中国空軍149機の「台湾侵入」は本気の警告。火に油を注いだ米国の動きとは

 

また最近、米中双方が認めた軍トップ同士のホットラインの回復も、今後、米中間での交戦を未然に防ぐためには必須のステップであるため、対決ムードのピークは避けることが出来たのかなと感じています。

米中対立は総論的には、両首脳にとっては必要なようで、習近平国家主席としては、国家と自身の核心的利益と捉えている台湾と南シナ海問題については、対米・対欧州ハードラインを取り続けるでしょうが、先週号でも触れたとおり、アメリカとの戦争は望んでおらず、何とか実質的な緊張緩和の機会をうかがっているようです。

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それはバイデン大統領も同じで、自由主義社会のリーダーとして、国家資本主義・全体主義陣営の拡大と横暴は防ぐという強いイデオロギー的な盾を掲げ、対立構造を強調していますが、かつての対ソ連の冷戦時とは異なり、経済活動上、米中のつながりを切ることはできないことも自覚し、緊張緩和の機会を探っているように思います。

それゆえに、2月と9月の両首脳による電話会談に続き、今年中にオンライン方式での首脳会談の開催で合意したようです。当初は近く開催されるG20首脳会議での対面方式での会談が模索されていたようですが、習近平国家主席側が「まだその準備が出来ていない」として見送られ、その代わりとして年内のオンライン会議で合意したようです。

互いに国内での支持獲得・拡大のために強硬姿勢を取らざるを得ないようですが、同時に武力行使(戦争)に至るような緊張のエスカレーションは避けたいとの思惑で一致しているようです。

米ソ冷戦末期の状況に例えると、デタントのようなものでしょうか。

そのような状況下で、日本はどう振舞うとよいでしょうか?

厳しい対立構造の下、「さあ、どちらにつくのか?」と踏み絵を踏まされ、片方とは関係を悪化させかねないこれまでの状況よりは、米中間で“適度”な緊張がありつつ、日本が築いてきた米中双方との“良い”関係を維持・強化し、北東アジア地域の繁栄に繋げることができる好機にも思えます。

ただし、その実現にはまだまだ一押しも二押しも必要になり、日本にその役割が期待されます。

岸田総理は、バイデン大統領との電話会談で「今後も日米関係が日本外交の核となること」を確認しました。北東アジア地域で周辺のすべての国々と火種や緊張を抱える状況にある日本にとって、真のパートナーは安全保障面も含めるとアメリカ一国です(注:でもアメリカにとっては、パートナーは日本だけでないことを覚えておく必要はあります)。

米国とのよき関係を維持・強化しつつ、もう一つの極を率い、かつ日本の隣国とも呼べる中国といかに上手に付き合い、可能であれば、米中対立の緩和を働きかけることができるような存在になることが出来れば、日本の未来も明るいのかなあ、とまさに地政学的な思考に至っております。

いろいろと書いてきましたが、皆さんはどうお考えになるでしょうか?

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