政府は今月、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けての基本方針案をとりまとめました。中でも注目すべきは高齢者のデジタル機器利用を支援する策について。そこで今回はメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、スマホがなければ何もできない時代に取り残される高齢者の支援について語っています。
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政府が「デジタル推進委員」を2万人、確保すると発表—–スマホのことなら「プロ」に任せればいいのではないか
政府は6月1日、デジタル化を進めて地方活性化につなげる「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けて基本方針案をとりまとめた。そのなかで、デジタル機器を利用する高齢者を支援する「デジタル推進委員」を今年度中に2万人以上、確保すると発表した。
このニュースを聞いたとき「報酬がもらえるのなら、素晴らしい制度」だと思ったのだが、調べてみたらなんと無給なのだという。
民生委員やオリンピック・パラリンピックのボランティアなど、世間に奉仕したいという一心で無給で行う仕事も存在するが、デジタル機器を使いこなせるようにシニアをサポートする仕事はきっちりと報酬アリでもいいのではないか。
日本全国に「キャリアショップ」があり、スマートフォンの設定や操作に長けた優秀なスタッフは数多い。
オンライン専用プランが台頭し、NTTドコモはドコモショップを700店舗、削減するというなか、経営的に厳しいキャリアショップを救う意味でも、デジタル推進委員は、キャリアショップにお任せするのが現実的ではないか。
一方で、総務省では「デジタル活用支援推進事業」を展開している。
こちらはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが採択されており、全国でスマホ教室が展開されるようだ。
料金値下げや完全分離などで窮地に追い込まれたキャリアショップを総務省が救うつもりなのか。
いずれにしても、このような仕組みであれば、キャリアショップにもありがたいはずだ。
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ただ、なぜ「デジタル推進委員」と「デジタル活用支援推進事業」という二つの仕組みが混在しているのかが、謎だったりもする。いっそのこと、デジタル活用支援推進事業に集約した方がわかりやすいのではないか。
ANAは空港のチェックイン機を全廃し、スマホでのやりとりだけで予約、搭乗など旅のすべてのプロセスを行おうとしている。もはや、企業が提供するサービスはすべてDX化され、スマホがないと何もできない時代がやってくる。
本気でシニアにもデジタル機器を使いこなさせるつもりなら、自治体が提供するサービスも改善が必要だろう。役所の申請などをオンライン化するのは結構だが、使いづらければ誰も継続して利用しようと思わない。
誰もが使いやすいユーザーインターフェースにすべきだし、別に自治体毎に違うサイトである必要もない。いっそ、全国の地方自治体でひとつのプラットフォームを使い、すべて同じ操作性で使えるようなサイトにしてもいいのではないか。
全国の自治体が同じユーザーインターフェースであれば「できるマイナンバー申請」みたいな解説本をインプレスあたりが出してくれるだろう。
さらに言えば、ウェブサイトで対応するのではなく、すべてLINEのやりとりで役所との手続きが完了できるようになればいい。
「LINEだとデータがどこに保管されているか不安」であれば、「+メッセージ」でなんとかならないものか。
普段から使っている親しみのあるユーザーインターフェースで行政サービスが利用できるようになることが、地方のデジタル活性化につながる第一歩ではないだろうか。
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