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【書評】なぜ救急車を呼ぶと、「痛くない死に方」ができないのか

ほぼ日刊で書評や映画評を届けてくれる無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんですが、今回取り上げた書籍は、メルマガ『長尾和宏の「痛くない死に方」』の発行者で2,000人以上を看取った医師にして日本尊厳死協会副理事でもある長尾和宏氏の著書。誰しも逃れられない「死」について綴られた衝撃作です。

痛くない死に方
長尾和宏・著 ブックマン社

すごい本である。体裁が。真っ赤なカバーに『痛くない死に方』の黒文字。医師・長尾和宏が書いている。4年前にも『「平穏死」10の条件』というベストセラーがある。在宅看取り、平穏死という言葉を知る人は増えたが、医療者医療業務に従事する者の空気はあまり変わっていないと感じているという。

著者による定義。

著者は欧米の安楽死には賛同しない。尊厳死・平穏死と比べて自然な死とは言い難いからだ。日本においては必要性を感じていない。なぜなら、日本は緩和ケアの技術に優れ在宅医療制度も整備された世界で唯一の国だからである。上手に緩和ケアの恩恵に浴せれば、寿命を全うして、痛みなく逝けるのだ。

枯れて死ぬ=平穏死、これがいちばん痛くない死に方である。

あらゆる治療には延命と縮命の分水嶺がある。だから「やめどき」を見極めよ、と申し上げたいのです。

溺れて死ぬとは、自然な死に方の正反対である。人生の最後の10日間に過剰な点滴など延命治療をした人は、痰や咳で苦しみ、ベッド上で溺死する。これが日本人の大半の死に方だという。わたしの両親と妻の両親は病院で、わたしの祖父母は自宅で、長めに病床についた人もいたが、いずれも苦しまずに静かに逝った。現在では、そう簡単に逝かせてもらえまい。

終末期以降に過剰な輸液の延命治療を続ければ、心臓や肺に甚だしい負担がかかり心不全と肺気腫でもがき苦しむという恐ろしい事態に陥る。自宅で平穏死した人の遺体は枯れているから軽いが、大学病院で亡くなった人の遺体はずっしり重い。10kg以上違うと葬儀業者の証言。わたしは突然死か枯れ死を望む。

延命治療がいったん始まってしまうと、患者の意思や家族の想いと違ってきても、中止するのは困難である。もし中止すると、医師が罪に問われる可能性があるらしい。多くは管につながり、苦痛がセットになっている。延命治療は受けず、しかし「緩和治療」はしっかり受けられれば、平穏な最期を迎えられる。

「救急車を呼ぶ」ということは、「蘇生処置も延命治療もフルコースでして下さいという意思表示となる。自宅で平穏死したいと切望していた人も、救急車を呼ばれたら暗転である。著者の言いたいのは、「往診してくれるかかりつけ医を持て」ということだが、著者のような理想的な「かかりつけ医」を持てる幸運な人は多くないだろう。もっと年をとったら捜してみる。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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