紳也特急

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全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース!  性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。

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メルマガ名
紳也特急
発行周期
月刊
最終発行日
2017年09月29日
 
発行部数
810部
メルマガID
0000016598
形式
PC・携帯向け/テキスト形式
カテゴリ
生活情報 > 健康・医療 > その他

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全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を
精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース!

性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を
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~今月のテーマ『問題の根っこにあるもの』~

●『障がい者の性の映画』
○『秘忍者ジミー・ハットリに感謝』
●『答えは現場にある!』
○『つながり』
●『根っこの問題に共通する対策を』
○『人は経験に学び、経験していないことは他人ごと』

…………………………………………………………………………………………

●『障がい者の性の映画』
 リリー・フランキーが演じる脳性マヒの主人公の恋愛とセックスを題材に
した映画「パーフェクト・レボリューション」が公開されました。この映画
がきっかけで、NHKのクローズアップ現代+でも「障害者と恋とセックスと」
いう番組が組まれました。リリー・フランキーさんも「ヒットしないけど
『クローズアップ現代』が取り上げたから意味があった」と発言されていた
ように、いろんな切り口で社会に問題提起をし続けていれば、少しずつ理解
の輪が広がってくれると期待していますが、なかなかハードルは高いのかな
とNHKの取り上げ方を見て感じました。
 2か月前の紳也特急8月号で『「障がい者の性」という錯覚』について書か
せてもらいました。「障がい者の性」の問題は、実は「健常者の性」の問題
ですと。しかし、「障がい者の問題」という視点を前面に出すことで、自分
にも降りかかり、突きつけられてくる「健常者の問題」を見ないようにした
いのが人間なのかもしれません。しかし、自分の問題から逃げていては「障
がい者の性」の問題も解決に向かわないので、もっと根本的なところに焦点
を当てた「問題の根っこにあるもの」を分析、紹介するような番組をやって
もらいたいと、改めて思いました。
 と、文句を言うだけではなく、自分がそのような機会をもっと作ればいい
と反省させられたのが、9月24日に開催された第一回AIDS文化フォーラム in
名古屋での数多の出会いでした。そこで今月のテーマを「問題の根っこにあ
るもの」としました。

『問題の根っこにあるもの』

○『秘忍者ジミー・ハットリに感謝』
 2017年9月24日(日)にAIDS文化フォーラム in 名古屋が開催されました。
開催の原動力はコンドームのゆるキャラの秘忍者ジミー・ハットリくんでし
た。横浜、京都、陸前高田、佐賀へと広がったAIDS文化フォーラムを名古屋
で開催すべく、もともと愛知県で幅広く活動されていた愛知思春期研究会の
共同代表の産婦人科医の丹羽咲江先生、学校の先生でマジシャンの中谷豊実
先生のお二人に呼びかけ、愛知思春期研究会が定期的に開催されている性教
育フォーラムとの共同開催にこぎつけました。
 AIDS文化フォーラムが横浜から各地へと広がった原動力は、それまでは
AIDS文化フォーラム in 横浜に長くかかわってくださっていた人たちのおか
げでした。ただ、正直なところ、今回の名古屋への広がりの原動力になった
秘忍者ジミー・ハットリくんの力は未知数でした(ごめんなさい)。でも、
AIDS文化フォーラム in 京都や横浜では全体を盛り上げたり、陸前高田では
マラソンを走ったりと、何度となく秘忍者ジミー・ハットリの本気度を見せ
ていただいていました。その彼が「ぜひ名古屋で」と動いてくれたので一緒
に頑張りたいと思い「何だってするよ」と大きく出た私は、午前中のパネル
ディスカッションの司会と、午後の締めの講演を依頼されました。

●『答えは現場にある!』
 「ジミー・ハットリと性を考えよう!」というパネルディスカッションが
30分後に始まるというのに、打ち合わせは愚か、出演者の顔合わせもできて
いない状況の中で、私を含めて出演者の誰もが不安になったのも事実でした
(苦笑)。出演者と活動内容は以下の通りでした。
 ハーレーサンタCLUB名古屋代表の冨田正美さん(児童虐待防止啓発活動)
 ANGEL LIFE NAGOYA副代表のこきんさん(ゲイによるゲイのためのHIV感染
予防啓発活動)
 NPO法人ASTA共同代表理事の久保勝さん(LGBTに関する啓発活動)
 NPO法人再非行防止サポートセンター愛知スタッフの渋谷靖幸さん(再非行
防止支援活動)
 Thrive代表の涌井佳奈さん(性被害当事者支援)
 この方々は、ジミー・ハットリがAIDS文化フォーラム in 名古屋に向けて
開催した勉強会の講師で、当事者の方もいれば、当事者ではない支援者もい
ました。AIDS文化フォーラムの趣旨はご理解されているものの、本当にこの
メンバーで何か共通点を見出せるだろうかと思った人も少なからずいたと思
います。そんな感じで始まったパネルディスカッションでしたが、案ずるよ
り産むが易し。自己紹介をしていただきながら、すぐに気づかされたのが、
みなさんの共通点でした。全員が「現場」を経験していた、「現場」を大事
にしてきた人たちでした。「事件は現場で起きている」という有名なセリフ
がありますが、現場を経験してきた、当事者の苦労を肌で感じてきた方々ば
かりだったので、一人ひとりが見てきたこと、感じてきたことの共通点を見
出すのは容易なことでした。

