5月に一斉攻撃か。攻撃準備を終えたロシアに滅ぼされるウクライナとプーチンに破壊される世界の安定

 

恐れからの行動はウクライナにとっても同じです。旧ソ連の崩壊までウクライナは国ではなく、あくまでもソ連の一地域またはロシアの衛星国的な存在だと考えられてきましたが、時の混乱に紛れて、そしてロシア政府曰く、欧米諸国の助けを借りて独立を宣言し主権国家となりました。

独立時は、同じくロシア曰く、ロシアとベラルーシと非常に親密な関係を保ち、CISにおいても核となる存在でしたが、次第にオレンジ革命などを通じて親欧米路線が台頭し、国として成り立ち、かつ資本主義を取り込みたいという政策から欧米諸国に接近する戦略に出て、成長することにより、ロシアとイーブンの立ち位置を獲得して、対等の物言いができるようになりたいという望みが高まったようです。

ただしそれはプーチン大統領のロシアにとっては受け入れられない条件と映り、次第にロシアお得意の内政干渉と工作によってウクライナ政府を骨抜きにし、また汚職を蔓延らせることで欧米との距離を拡げる作戦が取られた結果、結局、ウクライナはロシアの衛星国に戻ってしまうという状況が続いていました。

「このままではウクライナという国は残っても、真の独立は果たせず、その内、プーチン大統領の気まぐれでウクライナが消されるかもしれない」という恐れを、2008年のジョージア(元グルジア)に対するロシアの軍事侵攻を見て抱いたと思われます。

その後、実際にロシアは2014年にはクリミア半島を併合し、そして2022年にはウクライナ東部への侵攻を行い、今に至ります。実際にもう10年以上にわたって、ウクライナはロシアの恐怖と戦っていることとなります。

2022年2月24日以降、ゼレンスキー大統領はずっと「このままではウクライナは地球上から消える。これは国家そして国民の生存のための決死の戦いだ。ロシアのこの蛮行を許せないと、同じく感じてくれるならぜひ助けてほしい。一緒にロシアをウクライナの地から追い出すのだ。しかし、もしウクライナが総崩れになり、ロシアの前に屈し、そしてロシアに全土が蹂躙されることとなれば、それはウクライナの敗北に留まらず、欧米型の民主主義の敗北を意味し、そして究極にはプーチン大統領の野望が欧州に迫ることを意味する」と国際社会に訴えかけ、ロシアに対する、そしてロシアによる恐怖を強調しています。

しかし、このところ欧米からの支援は滞り、ウクライナの弾薬数は多く見積もってもロシアの6分の1程度しかなく、前線の状況は非常に厳しく、ロシアに押し込まれている状況が鮮明になってきています。

そして十分な防空システムがなく、十分な武器弾薬がないことに付け込んで、ロシアは徹底的にウクライナ国内のインフラ設備、特に電力施設の破壊に勤しんでおり、その結果、ウクライナ国内の50%超の発電能力が削がれ、各地で停電が頻発し、国民の心理の破壊を行っています。

時期は前後するでしょうが、複数の分析を見てみると、5月ごろを目途にロシア軍は再度一斉攻勢をかける計画のようです。

18歳から30歳までの国民を対象に15万人の定期徴兵を行って国内の任務に充て、現在、国内の任務を担う兵士をウクライナ戦線に投入し、英国の国防省からの情報では、すでに10万人を超えたとされる契約軍人も投入してくる計画のようです。

加えて1,000両以上の戦車の投入や欧米による対ウクライナ供与量の3倍以上の砲弾生産能力を確保して、補給線・兵站もしっかりと築いてstand readyの状態に入っていると言われています。

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