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安倍派に“鞍替え”?二階氏に見切りをつけた片山さつき氏の「思惑」

今夏の参院選で改選を迎える片山さつき氏ですが、ここに来てその身辺が慌ただしさを増しています。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、二階派を去り安倍派への入会を目指す片山氏の動きを紹介するとともに、その思惑を考察。さらに頼りとされた安倍元首相の複雑な胸の内を推察しています。

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二階派離脱の片山さつき氏が安倍派入会を画策する真の理由

すったもんだの末に自民党二階派を退会した片山さつき参院議員は3月13日の党大会に参加後、その動向に関心を寄せる記者たちに、こう語った。

「(安倍派入会へ)今から手続きをとっていく。安倍晋三元首相に任せている」

時事通信が速報し、Yahooニュースに掲載されるや、片山議員は間髪を入れず、以下のようにTwitter投稿した。


安倍派入りへ「手続き取る」 自民・片山氏(時事通信)#Yahooニュース 正確には「参議院清風会からまず、」と明確に申し上げたのですが、お約束通り、正式な参議院全国比例区の自民党公認状を授与された本日のタイミングで、旗色を明らかにさせて頂きました。

「お約束通り」というところが、プライド高い片山氏の真骨頂といえようが、さてこれ、安倍元首相との間ですでに話がまとまっているのか、それとも報道先行で安倍派入りを既成事実化しようという目論見なのかが、はっきりしない。

ただ、今夏の参院選が迫るなか、二階派にいるより安倍派に移ったほうが得策という計算はあるだろう。それは、女性政治家の出世レースにおける焦りのようなものと捉えることもできよう。元夫、舛添要一氏は次のように語る。

「片山は上に媚びるのが苦手なタイプです。でも、隣には取り入るのがやたらとうまい稲田や小池がいる。さらに自分以外の女性議員はどんどん出世して大臣になる。片山は焦るわけです。自分は元大蔵官僚で、しかもミス東大なのになぜ出世できないのか。稲田が安倍さんに重用されるのは右派だからだ。それなら私も右に行けば出世できるのではないか──結果、在特会のデモに参加してしまう」(2018年1月13日NEWSポストセブンより)

舛添氏の昔のガールフレンド、小池百合子氏の甘え上手は身をもって知っているだろうが、安倍元首相への接近レースという面では、とっくに圏外である。

稲田朋美氏も、安倍氏の秘蔵っ子だの、総理候補だのといわれた頃の面影はない。2016年、防衛大臣に起用されたが、安倍首相の期待に応えられず、昨今では選択的夫婦別姓やLGBT法案などリベラル色の強い政策に注力し、保守派の反感を買っている。

片山氏が気になるのは、稲田氏でも小池氏でもなく、昨年の総裁選で安倍氏の支援を受けた自民党政調会長、高市早苗氏であろう。

政治歴からみると、高市氏は大先輩である。2006年、第1次安倍内閣で初入閣している。片山氏の初入閣は2018年、第4次安倍改造内閣だ。しかし、年齢は片山氏が一つ上で、財務省キャリアとして23年、しかも女性初の主計局主計官をつとめた自負がある。

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高市氏が昨年8月、文藝春秋に「総裁選出馬宣言」を寄稿し総裁候補に名乗りをあげると、片山氏は突き動かされるように、二階派幹部を訪ね、「私も総裁選に出たい」と、20名の推薦人を集めるための派閥の協力を要請したという。

派閥は全く動いてくれず、片山氏は高市氏の推薦人に名を連ねた。安倍元首相に頼まれたからだが、そのさい片山氏は、高市支援にまわる代わりに清和会(現・安倍派)に入会させてもらう約束をとりつけたらしい。

まだ安倍派になっていない段階での口約束にすぎないのだが、片山氏は俄然その気になってゆく。

総裁選に続く衆院選で、二階派は、重鎮、河村建夫・元官房長官(山口3区)の議席を守れなかった。

岸田政権が発足し、二階氏の後任として幹事長に就いた甘利明氏は、参院から衆院山口3区に林芳正氏がくら替えするのにともない、河村氏の出馬を見送るよう要請。引きかえに、その長男、建一氏を比例で処遇するという案を提示した。

