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法律ではいじめ加害者を裁けない。犯罪者に優しい日本のもどかしさ

いつの時代でもなくならないいじめ。どんなに成熟した社会になっても、いじめはこの世から消えません。多くの人を自殺に追い込むいじめを犯罪にできない日本では、どのように今後動いていけばよいのでしょうか。無料メルマガ『1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』』では、精神科医でもある和田秀樹氏の著書を取り上げ、が日本のいじめについて語っています。

【一日一冊】いじめは「犯罪」である。体罰は「暴力」である。

いじめは「犯罪」である。体罰は「暴力」である。

和田秀樹 著/潮出版社

2021年2月に北海道旭川で14歳女子中学生が自慰行為を強要されたうえに、わいせつ画像を拡散され、氷点下の旭川で凍死した殺人事件の記事を読んで手にした一冊です。

2013年と古い本ですが、学校における「いじめ」という名の殺人事件が多発している状況と原因について分析し、対策案を提言しています。

大人の世界でもそうですが、殴ってケガをさせるのでなければ、みんなで無視したり、罵倒したりしてもよほどひどくなければ犯罪とはなりません。

さらに学校では、傷害、恐喝、強盗、家宅侵入、レイプ、自慰強要、自殺幇助、SNSでの名誉毀損、わいせつ画像拡散は罪に問われないのです。特に14歳以下は心神喪失者と同じように刑法で罰せられることはありません。

1996年に起こった「旭川女子中学生集団暴行事件」…担任が日頃のわいせつ行為で少なくとも三度以上相談を受けたにもかかわらず、生徒指導を徹底していなかった(p101)

著者は、学校での「冷やかし」や「からかい」を否定しているわけではありません。大人になって、ちょっとした一言で傷つくことはあるはずなのです。そうしたときに、激怒するわけでも落ち込むでもなく「そういう言い方はやめてもらえますか」と口にできるかどうか、コミュニケーションの訓練をしていると見ることもできるのです。

いじめに対する著者の提案は、アメリカのように学校で細かい罰則を作って、厳格に運用することです。これは非寛容方式と言われ、例えば、遅刻、無断欠席、宿題未提出から武器の持ち込み、暴力、いじめなどについて罰則(居残り、問題児専用学校への転校)が課されます。

今の学校ではモンスターペアレントもいるし、ちょっと生徒を叩いたら暴力で訴訟となってしまうかもしれないし、出席停止にしたら学習の機会を奪ったと騒がれるかもしれないので、不良生徒への対処のしようがないのです。

まじめな学校の先生がうつ病になる前に、生徒がイジメ殺される前に、暴力やルール違反は罰するということを明確にして、学校に規律と正義を取り戻すという提案なのです。

平成23年度…校内暴力の件数が年間5万6,000件…学校側が出席停止を含む措置を講じた件数…中学校18件(p125)

日本社会は人を殺しても、死体が解剖に回されないので、殺人が認知されにくかったり、イジメ殺しても犯罪にならないとか、心神喪失なら人を殺しても犯罪にならないなど、犯罪者にとって優しい国です。

そうした犯罪者が増えないためにも、学校運営から見直しが必要なようです。この本が発行されてから17年ですが、いまだにイジメが原因で命を落とす人はなくなりません。このような状況で頑張る学校の先生のためにも、よりよい制度改善を望みます。

年3万人と言われる自殺者が一人でも減ることを祈って、この本をご紹介しました。

和田さん、良い本をありがとうございました。

【この本で私が共感した名言】

クラスメートからちょっとからかわれることも「いじめ」だという人がいます。その一方で、暴行傷害や金品恐喝などの犯罪も同列に「いじめ」だと扱われてしまう(p35)

観点別評価が推進され、学力・ペーパーテストが重視されなくなっている…先生に好かれようとするあざとい子たち(p49)

【私の評価】★★★★★(94点)

<私の評価:人生変える度>
★★★★★(お薦めです!ひざまずいて読むべし)
★★★★☆(買いましょう。素晴らしい本です)
★★★☆☆(社会人として読むべき一冊です)
★★☆☆☆(時間とお金に余裕があればぜひ)
★☆☆☆☆(人によっては価値を見い出すかもしれません)
☆☆☆☆☆(こういうお勧めできない本は掲載しません)

image by: Shutterstock.com

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