北朝鮮からの要請を受け、「米朝首脳会談」の開催をほぼ独断で決めたトランプ大統領。この行動に対し、日本人の一部から「日本に相談がないのはおかしい!」「日本はまたないがしろにされた!」との声も。しかし無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係アナリストの北野幸伯さんは、「安倍総理、見事!」と大絶賛しています。その理由とは…?
安倍総理は、「米朝首脳会談」を【熱狂的】に支持する?
近い将来予定されている、トランプさんと金正恩の首脳会談。「対話派のボス」習近平は、大いに歓迎しているようです。
習氏、トランプ氏を「称賛」…早期の対話促す
読売新聞 3/10(土)20:11配信
【北京=東慶一郎】中国中央テレビは9日夜、習近平(シージンピン)国家主席とトランプ米大統領が電話会談し、米朝首脳会談に向けて動き出した朝鮮半島情勢について意見交換したと報じた。トランプ氏は「北朝鮮が前向きな態度を示したことで、ハイレベル対話を行えるようになったのはいいことだ」と述べ、最終的には対話による問題解決を目指す考えを伝えた。習氏は「大統領の前向きな意思を称賛する」とした上で、早期に対話を始めるよう促した。
習は、なぜ米朝首脳会談を喜んでいるのでしょうか?
中国の立場は、
- 核の寡占体制(=NPT体制)を守るため、北朝鮮の非核化に賛成
- 中国の「緩衝国家」北朝鮮を守るため、戦争に反対
です。トランプと金が交渉し、
- 北朝鮮の非核化
- 北の体制保証
が実現すれば、中国にとって、まことに都合のいい状況になります。3月11日AFP=時事によると、トランプさんは、習に激励されたことを、大変喜んでいたようです。
5月末までに金正恩氏と会うという提案を受け入れたトランプ大統領の決断は驚きをもって受け入れられた。9日にアジア各国の指導者らと電話会談したトランプ大統領は10日朝、ツイッター(Twitter)に中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は「米国が(北朝鮮の核の)問題を不吉な別の選択肢によるのではなく外交的に解決しようとしていることを高く評価している。中国は助けてくれている!」と書き込んだ。
習近平は、アメリカが戦争ではなく、対話による解決を目指していることを高く評価した。それで、トランプさんは、「中国は助けてくれている!」と習を褒めました。
中国は、一方で北朝鮮の体制を支えながら、もう一方でトランプを支持し、結果的に、習はトランプに称賛されている。最近習が「終身国家主席」への道を開いたこと、完全スルー状態です。
安倍総理は、トランプの決断を「熱狂的」に支持する
トランプさん、もう一人の人物に言及しています。そう、わが国の安倍総理。
10日の別のツイートでトランプ大統領は、安倍晋三(Shinzo Abe)首相は米朝首脳会談に「とても熱狂的」だったと述べた。
(同上)
トランプさんは、安倍総理のリアクションについて、「とても熱狂的に喜んでいる」と認識したようです。安倍総理、見事です。
夫婦が共同で何かのプロジェクトに取り組んできたとしましょう。ところがある日、夫が妻に相談せず、自分一人で重大な決断をした。妻は、「なんで私に相談せず、勝手に決めたのよ!」と拗ねることもできます。
今回の件について、日本でも、「頭越し」「蚊帳の外」などと拗ねている人がいます。その時夫は、「いい決断をしたのに、何で怒ってるんだ」と考えるでしょう? 夫婦仲は、険悪になります。賢い妻なら、こう言います。
「あなたは、なんて賢明な決断をしたのでしょう!これは、世界を変える歴史的な出来事よ!」
そして、ニッコリ微笑めば、夫は「なんといい妻だろう!」と神さまに感謝することでしょう。「日本はアメリカの妻か!」と憤る人がいれば、別に日本は夫でアメリカは妻でもいいのです。あるいは「友達」でもいいのです。要は、他の人の決断を喜び、支持すれば、その人と近くなる。心小さく、「どうせうまくいくはずがない」といったり、「俺に相談なしで決めやがって!」などと憤れば、その人と遠くなる。
私たちは、「日本に沖縄の領有権はない!」と公言している中国に勝つために、アメリカと仲良くしなければならない。だから、「トランプさんすごい!」「トランプさん偉い!」でいいのです。
で、米朝首脳会談は、成功するのでしょうか? そんなことは、誰にもわかりません。しかし、金正恩が「非核化の意志」を示したのですから、交渉、対話を開始するのは当然です。
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