白米よりも玄米、精製小麦より全粒粉の方が体に良いというイメージがありますが、本当のところはどうなのでしょう。はっきりしているのは、糖尿病の人にとってはどちらも「危険な食材」ということのようです。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』では、糖質制限食の提唱者として知られる医師の江部康二先生が、白米と玄米それぞれを摂取したあとの血糖値が、糖尿病の人にとってほぼ無意味な差しかないと説明。健康な人にとっても、穀物摂取が招く生活習慣病リスクの面では大差ないと伝えています。
この記事の著者・江部康二さんのメルマガ
茶色い炭水化物(玄米など)は体に良いのか?
「茶色い炭水化物(全粒粉や玄米)」は健康に良くて、「白い炭水化物(白米や白いパン)」は健康に良くない、という意見を固持する人は少なくないようです。日本人の場合だと、「玄米信仰」みたいなものがありますね。
何度も言っていますが、高雄病院ではもともとは「玄米魚菜食」を推奨していました。こちらは1984年からですが、病院給食として玄米を提供したのは、高雄病院が日本初だったと思います。ちなみにやはり日本で初めて病院で「糖質制限食」を導入したのが1999年ですから、玄米魚菜食のほうがはるかに早いですね。
ですから、「茶色い炭水化物」については1984年から現在まで39年間、高雄病院給食メニューにあるわけで、その効能については、勿論理解しています。「茶色い炭水化物(全粒粉や玄米)」が全面的に体に悪いわけではありません。耐糖能が正常な人には一定の意味があると思います。
しかし、「糖尿病を発症した人においては、玄米だろうが白米だろうが、茶碗一杯食べれば、食後血糖値のピークは200mg/dlを超えるので、糖尿病合併症を予防することは困難」というのが事実です。
例えば、私は玄米飯を茶碗1杯食べると、ピークの血糖値は220mg/dlで、白米だと240mg/dlです。僅かな差はありますが、糖尿病合併症予防の観点からは無意味です。
国際糖尿病連合は、合併症やがん予防のためには食後1時間か2時間血糖値が160mg/dl未満であることを推奨しています。「茶色い炭水化物は体に良い」と信じている人々に共通して欠落しているのが、「高インスリン血症」と「食後高血糖」の概念です。「高インスリン血症」と「食後高血糖」は、活性酸素を発生させます。
「高インスリン血症」と「食後高血糖」が、発ガンリスクや肥満・メタボなど様々な生活習慣病リスクとなることには、
- 国際糖尿病連合・2007年「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
- 国際糖尿病連合・2011年「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
など多くのエビデンスがあります。
国際糖尿病連合によれば、上述のように食後血糖値は、160mg/dl未満が目標です。そして、「食後、直接、血糖値の上昇を生じるのは糖質摂取時だけ」であり、脂質・蛋白質では生じません。これは、エビデンス以前の生理学的事実です。
糖尿人が白米を摂取したときに生じる「食後高血糖」は玄米を摂取した時にも必ず生じます。つまり「健康なイメージのある玄米も糖尿人には、危険な食材」ということです。全粒粉のパンも同様です。
糖尿人が食べれば、「白い炭水化物」も「茶色い炭水化物」も、共に必ず「食後高血糖」を生じるというのは「生理学的事実」ですので論争の余地はありません。
また、耐糖能が正常でインスリン分泌能力が充分ある人が穀物を摂取すれば、精製されていようと未精製であろうと必ず、インスリンが大量に追加分泌されるので、「酸化ストレス」となり、発ガンリスクや肥満・メタボなど様々な生活習慣病リスクとなるということです。
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