「あなたの接待交際費は多すぎます」「これは交際費としては認められません」――税務署からそんなふうに言われたら、思わず信じてしまいますよね。でも、それはウソかもしれないのです。本記事では、元国税調査官の大村大次郎さんが、接待交際費にまつわる「都市伝説」を解き明かし、交際費をつかいこなすための重要ポイントを解説します。(メルマガ『元国税調査官・大村大次郎の「本音で役に立つ税金情報“特別版”」』2025/3/1号より一部抜粋、再構成)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
接待交際費の大誤解1
今回は、事業をやっていく上で重要な勘定科目である「交際費」について、いろいろと解説していきたいと思います。
事業の利益調整をする際に、もっとも手っ取り早く、使いやすい方法として、交際費があります。交際費というのは、ざっくりに言えば取引先や従業員などと、飲み食いをする費用のことです。
酒を飲んで、それが利益調整になるとなれば、呑み助の経営者にとっては、またとない方法といえるでしょう。
が、この交際費については、誤解されている部分も多いものです。その誤解を徹底的に解いていきましょう。
個人事業主は接待交際費を使い放題
まず、接待交際費の基本は次のようになっています。
会社(法人)の場合、その規模によって交際費の枠が決められています。
いっぽうで、実は個人事業者にはそのような制限がありません。
・現在の日本の税法では、会社(法人)については原則として接待交際費の損金算入は認められていない
・ただし資本金1億円以内の中小企業(日本の会社の9割)は、年間8百万円まで接待交際費を税務上の経費に計上できる
・資本金1億円を超え100億円以内の大企業は、交際費の半額までを税務上の経費に計上できる(中小企業の場合も選択により、交際費の半額を経費に計上することもできる/資本金100億円を超える超大企業は交際費を全額損金算入ができない)
つまり、理屈の上では、個人事業者は交際費を無制限に使えるのです。
もちろん、交際費に該当する条件を満たしたものに限られますが、交際費の条件さえ満たしていれば、いくら計上してもいいのです。
この点に気付いていない個人事業者はかなり多いです。
個人事業者は、事業が軌道に乗ると法人化したがりますし、それは事業を拡大する正攻法でもあります。
が、事業内容的に交際費が非常に多い業態などでは、法人化しない方がいいケースもあるのです。
たとえば、営業が主体の事業などで接待交際費が多い場合は、あえて法人化せずに個人で事業を行うというのもアリだと思われます。(次ページに続く)
交際費は直接仕事に関係するものじゃなくてもいい
接待交際費に関するよくある誤解として、直接の取引仕事に関係する相手しか接待交際費に計上できない、というものがあります。
事業者の接待交際は、事業に関する接待交際であれば、何でもいいのです。
少しでも事業に役立つ情報を持っている人、相談に乗ってくれる人などを接待するならば、立派に接待交際費として計上できます。
税務署員の口車に気を付けろ
またゴルフなどを接待した時に、自分のプレー代は接待交際費に計上できない、などという縛りを聞くこともありますが、これは都市伝説に過ぎません。接待ゴルフであれば、自分のプレイ代も接待交際費として計上できます。
時々、税務署の調査官が嘘をついて、「あなたのプレイ代は認められない」などと言って、追徴税を巻き上げることが稀にあるので、気を付けてください。
自社の従業員を飲みに連れて行った場合も、接待交際費として損金計上できます。
交際費は税務署に指摘されやすい?
この交際費という経費は、税務署と見解の相違が起きやすいものでもあります。
税務署としては、私的経費が含まれているのではないかと常に疑いの目を持っています。
仕事は全く関係のない、私的な交際費であれば経費にできませんので、税務署はそれを見つけたいのです。
そしてあの手この手で交際費を否認してこようとします。
が、先ほども述べましたように、交際費は少しでも仕事に役に立ちそうな交際であれば大丈夫なのです。
また交際費が仕事に関連するかどうかの明確な基準はありません。
その場合、何が判断基準になるかというと、まずは納税者自身が「交際費と判断したかどうか」です。(次ページに続く)
「交際費が多すぎる」と言われても正々堂々と反論しよう
日本は申告納税制度を採っているので、原則として納税者の申告は認められるのです。
税務署側が、その交際費を否認するための明確な証拠を持っていない限り、否認することはできないのです。
つまり、納税者側は自分の判断で申告し、決められた記録を残しておけばそれで十分なのです。
それ以上に、「真実を証明する義務」などはないのです。税務署がその申告を否定する場合は、「税務署側がそれを否定する証拠」を用意しなくてはならないのです。
また税務署は、「交際費が多すぎる」などと文句を言ってくることもあります。
が、交際費が多すぎるからといって否認できるものではありません。
一つ一つの交際費が、交際費に該当しているのであれば、多すぎるからダメなどということはありえないのです。
だから、税務署に対してしっかり主張しましょう。
そして、税務署の口車に乗らないようにしましょう。
ただし交際費について、税務署の目が厳しいことは確かなので、領収書や相手先などの記録はきちんと残しておく必要があります。(次ページに続く)
キャバクラ代も接待交際費に計上できる
接待交際費の大きな誤解の一つに、「二次会の費用は接待交際費に計上できない」というものがあります。これも都市伝説に過ぎません。
実際に税務署の調査官によっては、「一次会の費用は認めるけれど、二次会の費用は認めない」などと(嘘を)言う人もいます。
だから、会計の都市伝説として、「一次会の費用は交際費にできるけれど、二次会の費用はできない」というようなものが出回っているのです。
しかし、実はこれには何の根拠もないのです。
一次会であろうと二次会であろうと、接待交際をしていれば、立派に接待交際費として計上できるのです。
接待をするときに、一次会だけで終わり、というようなことは少ないはずです。
二次会があるほうが普通だといえるでしょう。
二次会の(たとえばキャバクラ)からは、自腹で払わなければならない、などというのは、絶対におかしい話なのです。
だから、調査官から文句を言われても――
(この続きはメルマガ『元国税調査官・大村大次郎の「本音で役に立つ税金情報“特別版”」』2025/3/1号をご覧ください。大村さんが、税務署からツッコまれた際のポイントを解説しています。同号では「交際費の大誤解1」「キャバクラ代を接待交際費に計上する方法」のほか、「起業入門5~開業時に提出する書類」も掲載。メルマガ登録で、すぐに全文をご覧いただけます)
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