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羽生善治永世七冠と井山裕太囲碁七冠、「平成の天才」の共通点

囲碁、将棋の世界でそれぞれ前人未到の記録を打ち立てた井山裕太七冠と羽生善治竜王。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、当代きっての天才の国民栄誉賞受賞を記念して、お二人が雑誌『知致』に登場した際の含蓄溢れる言葉を紹介しています。

羽生、井山両氏に国民栄誉賞

将棋の羽生善治永世七冠と、囲碁の井山裕太七冠に2月13日(火)、国民栄誉賞が授与されました。今回は『致知』に登場いただいた折のお二人の発言の一部を紹介し、その功績を称えたいと思います。

羽生善治(永世七冠)

私はきょうまで将棋を続けてきて、一つのことに対して十年、二十年、三十年と同じ姿勢で同じ情熱を傾け続けられるのが才能だと実感しています。

それでも、長い間やっているとどうしても浮き沈みっていうのはあるんですね。例えば、朝起きてきょうはちょっとしんどいなとか。瞬間的なものなら無理してでもできるでしょうけど、本当の長い歳月となると、どうしても上り下り、バラツキが出てしまう。ですから、あまり前のことを振り返らないでやっていくことが、長く続けていく上では大切なことなのかなとは思っています。

棋士としてのあり方という点では、いまでも印象に残っているのが、亡くなった米長邦雄先生です。私が初めて名人戦に臨んだ時の相手が、前年に49歳で名人位に就かれた米長先生でしてね。

あの時の先生は、対局中に一回も膝を崩されなかったり、並々ならぬ思いを込めて臨んでおられました。勝負は、私が三連勝して名人位に王手をかけたんですが、そこから先生が盛り返されて二連敗を喫してしまいました。後で知ったんですけど、米長先生は私に三連敗した後、負けたら引退するつもりで第四局に臨まれていたらしいんです。

ところが先生は、対局の合間の休憩時間などには、立ち会いの内藤國雄先生と朗らかに談笑をなさったりして、そういう覚悟は微塵も感じさせなかった。並々ならぬ決意を持って勝負に臨みつつも、そういう逆の振る舞いをあえてなさっていた姿が、非常に印象に残っています。米長先生の世代の方とは、タイトル戦を戦う機会が少なかったので、とても貴重な勉強をさせていただきました。

井山裕太(囲碁七冠)

子供の頃はしょっちゅう負けては涙を流していましたから、負ける辛さは本当によく分かっています。ただ、師匠から「負けて涙を流しているだけでは何万回打っても強くなれない」と、なぜ負けたのかを反省することの大切さを諭されました。

プロになってからは、正直言って自分がどこまでやれるかという不安が結構ありましたし、最初に張栩さんに名人戦で挑戦して負けた時というのは、この人に勝つのは本当に大変だろうなとも痛感しました。それぐらい大きな差を感じて、ショックを受けたんです。

でも、それをこれからの自分に生かせばいいと気持ちを切り替えてまた対局に臨み続けたんです。タイトル戦ではもちろん負けもたくさん経験していますし、その度に辛い思いもしますけど、すぐ次の対局が来ますので、塞いでいる暇もないというのも正直なところです。

とにかくタイトル戦という最高の舞台で、最高の相手と濃密な時間を過ごすことが一番勉強になるわけですから、せっかくそういう機会を得たからには最大限に生かさなければなりません。

自分の場合は囲碁をずっと好きでやってきたわけですが、そういう気持ちを表現する意味でも、目の前の一手、一局に集中することはもちろん大切にしてきました。

対局中だけでなく、普段どれだけ囲碁のことを考えしっかり向き合っているかその積み重ねが凄く大事だと思います。いい時は誰でも頑張れると思うんですけど、大変な時でも変わらずにそういう姿勢を持続するということは大事だと思いますね。そういう意味では、どの世界でもそこで長く活躍されている方というのは凄く尊敬します。

自分はタイトルを取り始めてまだ数年ですし、とにかく棋士として完成しているとは全然思いません。まだまだ弱いと思います。ですからそういう尊敬すべき方々を目指して、とにかくやれるところまでやってみたいという気持ちがいまは非常に強いですね。

image by: 首相官邸

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