コーチを含めたほぼ全員が未経験。そこからチアリーディングの「甲子園」で、9連覇をなしとげた箕面自由学園高等学校チアリーダー部の指導はどのように行われてきたのか? 今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、指導者である野田一江さんのお話を紹介しています。
「うまくいかないのはコーチのせいや」強豪チアリーディング部を育て上げた指導哲学
チアリーディングの甲子園といわれるジャパンカップで9連覇、合計30回以上もの全国制覇を果たしてきた箕面自由学園高等学校チアリーダー部。
チーム創設時から指導に携わってきた野田一江さんは、当初はチアリーディング未経験の音楽教師だったといいます。コーチを含めたほぼ全員が未経験から出発したチームは、いかにして全国屈指の強豪になったのか──。野田さんの指導哲学をお話いただきました。
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──指導者として大切にしてこられたことは何ですか。
〈野田〉
一番必要なのは、生徒に対する愛情ではないでしょうか。それから謙虚さ。生徒と一緒に練習することで、自分自身も成長させてもらっているんですから、教えてあげているという感覚は絶対に持ってはいけないと思っています。
また、今回新型コロナウイルスの問題に直面して実感しているのは、現実を受け止める包容力の大切さです。うまくいかないことに対して、こんなはずじゃなかったと愚痴を言っていても前へ進めないので、いったん受け止めて、じゃあどういう作戦でいこうかと考えることが大事だと思います。
──指導者として、特に影響を受けた方はいらっしゃいますか。
〈野田〉
先程お話ししたアメフトの富田秀司監督がとても大きな方でしてね。指導を始めた頃にはなかなかうまくいかなくて、その方の前でつい愚痴が出てしまうこともありました。慰めてくれるかなと思ったら、「うまくいかないのはコーチのせいや。成功したら生徒の手柄。それをちゃんと考えるべきじゃないのか」とおっしゃったんです。要するに言い訳をしないことだと。これも私が指導者として大切にしてきたことです。
もう一人は、私の母校である京都堀川音楽高等学校の大先輩で、世界的なドラマーのツトム・ヤマシタさんです。私の高校時代に学校に来られて一緒にお食事する機会があったんですけど、その時に「道が2つあったら、必ず困難なほうを選んだほうがいいよ」って教えていただいたんです。
その時は全く意味が理解できませんでしたけど、指導者になって「あっ、本当にその通りだ」って心に蘇ってきたんです。困難に直面した時、私はいつもこの言葉に背中を押されてきました。
そうしたかけがえのないご縁や教えに恵まれて、創部から6年経った平成9年に日本一になることができたんです。
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