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すべてはカネ。トランプとプーチンが「相思相愛」である明快な理由

前回掲載の記事「中国が仕掛ける『トランプ氏』懐柔工作。日本は太刀打ちできるのか?」で、トランプ氏と中国の関係について考察した無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが今回掘り下げるのは、トランプ氏とロシアの関係。トランプ氏はプーチン大統領を好ましく思っているようですが、その「理由」に今後の米ロ関係を読み解くヒントが隠されているようです。

トランプは、なぜプーチンが好きなのか?

今回はアメリカとロシアの関係についてです。2014年2月、ロシアの西の隣国ウクライナで、革命が起こりました。親ロシアのヤヌコビッチ大統領が失脚した。そして、親欧米派が政権につきました。2014年3月、ロシアは、クリミアを併合。これで、欧米+日本は、対ロシア制裁を課した。制裁は、今も続いています。

ロシアにとってさらに悪いことに、原油価格がバレル100ドルから一時30ドル台まで大暴落。今見ると、北海ブレントは、バレル47ドルでした。それでも、100ドルの半分以下。

さらに、ルーブルが大暴落した。クリミア併合前は、1ドル35ルーブルぐらいだったのが、70ルーブルまで下がった。今見ると、1ドル64.7ルーブルでした。

つまり、ロシアは2014年3月から現在に至るまで、「経済制裁」「原油安」「ルーブル安」の「三重苦」で苦しんでいる。

プーチンとしては、「経済制裁を解除してもらうためトランプと仲良くしたい。これは、誰でもわかります。わからないのは、「なぜトランプはプーチンと仲良くしたいの?」ということ。

トランプは、「プーチンとの和解」を公言している

アメリカ大統領選挙戦。ヒラリーさんは熱心に、「トランプはプーチンに操られている!」と主張していました。ヒラリーよりのメディアでは、「ロシアのハッカー軍団が選挙を左右する!」「プーチンはシリアでものすごい残虐行為をしている」などと報じられていた。

情報戦の構図としては、

  1. プーチンは悪魔のような男
  2. トランプは、悪魔プーチンの操り人形
  3. だから、トランプに投票しないでね!

しかし、トランプの姿勢は、一貫していました。「俺はプーチンと会ったこともない。しかし、プーチンと協力してISをぶちのめせればいいじゃないか?」。この点は、最後の最後までぶれることなく一貫していました。そして、勝利後は、早速ロシアとの関係改善に意欲を燃やしています。

<トランプ氏>露大統領と電話協議 関係正常化で一致

毎日新聞11/15(火)10:24配信

 

【モスクワ真野森作】米国の次期大統領となったドナルド・トランプ氏とロシアのプーチン大統領は14日、トランプ氏の当選後初となる電話協議を実施した。

 

両者は、現在険悪な米露関係の正常化を目指すことや、「共通の大敵」である国際テロ組織との戦いで協力すべきだといった考えで一致。今後も電話協議を続けながら、会談実施を目指すことで合意した。

苦しいロシアがアメリカとの和解を望むのはわかる。でも、なぜトランプは、ロシアとの和解を望むのでしょうか?

トランプは、オバマのシリア政策にあきれている

トランプが一貫して主張しているのは、「プーチンと協力してISを潰そう!」ということ。なぜ?

シリア情勢について、簡単に触れておきましょう。2011年にシリア内戦が始まった。現大統領の「アサド派」。反大統領の「反アサド派」。当時、「イスラム国」(IS)は、「反アサド派」に属していた。

ところが、皆さんご存知のように、ISは2014年から急速に勢力を拡大していった。彼らは、欧米が支援する「反アサド派」から独立して「別勢力」になった。そして、外国人を捕まえては、公開処刑の様子をユーチューブで流し始めた。

その残虐さに欧米世論が沸騰し、オバマは2014年8月、IS空爆を開始します。しかし、オバマのIS空爆は、「やる気がない」。なぜ?? オバマにとってISは二つの要素がある。つまり、

  1. 欧米でテロを起こす、悪の存在
  2. アサド政権と戦う、アメリカにとって都合のいい存在

ISは、確かに欧米でテロを起こすが、その一方で、アサド政権と戦ってくれている。この二面性ゆえに、オバマのIS空爆は、「やってるフリ」。実際、ISの主要資金源である石油インフラへの空爆は、全然やっていなかったのです。

こういう状況を見て、トランプさんは、「バカじゃないのか?!」と怒っている。トランプさんの考えはこうなのです。

皆さんどうです? 私は、「まさに正論じゃないか?」と思います。

そして、「アサド政権は存続してもいいから、世界の敵ISを潰せ!」というのは、プーチンの考えと同じなのです。というのは、アサドは「親ロシア」で、シリアにはロシア海軍基地もある。

ちなみにロシアは2015年9月から、「反アサド派」「IS」への空爆を実施しています。プーチンの目標は、「親ロシア・アサド政権を守ること」ですから、迷いも二面性もありません。オバマと違って、じゃんじゃん石油インフラを空爆し、ISに壊滅的打撃を与えた。トランプは、この様子を見て、「偉いぞプーチン!」と褒めている。

トランプさんは経営者。だからお金の計算をします。プーチンは、アメリカでテロを起こすISを叩いてくれている。トランプから見ると、プーチンは、「無料でアメリカの敵を潰してくれている。経営者の彼にとっては、こんな嬉しいことはないのです。

米ロ関係はこれから良くなる

RPEでは、「シリア問題で米ロ関係は悪化しているがそれも選挙までだろう」と予測していました。予想どおり、米ロ関係は改善に向かっています。そして、トランプには、「日本は、アメリカの属国でなければならない」という固定観念がありません。これが「政治畑」を全然歩んでこなかった彼のよいところ。

日本は、今までと違い、対ロシア関係で行動の自由を得ることでしょう。ですから、今後の問題は、「日本政治家の質」なのです。

中国の戦略は、

(中国戦略の詳細はこちら→反日統一共同戦線を呼びかける中国

だから、日本がやるべきことは簡単です。

  1. アメリカとの同盟関係をますます強固にする
  2. ロシアと和解することで、結果的に中ロを分裂させる

言ってみれば簡単なのですが、「欲」とか「エゴ」に汚染されていると、平明に見られなくなります。2次大戦前も、「満州は日本の生命線!」などと言い、アメリカ、イギリス、ソ連、中国を同時に敵にまわしてしまった。

「アメリカとロシアを味方にし、中国に侵略のアクションを起こさせない」。

これが日ロ関係改善の意義です。北方4島を返還してもらうことは、もちろん大事です。しかし、中国から沖縄を守ることはもっと重要ではないでしょうか?

安倍総理は、こういう「大戦略的意義」を自覚して、ロシアとの和解を実現していただきたいと思います。

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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