安保局長人事で外務省「復権」 秋葉氏、問われる対中・安保戦略

2021.07.08
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by 時事通信


米国のビーガン北朝鮮担当特別代表(左)と握手を交わす秋葉剛男外務事務次官=2019年12月、東京都港区(AFP時事)

米国のビーガン北朝鮮担当特別代表(左)と握手を交わす秋葉剛男外務事務次官=2019年12月、東京都港区(AFP時事)

 3代目の国家安全保障局長に秋葉剛男前外務事務次官が7日、就任した。初代の谷内正太郎氏以来の外務省出身局長で、外務省の影響力が久々に強まるとの見方がある。ただ、覇権主義を強める中国との関係や経済安全保障戦略の策定、昨年来棚上げになっている「敵基地攻撃能力」の検討など難題は山積している。
 国家安保局長は首相執務室に日参し、外交・安保に関する助言を行う。首相との距離の近さから、その意向は各省の政策形成に直結するとされる。2代目の北村滋前局長は警察庁出身だったことから、「ポスト奪還」は外務省の悲願だった。
 首相は、半導体など重要品目で中国への依存度を下げるための経済安保戦略や、安倍前政権からの宿題である敵基地攻撃能力の保持について、本格的な議論を先送りしてきた。公明党が敵基地攻撃能力の保持に慎重なことから、「衆院選前に着手するのは得策でない」(高官)との計算もあった。
 しかし、首相は4月の訪米時、バイデン米大統領との首脳会談で、日本の防衛力や日米同盟の抑止力・対処力の強化を約束。外務省幹部は「この先何もなしでは済まない」と身構える。年内に開催予定の日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)では突っ込んだやりとりが想定される。
 政府内では中国の急速な軍拡のあおりを受け、国家安保戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画(中期防)の改定も取り沙汰されている。習近平国家主席の国賓来日の扱いや、冷え切った日韓関係の改善など、早急に対応を迫られるテーマは多い。
 秋葉氏は中国との「戦略的互恵関係」や「自由で開かれたインド太平洋」構想の立案に携わったことで知られる。首相の信頼も厚い。山積した課題にどう取り組むのか。早速、真価が問われそうだ。(2021/07/08-08:13)

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