○『つながり』
 今回のパネルディスカッションのキーワードは「つながり」でした。児童
虐待につながる望まない妊娠や性のトラブルに巻き込まれる人たちの根っこ
にあるのは自分自身が人とつながっていない寂しさ。HIV感染もつながりを
求めた結果。LGBTへの無理解や偏見も仲間として当事者とつながっていなかっ
たため。再非行防止での最初の行動で大事なのは当事者とのつながりの構築。
性被害当事者同士がつながることで癒される。岩室が心がけている薬物使用
者、依存者支援の第一歩もつながりの構築。
 最近、講演の中で「関係性の喪失」という警鐘を鳴らしていますが、登壇
されている方々はまさしく現場でこの「関係性の喪失」に直面し、その対策
として「関係性の再構築」を意識し続けておられました。ハーレーサンタ
CLUBがなぜ目立つバイクの「ハーレー」なのかと言えば「楽しくなければつ
ながらない」という思いからでしたし、その冨田さんは岩室と同じくコンドー
ム柄のネクタイをされていました。見事に冨田さんと岩室がつながりました。
岩室がコンドーム柄のネクタイをしているのも、ネクタイがきっかけで先輩
から後輩へと「コンドームの達人が学校に来るぞ」とつながっていくのを何
度も経験させていただいているからです。

●『根っこの問題に共通する対策を』
 パネルディスカッションや締めの講演の後の参加者の感想で印象的だった
のが、岩室紳也に染みついている「コンドームの達人」というイメージと、
パネルディスカッションや講演の内容との乖離でした。コンドームの達人と
しての私を知っている人たちは、「もっとコンドームのことを強調するのか
と思った」と感想をくださいました。しかし、パネルディスカッションも、
講演も、「つながり」、「関係性」、「居場所」の重要性を感じていただく
内容でした。もちろん避妊や性感染症予防におけるコンドームの重要性は否
定されるものではありません。しかし、望まない妊娠やHIV/AIDSをはじめと
した性感染症を回避するためには、コンドームを教える前に、友達ともっと
性の話ができる環境整備をする必要があります。それができるようになれば、
児童虐待、HIV/AIDS、LGBT、非行、性犯罪等々の問題も気が付けば解決に向
かったり、当事者が乗り越えられる環境になったりしていくはずです。
 「つながり」と「予防」の関係性が感覚的に理解できる人たちは「現場」
を知っているということに気づかされる一方で、「現場」を知らなければ、
経験していなければ、やはり他人ごとなのかなと思ったりもしました。

○『人は経験に学び、経験していないことは他人ごと』
 今回のパネルディスカッションを通して、今後の対策の方向性が少し見え
てきました。常々、問題がそもそも起こらないようにする「一次予防」が重
要だと思っています。しかし、今回、犯罪を予防するには、まずは自分自身
が何故その罪を犯していないのかをしっかりと考える必要があることを改め
て強く認識させられました。
 「あなたはなぜ痴漢という罪を犯していないのでしょうか」と聞かれたら、
貴方はどう答えるでしょうか。
1. 犯罪だから
2. 実はしているけどばれていないだけ
3. したい気持ちになったことはあるけど社会的に葬られたくないから
4. 考えたこともない
 1と4を選択した人は「痴漢という犯罪」の根っこを自分ごと意識でとら
えられていないと言えます。もちろんそのように感じるのが一般的な反応で
すが、薬物乱用防止教育の「ダメ絶対」の発想と同じで、結局のところ痴漢
を犯罪という視点で非難して終わりです。一方で2や3を選んだ人は、自ら
の経験からどうすれば「予防」が可能になるかを考えるヒントを持っている
人たちです。ただ、2や3を選んだことを公表した瞬間に、周囲の冷たい目
線にさらされることを覚悟する必要があります。もちろん痴漢や薬物は罰せ
られる行為ですが、人間は誰しもそのような行動をとってしまう可能性があ
るという事実を社会全体で受け止める寛容さがなければ、結局のところ「犯
罪予防」の可能性が遠ざかってしまうのではないでしょうか。

 犯罪者を減らすためには、まずは犯罪者を再犯させないために、犯罪者が
なぜ罪を犯してしまったのかと同時に、なぜあなたが罪を犯さずにいられる
のかを共有、共感できる社会になることが求められていると改めて思いまし
た。

「問題の根っこにあるもの」というタイトルにした後に倉本聰さんの次の言
葉に出会いました。

「樹は根に拠って立つ されど根は人の目に触れず」

 急がば回れ。でもせっかちな、他人ごと意識の人が多い日本人には難しい
ことでしょうか。

 2017年9月30日(土)~10月1日(日)はAIDS文化フォーラム in 京都です。

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