』のこと」)のつづきで、神社界を牛耳る人間たちの醜態について書いておきたい。

前回紹介した2017年の富岡八幡宮殺人事件は、素行不良で宮司をクビになった弟が、新宮司となった姉を殺害し、自身も自殺するというものだった。事件直後、関係者に届いた弟・茂永からの手紙には、自分の母親の実家について「〇〇家の男系男子〇代目」という書き方が見られたり、自分の長女については、「ホステスをしていてヤクザと繋がりがあったので勘当した」とあっさり触れる一方、長男については思い入れを込めて紹介し、宮司として富岡八幡宮を継がせるのだという猛烈な執念が書かれていたりする。そこかしこに男尊女卑臭が漂っていた。

富岡八幡宮は、江戸時代、相撲が両国を定位置とするようになる前に、勧進相撲(寺院の建立や修繕資金を募るためのチャリティー興行)が行われていた場所だ。今でも新横綱が土俵入りを奉納したり、力士碑が並んでいたりする。

そのような有名神社でもあって、「富岡八幡宮の長男」という出自は、神社界ではよほど効力を発揮したらしい。弟・茂永は、すさまじく問題のある人間でしかなかったが、神道青年全国協議会理事、東京都神道青年会会長、日本会議江東支部初代支部長、神社本庁参与、國學院大学協議員などを歴任していた。

また、自分は「いつか神社庁の庁長に」なりたいと考えていたらしい。

その神社庁の本庁は、姉を宮司として認めず、数年間、富岡八幡宮を宮司不在のままにし続けた。そのため、富岡八幡宮は神社本庁を離脱して姉を宮司にしたのだが、これによって弟・茂永が暴発。手紙には、神社本庁が富岡八幡宮の人事に介入できなくなったこと、自分の長男を宮司にしろという要求、さもなくば氏子の子孫も含め末代まで祟り続けてやるという呪いが書かれていた。

官公庁じゃなかった……宗教法人「神社本庁」

そもそも神社の人事権を握っている「神社本庁」とは一体なんなのか。

私の地元には「三重県神社庁」があるが、「庁」と名乗っているし、建物の外観がいかにも市役所か税務署かという雰囲気を醸しているので、大人になっても「神社関係の公的な役所なんだろう」と思い込んでいた。

いかにも昭和の公的機関っぽい空気を醸す三重県神社庁(三重県津市)

いかにも昭和の公的機関っぽい空気を醸す三重県神社庁(三重県津市)

だが実際は、官公庁でもなんでもない。各都道府県に支部を持ち、全国8万社が加盟している民間の宗教法人だ。伊勢神宮を「本宗」として仰ぎ、全国の神社庁をとりまとめて、神主の資格認定や宮司人事を司る総本山が、東京都渋谷区の明治神宮に隣接する「神社本庁」である。

神社本庁は、伊勢神宮から「神宮大麻」(お札)の販売事業を委託されており、全国の神社庁を通して各加盟神社に神宮大麻を配布している。加盟神社は、売上金(初穂料)をすべて伊勢神宮におさめ、神社本庁を通して3~5割の取り分を配分されるらしい。

伊勢神宮の神宮大麻。たまに、包み紙だと思って破いて開けるやつがいます。

伊勢神宮の神宮大麻。たまに、包み紙だと思って破いて開けるやつがいます。

神宮大麻は、古くは室町時代から、全国津々浦々で活動していた「御師(おんし)」と呼ばれる民間の宗教家が領布していた。御師は、江戸時代の最盛期には2000人以上いて、「お伊勢参り」のツアーガイドのような役割をしていた。泊まる宿や豪華な宴会、神楽など芸能の手配までして盛り上げまくり、伊勢の内宮・外宮の参拝を案内した上で神宮大麻を配っていたので、参加者はみんな感激して大喜びだったらしい。

伊勢の旧街道沿いには、大きな遊郭もあり、男衆はそちらへも案内された。当時最先端の設備とサービスが提供されており、舞妓たちが派手な着物で「伊勢音頭」を踊りまくっていて、「一度はお伊勢さんへ行ってみたい」という憧れの的にもなっていたという。

20240412-kobayashi-003

ところが明治になると、神道は「国家の宗祀」と位置付けられ、御師は活動停止に。代わりに「神宮教院」(のちの神宮奉賛会)と呼ばれる機関が一括して、神宮大麻を管理するようになった。

だが敗戦後、GHQによって、神社は国の管理から外される。この時に、神社の弱体化を防ぐために発足し、神宮大麻の管理事業を引き継ぐことになったのが、神社本庁なのだ。

print
いま読まれてます

  • 日本を蝕む神社本庁の「カネと思想」土地転がし、男尊女卑、LGBT差別…八百万の神から反社会的 原理主義的カルトへ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け