元国税調査官の大村大次郎氏が、事業者向けの専門記事をプラスした「特別版」の有料メルマガを新創刊しました。今回はその中から必読記事を無料でご紹介します。
事業が軌道に乗り、青色申告や法人成りをする際に避けられないのが「良い税理士選び」です。実はこの税理士、弁護士や公認会計士に次ぐ超難関資格にも関わらず、大きく分けて「試験突破組」と「国税OB組」が存在。得意・不得意分野も千差万別のため「なんとなく」で選ぶと大損をする恐れがあることをご存じでしたか?本記事では、元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、あなたにピッタリの税理士を選ぶポイントを建前なしのホンネで解説します。(メルマガ『元国税調査官・大村大次郎の「本音で役に立つ税金情報“特別版”」』2024/10/1・10/16号より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
税理士は「みんな同じ」ではない
(※本項は10/1号より一部抜粋・再構成)
事業を行うにあたって大事なことに「税理士選び」があります。事業の規模が大きくなっていくと、税務や経理を行う際に、税理士に依頼せざるを得ない状況が出てきます。
個人事業の白色申告くらいまでならば、頑張れば自分でもできます。が、青色申告にしたり、会社にしたりとなるとかなり難しくなります。
また忙しい経営者にとって、経理などに時間を割くことは大変です。必然的に税理士に依頼することになるのですが、ここで肝に銘じていただきたいのが、「税理士はすべて同じではない」ということです。
税理士は、その技能の差が非常に大きい職種でもあります。税法をたくさん知っておかなければならない上に、税務署の職員との交渉能力、書類の作成などを素早くこなす事務処理能力が求められます。
また税理士に依頼すると、事業の内部事情や取引関係などの重要な情報をゆだねることになります。だから、よほど信頼のおける人じゃないとならないのです。
いい税理士にあたれば、事業経営に本当に頼りになります。有益な情報をたくさん教えてくれ、税金も安くなります。
しかし、ダメな税理士にあたると散々な目に遭います。税金は安くならず、税務署が調査に来た時にはさんざん追徴税を食らわせられるというようなことにもなりかねません。
また税理士は、税理士になるためにはかなり厳しい条件をクリアしなければならず、「先生」とも呼ばれる職業です。苦労した分だけ周囲に気を使える立派な人もいますが、逆にプライドが高く「サービス業」であることを忘れている人も多いのです。
節税や経営のアドバイスなどはしてくれず、最低限度のことしかしてくれない。つまりは不親切な人も多いということです。税理士を頼むときに、知り合いに税理士がいるからといって、その人に頼んでしまうケースが非常に多いようです。これはとても愚かなことだといえます。能力が高ければ問題ありませんが、そんな運のいいことはあまりないのです。
税理士には試験突破組と国税OB組の2種類がある
いい税理士の見分け方をご紹介する前に、税理士の種類について少しお話しておきたいと思います。税理士には、大きく分けて二種類あります。
一つ目は、国税(税務署)に21年以上従事した人が税理士資格をもらって税理士を開業する、いわゆる「国税OB税理士」です。もう一つは、税理士試験を突破して税理士になった、「試験突破税理士」です。両者の特徴を簡単に述べましょう。
国税OB税理士の場合、税務の現場に強く、税務署との交渉などもうまいけれど、最新の税法、会計の知識はそれほどないという傾向があります。
しかも、国税職員というのは、自分の専門の税法が限られています。というのも、国税職員は最初に担当した税目を定年まで担当することが多いからです。たとえば、個人所得税担当の国税職員はだいたい、入省してから退職するまで個人所得税を担当します。時々、総務に行ったり、ほかの税目を担当する期間もあったりしますが、原則として自分の担当税目は変わることがありません。
だから、個人所得税担当だった国税OB税理士は、法人税のことはあまり知らないということになります。法人税担当、相続税担当も同様です。
OB税理士は、税務署とのパイプも持っていますから、いろんな意味で税務署対策に適しているといえます。ぶっちゃけた話、税務署もOB税理士に対しては、遠慮している面があるのです。
一方、試験突破税理士の方は逆に、税務署との交渉などはそれほどでもないけれど、事務処理能力は高く、最新の税法、会計の知識に長けている傾向にあるということが言えます。だから、経理の指導や申告書の作成だけを目的とするならば、試験突破税理士がいいと言えます。
もちろん、これは全体的な話であって、会計に詳しい国税OB税理士もいるし、交渉能力の高い試験突破税理士もいます。