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なぜトランプは、韓国から米軍を撤退させたがっているのか

かつては「世界の警察」を自負し強力な軍事力で世界に睨みを利かせていたアメリカですが、トランプ大統領となってからどうも様子に変化が見られ始めたようです。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、トランプ氏が朝鮮半島や中東から米軍を撤退させたがっているという事実とその理由を紹介するとともに、日本が自己防衛力を強化するために取るべき政策を記しています。

トランプは、在韓米軍を削減したい

米国が画策する『北朝鮮の非核化』は、カダフィー大佐とそっくり」では、アメリカが北朝鮮核問題で、「リビア方式」を検討しているという話でした。

「リビア方式」とは、「核兵器核開発放棄」「制裁解除」。「リビア方式」でうまくいけば、日本はうれしいですが。しかし、03年に核開発を放棄したリビアのカダフィさんは、11年に殺されています。はたして、金正恩はリビア方式に同意するのでしょうか?

今日も朝鮮半島がらみの話。トランプさんは、「在韓米軍を削減したい」そうです。

トランプ氏、日米会談で「在韓米軍削減」に言及

読売新聞 5/5(土)6:39配信

 

トランプ米大統領が安倍首相と4月に会談した際、在韓米軍の削減や撤退の可能性に言及していたことが分かった。

複数の日米関係筋が明らかにした。それによると、米南部フロリダ州パームビーチで同月17、18日(米時間)に行われた日米首脳会談で、トランプ氏は在韓米軍を削減したり撤退したりした場合の影響について、首相に意見を求めた。
(同上)

で、安倍総理は、なんと答えたのでしょうか?

首相は東アジアの軍事バランスを崩すことへの懸念を示し、反対する意向を伝えたという。
(同上)

日本政府は、在韓米軍の大幅削減や撤退は、朝鮮半島有事の際に米軍の対処力が弱まるとみて警戒している。首相はその場でトランプ氏に対し、こうした立場を説明した。
(同上)

トランプさんは、在韓米軍を削減、できれば撤退させたい。これ、別に新しい話ではありません。大統領選挙戦中からいっていました。韓国だけでなく、日本についてもいっていました。

「もっと金を出さなければ、日本から在日米軍を撤退させる!」

ちなみにトランプは、シリアについても米軍を撤退させる!」と発言しています。なぜ、トランプは、世界中から米軍を撤退させたいのでしょうか?

目に見える利益をもたらさない海外の米軍

理由は、彼が実業家だからでしょう。実業家は、その活動が「儲かるか? 儲からないか?」で判断します。

米軍が韓国にいることで、アメリカは、儲かっているでしょうか? 儲かっていないでしょう。米軍が日本にいることで、アメリカは、儲かっているでしょうか? 儲かっていないでしょう。

「儲からない活動はやめよう。だから米軍を撤退させよう」

実にシンプルな考え方です。しかし、実に浅い考えともいえます。なぜ?

実業家トランプは、アメリカの覇権を弱体化させる

トランプさんは、アメリカ国を一企業のように考えている。しかし、この考えかたは、事実としてアメリカの覇権を弱体化させます。

たとえば、シリアのことを考えてみましょう。この国では2011年から内戦がつづいている。ロシア、イランは、アサド現政権を支持。アメリカ、欧州、サウジ、トルコなどは、反アサド派を支援しています。

ところが、アメリカは、本気でアサド打倒に取り組まなかった。なぜ? オバマさんが、中東への関心を失ったから。なぜ? シェール革命で、アメリカは、いまや

になった。

アメリカが中東に関心があったのは、主に「石油あるから」でした。ところが、シェール革命が起こり、いまや自国にたっぷり石油、ガスがある。それで、オバマは「もう中東はいいや」となった。そして、オバマ時代の特に二期目、アメリカとサウジイスラエル関係がひどく悪化したのです。

アメリカ実質不在の隙にロシアは攻勢を強めた。アサドはすでに、シリアのほぼ全土を掌握するまでになっている(反アサド、ISの支配地域は、ごくわずか。第2勢力は、米軍が支援をつづけるクルド)。

この例でわかることはなんでしょうか?

「どこかの地域に空白が生まれると、別の大国が入ってくる

これがシリアの教訓です。で、別の「大国」とは、現状中国ロシアのことなのです。

たとえば、ドゥテルテさんはアメリカとの関係を悪化させた。中国は安心してスカボロー礁を奪いました。ドゥテルテさん、最近は「フィリピンを中国の一つの省にすることもできる」などと発言しているようです。

「フィリピンを中国の省の一つに」、ドゥテルテ比大統領がジョーク―米華字メディア

ジョークにしても、かなり「売国的」発言です。

では、在韓米軍が撤退すれば、韓国はどうなるのでしょう? もちろん、実質中国に支配される国になるでしょう。

トランプさんは、中東から、韓国から、「米軍を撤退させる」といっている。そうなると、アメリカが去った空白を、中国、ロシアが埋めることになりますアメリカの世界的影響力、覇権は、当然弱体化します。

なぜトランプの考えは、速やかに実現しないのか?

トランプは、「シリアから撤退したい」といっている。「在韓米軍を減らしたい」といっている。彼は、間違いなく、こう考えています。大統領選挙戦中から、一貫している。

では、なぜ、米軍はシリアから撤退しないのでしょうか? なぜ大統領の願いは、速やかに実現されないのでしょうか? これは、国務省や国防総省諜報機関などが反対しているからでしょう。大統領でも、好き勝手にはできないのですね。

しかし、アメリカのパワーは年々衰えています。10年後、20年後、米軍がアジアにいる保証はありません。日本は、トランプさんに、「アメリカの負担を、できるだけわが国が肩代わりしましょう」といい、抵抗なくちゃっかり自主防衛力を強化してしまいましょう。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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