いま戦ったら負ける。中国が米国との軍事衝突を避ける「4つの理由」

 

国連・国際社会で米中両ブロックが協調すると期待されているのが、気候変動やコロナ対策で、バイデン政権からは再三、中国の習近平国家主席にラブコールが送られていますが、中国の対応・反応はどうでしょうか?

中国側は協調の可能性と必要性について否定はしませんが、王毅外相の発言を借りると、「中国政府は常にこれらのグローバルな問題について協力をしてきた。アメリカがオバマ政権時より不変だ。しかし、協力しようと言っていたかと思えば、手のひらを返して反目し、そしてまた協調しようと、対応がコロコロ変わるのは米国のほうだ。本気度を見せよ」という態度です。

ケリー特使や、国務副長官の訪中時にもブレずに、アメリカ政府に対する要求3か条を突き付けていますが、バイデン政権がアピールするほどは、中国側は米中協調には乗ってきていないようです。

中国政府としては、「協調を呼びかける割には、気候変動では中国に対してさらなるコミットメントを要求するし、コロナ問題については、中国起源説を掲げて全面対決の姿勢を示しているのはどういうことなのか?」という問いをぶつけています。

北朝鮮がよく使う“敵視政策への批判”ということでしょうか。

そこに不信感を募らせるのが、経済安全保障面での日米豪印の協力であるクアッドの強化と、軍事同盟に位置付けられる米英豪によるAUKUSを結成して、中国包囲網を築き、おまけに“インド太平洋の自由な航行の権利”を掲げて、英国の戦艦リッチモンドに台湾海峡通過という示威行為まで行わせて、台湾海峡問題(と南シナ海問題)で中国に圧力をかけている事案でしょう。

そこで中国がとった“奇策”がTPPへの正式加盟申請です。

このニュースを聞いた際には「まさか」と耳を疑いましたが、もともとは“アジア太平洋地域における対中包囲網”と性格付けされたTPP(アジア太平洋パートナーシップ)に、中国が加盟とは、なかなかのウルトラCを使ってきたなと感じます。

TPPといえば、Brexit後、英国政府が加盟申請をし、こちらについては認められる方向で現在、調整が進められていると聞きますが、中国についてはどうでしょうか?

トランプ政権時にアメリカがTPPから離脱して以降、バイデン政権もまだ復帰をしていませんが(国内からの反対も根強く、しばらくは実現しない見込み)、そこに中国政府が付け込んできたように思います。

親中国の加盟国からは歓迎の意が表明されていますが、日本もカナダも、オーストラリアも、そしてニュージーランドも、中国政府の真意を測りかねているようで、賛意はまだ出ていません。

日本政府については、中国との戦略的な経済関係の維持・発展の観点もあり、正面からの反対はしていませんが、「TPPが課す様々な条件を中国がクリアできるだろうか。特に国有企業の扱いについては難しいのではないか」と問いかけることで、加盟の可否について疑問を呈しています。

とはいえ、現在窓口となるニュージーランド政府に申請書は提出され、アメリカが脱退後、実質的な議長役を務める日本としては、ルールとプロセスに則って、淡々と申請を進めることとなるのでしょう。

中国による加盟申請に驚いている間に、もう一つのサプライズがあったのが、中国への対抗でしょうか、台湾政府もTPPへの加盟申請を行う意を表明してきました。

半導体戦争ともいえる国際経済状況に鑑みると、台湾がメンバーになるメリットは少なからずあるかと考えますが、このサプライズの裏には、直接的に中国の加盟申請に反対できない米国の意図が透けて見えるのは私だけでしょうか?

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • いま戦ったら負ける。中国が米国との軍事衝突を避ける「4つの理由」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け