いま、マンション管理会社にとって管理員や現場清掃員の人手不足は深刻な問題で、解消するためにAI(人工知能)や外国人労働者の受け入れも検討しているといいます。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では、著者でマンション管理士の廣田信子さんが、なぜマンション業界は深刻な人手不足に陥ったのか、その理由を解説しています。
深刻な人手不足がAI、外国人労働者の導入加速へ
こんにちは! 廣田信子です。
マンション管理業界の現場従業員不足は深刻です。管理委託契約の更新に当たり、管理会社から、仕様の変更、値上げの申し入れを受けたマンションも少なくないことと思います。ほんとうに、そういう状況なのかと質問を受けます。
管理会社の団体である「マンション管理業協会」は、「現場従業員の雇用の実態に関する調査結果報告」を発表しました。会員である管理会社363社に対して行ったアンケート調査です。回答した管理会社の受託管理組合は73,632組合ですから、ほぼ全体の傾向を現していると言えます。
それによると、管理員や現場清掃員の不足はここ1年で特に顕著で、過半数の管理会社が不足と答えています。現場従業員の採用が難しくなっている理由としては、
- 給与や時間単価が低いため
- 就職売り手市場であるため
- 60歳定年の影響で、同年代の人材確保が難しくなっている
があがっています。給与水準を上げないと、他業種に人が流れてしまう現状は事実です。そして、企業の定年延長で、定年退職者という一番の人材供給源が縮小し、その少ない人材を他業種と奪い合っている状況があります。業務内容や待遇面で決して恵まれているとは言えないマンションの現場従業員という仕事は、競争に勝ち抜くのが難しくなっています。
採用が特に難しくなっている地域等は、
- 交通利便性が悪い地域
- 高級住宅地
- 可燃ごみ収集が夜間の場所
があがっています。具体的には、首都圏、近畿圏の都心部地方、中核都市の郊外部、リゾートマンションがある地域が採用しにくいと挙げられています。現場作業員の方にとっては、通勤時間がかからないというのが、一番のポイントになりますから、マンションの近所で人を確保しにくい場所があがっているのはうなずけます。
この状況に対する対応としては、
- 募集媒体・回数を増やしている
- 給与や時給単価の見直し
- 定年・契約期間の延長
が多数あがっています。しかし、6割以上の管理会社が、その効果は実感できないと回答しています。この厳しい状況は、管理組合にもぜひ認識しておいて頂きたと思います。
マンション管理業協会は、この状況を打開するため、現場におけるAIの活用方法を検討すると共に、外国人労働者を雇用することも含めた人材確保策を打ち出していくと思います。直面した危機は、殻を打ち破る契機にもなります。
ここでも何度も取り上げたように、AI管理員、外国人清掃員が、マンションの現場で当たり前の存在になる日も近いと、改めて感じます。
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