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Soldiers of special forces on wars at the desert,Thailand people,Army soldier Patrolled the front line,Calling up reinforcements

米国独占の世界を変えるべく裏で動く挑戦者は我らの脅威となるか

現状、世界はアメリカが大きな支配力を持っています。しかし、それを変えようとする「挑戦者」のような国も存在しているようです。今回のメルマガ『1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』』では、著者である本のソムリエさんが地政学的にその国の動き、紛争リスクを分析している一冊を紹介しています。

【一日一冊】不穏なフロンティアの大戦略-辺境をめぐる攻防と地政学的考察

不穏なフロンティアの大戦略-辺境をめぐる攻防と地政学的考察

ヤクブ・グリギエル , A・ウェス・ミッチェル 著 奥山真司 監訳 川村幸城 訳/中央公論新社

ロシアのウクライナ侵攻を見て、地政学の重要性を感じ、やはり奥山 真司さんの本を読みたいと考えて手にした一冊です。この本は2016年のトランプ政権が生まれる前に、国務省での勤務経験もある国際政治の専門家によって書かれたもので、奥山さんが翻訳しています。

この本では「現状変更国家」として、ロシア、中国、イランをあげています。これらの国家は、アメリカが支配する現状を変更しようと小さなリスクを取り続けているのです。

現状変更の例として示しているのは、ジョージア戦争(2008年)、ホルムズ海峡危機(2012年)、尖閣諸島紛争(2013年)、ウクライナ戦争(2014年から現在)、バルト海における海・空域での緊張(2015年)、スプラトリー(南沙)諸島をめぐる対立(2015年)などです。

大きなリスクを取り続けるとアメリカと正面でぶつかる可能性があるため、これらの国々はアメリカの強い反発がない範囲で、現地の勢力図を変えることができないかどうかテストしているわけです。

今回のロシアのウクライナ侵攻も、前回のロシアのクリミア併合がうまくいったので、短期間でウクライナを武力占領することでアメリカの強い支援が届く前に終わらせることができるとロシアは踏んていたのでしょう。

今日のロシア、中国、イランは自信に満ち、高圧的な態度をとり、軍備を増強している…この三大国の侵略的な態度は、今に始まったものではない(p18)

アメリカのリベラル勢力はオバマ政権を成立させ、地球全体をパートナー国としてロシアや中国とうまくやっていくことで、グローバル化を推進してきました。

しかし、今のアメリカは挑戦者として中国、ロシア、イラン、北朝鮮といった「現状変更国家」が存在すると認識しているのです。

この本では仮に現状変更国家との紛争リスクが高まったとき、現状変更国家の要求を受け入れたほうが好ましいと考えるべきなのか、軍事力で対抗したほうがよいのか、それとも同盟国と連携して対応したほうがいいのか検討しています。

この本では「できるだけ低コストで世界の主要地域のバランス・オブ・パワーを維持する」ため、日本とポーランドを中国とロシアに対抗するための外交・軍事面で同盟を強化していくべきだと提言しています。

日本、ポーランドが最初の防衛ラインとなることで、アメリカが軍を展開するまでの時間稼ぎができ、アメリカの限りある軍事資源を有効活用できるのです。

同盟国がアメリカに提供してくれる最も重要な地政学的利益とは、紛争が始まる前にそれを阻止してくれるという点だ。防衛的な同盟は、複数の国家の軍事的資源を結集させて侵略を抑止する役割を果たす(p171)

日本、ポーランドの立場から見れば、自国が防衛ラインとなるのは本意ではないかもしれませんが、アメリカから見れば日本とポーランドには軍事的に価値があるのです。

それに対して中国の政府高官は、「米国は中国と戦争になっても、防衛のために駆けつけてくれない」と繰り返し警告しており、アメリカの影響力を排除しようとしています。

そうした疑念を排除するためにもアメリカは日米同盟を強化し、尖閣諸島への適用を明確化し、安全保障へのコミットメントを明確にしているのでしょう。

歴史的に見れば、軍事同盟が存在することで、戦争の抑止力があることは証明されています。ただ、戦争を完全に抑止できるわけではないので、短期間に圧倒されないように、常に軍事力のバランスを保っておく必要があるのです。

リギエルさん、ミッチェルさん、良い本をありがとうございました。

【私の評価】★★★☆☆(74点)

<私の評価:人生変える度>
★★★★★(ひざまずいて読むべし)
★★★★☆(素晴らしい本です)
★★★☆☆(読むべき一冊です)
★★☆☆☆(余裕があればぜひ)
★☆☆☆☆(人によっては)
☆☆☆☆☆(こういう本は掲載しません)

image by :  Shutterstock.com

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【著者】 本のソムリエ 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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