河村氏はこれを受け入れて出馬を断念したが、健一氏は比例北関東ブロックであえなく落選した。かつて、林氏のくら替え意向に対し「売られたケンカ、受けて立つ」と息まいていた二階氏の威光に陰りが見えた選挙だった。

これで片山氏の腹は決まった。自身の改選がかかる今夏の参院選。二階派にとどまって戦いにのぞむ理由はない。片山氏は12月24日、党本部で二階氏に会い、派閥からの退会を申し入れた。

だが、林幹雄氏や武田良太氏ら二階氏の側近から見ると、甚だ不遜で義理を欠く行動には違いない。

片山氏は「私ぐらいになると二階派にいるから活動できていることはない」とうそぶくが、こういった態度が反発を招くのは自明のこと。ただでさえ、親分の凋落で派内の空気が澱み、人心は荒みがちなのだ。

2月21日付で、片山氏の事務所に二階派(志帥会)から一通の封書が届いた。二階俊博氏(会長)、中曽根弘文氏、林幹雄氏(会長代行)、武田良太氏(事務総長)の連名による書面だ。

昨今の貴殿の行為は、志帥会に所属する国会議員の信用を著しく失うものであり、かつ何ら是正も見られない。よって本日付をもって退会を勧告する。

片山氏が二階氏に口頭で伝えたことは、退会届けとして受理せず、あくまで派閥が「出ていけ」と引導を渡すかたちをとったのである。

片山氏は「名誉棄損だ」と反発し、2月23日、記者たちを事務所に集めて、会見におよんだ。

「活動の自由がなく、あたかもモノのような扱いだ。私は大臣経験者として、コの字型(閣僚応接室)では偉そうに座っていたが、この派閥の役員だったことはただの一度もない。引退幹部の後継ご子息の選挙がうまくいかなかった例があり、ああ派閥はもう守れてないんだなと認識した。派閥は党の正式な組織ではない。そこまでおっしゃるのは人権侵害だし、DVに似ている」

大臣経験者の自分を二階派内で相応に扱ってくれなかったというニュアンスがくみ取れる。片山氏は派内で孤立していたのかもしれない。その一方で、片山氏が安倍事務所に足しげく通っていたという話も聞く。

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安倍氏は実際のところ、片山氏が入会できるよう準備を進めているのだろうか。「安倍晋三元首相に任せている」と片山氏は楽観視するが、安倍派内には片山氏の入会に反対する声が強いという。

3月10日のデイリー新潮に、以下のような安倍派幹部のコメントが掲載されている。

「安倍派には片山さんに好感を持っていない議員もいます。安倍派に入るとなると、大モメは必至でしょう。頭の痛い問題ですが、安倍さんは一度話し合って、『派閥内には異論がありますよ』と報告しなければならないでしょうね」

自分の蒔いた種とはいえ、たしかに安倍氏は頭が痛いだろう。幹事長でなくなっても、二階氏が実力者であることに変わりはない。片山氏のことくらいで反目し合うのは得策とは思えない。エリート臭をふりまく片山氏がいかに尻尾を振ってきても、派閥のパワーゲームのなかでは、味方につける優先度は低いのではないか。

派閥の勢力図は年明けから若干の変動がみられる。岸田派に2人加入し、麻生派からは菅義偉前首相に近い4人の議員が去った。菅氏の周辺では、無派閥議員約30人からの再登板要請もあり、菅派結成への動きか活発化するかもしれない。

それでも、岸田派と麻生、茂木両派が岸田政権を支える大きな構図は変わらない。最大派閥の安倍派は今のところ、岸田首相と良好な関係を保っているように見せてはいるが、かりに参院選で自民党が負けて政局になれば、非主流の二階派や森山派などと組むことも十分考えられる。

安倍氏としては、できるだけ二階派との間にしこりを残したくないだろうし、片山氏を引き抜いたように見られたくもないのではないか。

こうしてみると、片山氏の思い通りにことが運ぶとは限らない。かりに安倍派入りの当てがはずれ、二階派からも睨まれるようなら、参院選に向けた苦しさは倍増する。まずは姿勢を低くして、吉報を待つしかなさそうである。

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image by: 片山さつき - Home | Facebook

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