5月に一斉攻撃か。攻撃準備を終えたロシアに滅ぼされるウクライナとプーチンに破壊される世界の安定

Meeting,Of,Russian,President,Vladimir,Putin.,Russia,Moscow.,04.02.2022
 

国際社会からの非難をものともせずに、ウクライナに対する侵略行為の手を緩めないプーチン大統領。ロシア軍は大規模な一斉攻撃の準備をすでに終えたとも伝えられ、ウクライナは実質的に消滅するとの見方もあるようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、ロシアがウクライナをこれほどまでに攻め立てる理由と、「ロシアの勝利」により国際社会が失うものについて解説。さらにプーチン氏が次に狙う国の名を挙げています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

恐怖が支配する国際情勢‐戦い続ける理由と再興の鍵

「相手は自分たちを破壊し尽くそうとしている」

このような極限の恐怖にとりつかれて、戦争が行われています。

戦争の現場・最前線にいないものにとっては、それは一種の被害妄想だと感じるかもしれませんが、これまで紛争調停に携わってきた際、ほぼすべてのケースにおいて交戦当事者たちが一度は口にする“恐怖”です。

「相手が自分たちを殺害、あるいは追放し、民族としての存在を終わらせたいと考えているに違いない」という恐れはそこに存在し、「今、戦っている相手は敵ではなく、常に自分の存在を危うくする脅威だ」という認識は、人たちを自己保存のための戦いに送り出しています。

30年近く国際社会から忘れ去られているコンゴの終わりなき内戦の当事者たちも、エチオピアで繰り広げられるティグレイ族への苛烈で執拗な攻撃も、ミャンマーで繰り広げられている戦いでも同じような恐怖が人々を支配し、武器を取らせています。

それはロシアとウクライナの戦いでも、イスラエルとハマス、パレスチナとの戦いでも同様です。

以前にも触れましたが、ロシア人の思考の根底には「我々が歩み寄っても誰もロシアのことを知ろうとせず、誰もロシアの悩みを分かってくれない。だから自らバウンダリーをどんどん広げて、自分自身で自分を守るほかない」というメンタリティーがあるそうです。

16の主権国家と国境を接し、180以上の民族を抱える多民族国家であるロシアは、常に陸続きでの他国・他民族からのプレッシャーに耐え続ける必要があると言われており、生き残るためには拡大していくほかないという独特の国家安全保障観があると言われています。

以前、テレビでプーチン大統領に直接質問できる番組があり、そこで観客の少年がプーチン大統領に「ロシアはどこからどこまでですか?」と尋ねた際、「ロシアの領土には果てがなく、どこまでも続くのだよ」とプーチン大統領が答えていたのが非常に印象的でしたが、これはプーチン大統領が抱くロシア帝国の再興・新ソビエト連邦の構築という野望と共に、ロシアがずっと抱き続ける恐怖を抑え込むために拡大あるのみというジレンマも透けているように思われます。

この独特の恐怖心が、疑心や裏切りという認識と重なるとその相手を徹底的にいじめ抜き、恐怖心を癒してくれる仲間(または従順な存在)であればとことん厚遇するという統治方法と外交戦略の基礎になっていると考えます。

もちろん領土欲や覇権の拡大という欲は存在するでしょうが、プーチン大統領とその取り巻きにとっては、ウクライナは欧米の力を借りてロシアの国家安全保障、そして存在を脅かすけしからん存在と映っているようです。特にロシア、ウクライナ、ベラルーシは、旧ソ連の中でも近しい存在と考えられていたため、半ば身内がロシアを裏切って“敵”と手を結ぶというように認識したのだと、ユーラシア問題を扱う専門家グループは分析しています。

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