内閣官房参与を務めていた時に、コロナの感染者数について「さざ波」発言をし、大炎上した高橋洋一氏。そんな高橋氏が官僚の真実について赤裸々に語った一冊の本があります。今回はこちらをご紹介。メルマガ『1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』』の中で詳しく解説していきます。
【一日一冊】大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実
高橋洋一 著/SBクリエイティブ
元財務官僚であった著者が教えてくれるのは、財務省の記者クラブの新聞記者はポチ(犬の名前)であったということです。餌を持っていくと、ただ食べるだけのポチです。
記者クラブの記者たちは、自分で勉強したり取材することもせず、ただ、財務省が準備したペーパーを基に記事を書いているだけ。予算を記事にするときも、予算書に目を通す人は一人もいないし、鋭い質問をする記者は一人もいなかったという。
著者が現役時代には、財務省内でマスコミ情報統制キャンペーンを行って、誰が一番うまく思うような報道をさせたか競争していたというのです。官僚から見てマスコミをコントロールするのは簡単なのです。
こんな事実を書いてしまうから、著者が内閣官房参与であったとき、コロナの感染者数を「さざ波」と表現したことで、マスコミから大批判されたのでしょう。いかに大手新聞・テレビが著者を恨み憎んでいたかわかります。
何の疑問もなく、財務省が用意したペーパーだけを基にして、記事を作ってしまう(p4)
また、森友学園や加計学園問題の真相は、マスコミ報道では見えてきません。なぜなら、真相を全く報道していないからです。
森友学園問題では森友学園の名誉会長を安倍晋三首相の夫人が務めていたことから役人が忖度したのではとの疑惑が持たれました。著者の解説では、ゴミが埋設されていた土地をゴミの存在を教えずに売ろうとしていた、というものです。もちろん、地元政治家が関係したりしていますが、お金のやりとはなく、もちろん安倍首相が関わるレベルの問題ではないのです。
また、加計学園問題についてはもっと単純で、朝日新聞で報道された議事録は文科省のメモであろうと著者は推測しています。その中に「総理のご意向だと聞いている」と書かれてあるという内容です。
そもそも、加計学園の獣医学部新設が認可されることが決まって、文科省としては敗北が決まった段階のメモなのです。これを根拠に首相を批判するのは文科省の組織的な抵抗であったのでしょう。
文科省はこうした許認可権によって獣医学部を新設させないことで天下りをしてきたのが、新設を強要されたばかりか、天下りも禁止され、天下り斡旋で事務次官も更迭される事態となっています。文科省はこの恨みをマスコミと一緒に晴らしたかったのかもしれません。
ゴミの存在が明らかになった後でも、近畿財務局は値引きや、処分費用を出すという提案もなく、森友学園側で場内処分をしてほしいとしか言っていない。この近畿財務局の対応について、森友学園側はかなり怒った(p33)
そして最後の財務省はなぜ、消費税増税を推し進めたのかの解説がわかりやすい。財務官僚も消費税を増税すれば、経済が悪くなることは理解しているのです。ただ、日本の将来のためにあえて国民に不人気な増税という選択をすると考えているのです。
そもそも民間の経済が悪くなっても、官僚の生活はそれほど変わらないし、バブル時代には民間の給与は上がったが官僚はそれほど増えず、相対的に惨めだったという体験をしているのですから、借金を増やすくらいなら、経済が悪くなってもかまわないと考えているというのが著者が財務省内で感じていたことなのです。
アメリカの自由と平等が白人による白人のためであったのと同じように、「消費税増税は日本の将来のためになる」の日本とは、官僚による官僚のための日本なのだと感じました。
いつもながら分かりやすい解説に感嘆しました。
高橋さん、良い本をありがとうございました。
【私の評価】★★★★☆(84点)
<私の評価:人生変える度>
★★★★★(お薦めです!ひざまずいて読むべし)
★★★★☆(買いましょう。素晴らしい本です)
★★★☆☆(社会人として読むべき一冊です)
★★☆☆☆(時間とお金に余裕があればぜひ)
★☆☆☆☆(人によっては価値を見い出すかもしれません)
☆☆☆☆☆(こういうお勧めできない本は掲載しません)
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