九州の有力企業であるスーパーマーケットの「タイヨー」。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、同社が経営危機に陥っていたタイヨーの再建をした際のことを取締役の清川照美氏が語っています。
鹿児島県を代表するスーパーマーケット「タイヨー」の奇跡はこうして実現した
鹿児島県を代表する有力企業であるスーパーマーケットのタイヨー。
同社がかつて深刻な経営危機に陥った際、再建を主導したのが、清川照美氏です。
多額の借入金、周囲の無理解……細腕に抱えきれないほどの試練を乗り越えて掴んだ経営の秘訣、そして幸福の条件とは?
『致知』最新号のインタビューより一部をご紹介いたします。
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──御社が直面された経営危機についてお話しください。
私は2002年より弊社の監査役、取締役を務めて、いったん会社を離れました。
弊社が他社から狙われていると噂される中、2012年に復帰してみると会社の状態が随分おかしくなっていました。
出店はどんどん加速しているのに、売り上げは停滞して、経費ばかりがどんどん膨らんでいる。
不動産収入があるので気づきにくかったのですが、数字を見てこれは大変だってすぐに分かりました。
東京の会計士の先生に決算書をダンボールで送り、プロの目で確認していただいたら
「清川さんがおっしゃる通り、大変な状況になっています」と。
株価も、本来なら2000円くらいの値が付いてもおかしくないのに500円台まで落ちていて、こんなにお買得な買収案件はありません。
実際、外資ファンドが弊社を買収するという噂もどんどん入っていて、これは大変だと思って再建に取り組んだのです。
──具体的にどんな手を打たれたのですか。
上場廃止(MBO)を決断しました。
弊社はそれまで東証二部(当時)へ上場していましたが、市場へ出ていた株を買い戻して買収を防ぎ、会社を再建することにしたのです。
周囲からは、そんなのは無理だから売ったほうがいいと言われましたけど、何としても会社を守り、社員を守り、地元の産業を守らなければという一心でした。
おかげさまで銀行様や会計士、弁護士の先生方をはじめ、お取引先様方、たくさんの方々のご支援をいただいて、翌2013年9月にMBOをやり遂げることができました。
けれどもMBOのために要した借入金は、合計454億円にも上りました。
──借入金が454億円。相当な覚悟が要ったのでは。
ハッキリ言って、怖かったですね。
個人資産もすべて担保に入れて、失敗したらゼロ。
無一文になっても仕方がないという覚悟でした。
そこまで腹を括ることができたのは、結婚の際に義父からいただいた「照美さんはタイヨーの嫁だ」という言葉が、心の中にずっと残っていたからでしょうね。
──MBOを実施されたことに対して社内の反応はいかがでしたか。
(……本誌に続く)
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