MAG2 NEWS MENU

賞味期限切れと言われる安倍総理が2025年まで続投すべき深い理由

自民党総裁選挙が近づいていますが、今のところ安倍総理と石破茂元幹事長の一騎打ちと見られています。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、「歴史の80年周期論を用いると、日本で政情混乱が予想される2025年頃を総括できる総理を今から選出しておくのもひとつの手である」と主張した上で、現在、米中露韓全ての国と良好関係を築くことに成功している外交手腕の高い安部総理が適任ではないか、との持論を展開しています。

なぜ安倍内閣は、【2025年】までつづくべきなのか

来月、自民党総裁選があるのですね。皆さんご存知のように、私は、安倍総理を支持しています。私は、

などに大昔から反対している。それでも、総理は、中国の反日統一共同戦線戦略を無力化したので、支持しています。この件、すでに100万回書いていますので、詳述しません。超詳細を知りたい方は、こちらをご一読ください。

●『中国に勝つ 日本の大戦略 プーチン流現実主義が日本を救う』 北野幸伯・著/扶桑社

さて、読者さんの中には、こんなことをいう人もいます。

「安倍総理が反日統一共同戦線戦略を無力化したことは、高く評価されるべきでしょう。しかし、もはや『賞味期限切れ』なのではないですか?」

そして、私も反対している、「消費税再引き上げ」「3K外国人労働者大量受け入れ」「残業代ゼロ」などを根拠にあげます。とても理解できます。これ、どこにフォーカスするかで変わってきますね。

理解できるのですが、私は安倍総理の任期は、【あと7年】と考えています。つまり、【2025年まで】です。

「え”~~~~~なんぼなんでも長すぎでしょう???」

理由を説明します。

80年周期説

皆さん、「世界史は80年ごとに繰り返すという説をご存知ですか? 有名なのは、『フォース・ターニング』という本ですね。これ、トランプさんの主席戦略官だったバノンさんのバイブルだそうです。再臨の諸葛孔明・奥山真司先生の訳で出ていますので、興味がある方は、ご一読ください。

ところで、世界の歴史は、ホントに80年ごとに繰り返すのでしょうか??? わかりません。しかし、08年に100年に1度の大不況」が起こった時、多くの人が、1929年にはじまった世界恐慌」を思いだしました。正確にいうと、二つ事件の差は79年ですが。オバマさんも、はっきりと「今回の経済危機は、1929年の危機に似ている」と認識していた。それで当初は、「グリーン・ニューディール」などといい、ルーズベルトを真似た政策を掲げていたのです。

ところで、1929年の危機と08年の危機の違いはなんでしょうか? 29年に大統領だったフーバーさんと、09年に大統領になったオバマさんの違いです。オバマさんはフーバーさんの間違いを知っていた。それで、即座に大規模な金融緩和を行い、200兆円規模の財政赤字を出しながら、アメリカ金融機関、大企業を救済していったのです。オバマさんのおかげで、アメリカ経済は短期間で立ち直り、この国は、いまもその恩恵を受けています。

歴史は80年周期で繰り返すかもしれないし繰り返さないかもしれない。しかし、確かに、「あれ? 過去にも同じような事件があったぞ」と思えるできごとはある。その時、私たちは、「過去の失敗を繰り返さないという選択をすることができる。オバマさんが、そうしたように。

2010年代と1930年代

「80年周期説」でみると、2010年代は、「1930年代を繰り返す」ということになります。1930年代と2010年代、似ているのでしょうか?

たとえば2010年、「尖閣中国漁船衝突事件」が起こり、日中関係がひどく悪化した。2012年の尖閣国有化で、日中関係は戦後最悪」になりました。その約80年前、

こう見ると、「日中関係がとても悪い」という点は似ています。しかし、日本は、30年代ほど孤立していません。

1937年日中戦争がはじまりました。日本の敵は、もちろん中国ですが。その中国は、なんとアメリカ、イギリス、ソ連から支援をうけていた。つまり、実質、「日本 対 米英ソ中」との戦争です。こんなもん、勝てるはずがありません。この状況を振り返れば、日本がどれだけ孤立していたかがわかります。

その80年後、日本は、アメリカと良好な関係にある。イギリスとは「準同盟」の関係にある。ロシアとは、まあまあいい関係にある。中国との関係も、改善されてきている。80年前とははっきり違う道を進んでいることがわかります。

これ、「たまたまそうなった」のではありません安倍総理が、【孤立しないようにした】のです。思いだしてください。鳩山、菅、野田時代を。

民主党政権はたった3年で日米日中関係を破壊しました。さらに、2012年の状況をみると

そう、民主党政権は日米日中日ロ日韓関係をボロボロにした。その後、安倍総理が忍耐強く修復していったのです。これは、簡単なことでしょうか? もちろん簡単ではありません。

たとえば、安倍さんは、アメリカに逆らって日ロ関係を改善させた。それに、大局を理解できない人から、「北方領土問題で全然進展がないじゃないか!」と叩かれる。日韓関係を改善しようとすれば、「慰安婦合意なんて意味がない! どうせだまされるだけだ!」と叩かれる。日中関係を改善しようとすれば、また叩かれる。

いつの時代も、「強気でガンガン国益を追求しなければダメだ!」という人たちはいます。そんな人たちが80年前、「満州国は日本の生命線』。世界が反対しても譲れない!」などといい、米英ソ中を敵にまわし、勝てるはずのない戦争にばく進していったのです。

安倍総理は現在、北朝鮮以外ほぼすべての国々と良好な関係を築いた。それで、激動の世界の中で、日本を比較的安全な位置に導いた。だから、私は、総理を支持しているのです。

総理がコロコロ変わった30年~40年代の日本

さて、日本といえば、「毎年総理が代わる国」して知られていました。安倍総理は異常な長さですね。ところで激動の1930年代、日本の総理はどうだったのでしょうか?

どうですか、これ? 17年間で17人の総理です(近衛は2回やったが)。よく「日本には大戦略がなかった」といいます。毎年総理が代わって、「大戦略があるわけないよな…」と思いませんか?

一方、安倍総理は、現在6年目。おかげさまで日本、1930年代とは、ずいぶん違った道を進んでいます。

1930年代並に複雑な世界情勢

オバマさんは、「世界恐慌の教訓を活かして、別の道を進んだ」という話をしました。そうなのですが、今の世界は1930年代にも匹敵する不穏な状況になっています。何が起こっているかみてみましょう。

相変わらず、不安定な地域は世界に三つあります。一つは欧州。2014年、ロシアは、クリミアを併合した。そして、ウクライナで内戦が勃発しました。これは、欧米が支援するポロシェンコ新政権と、ロシアが支援する東部親ロシア派(ルガンスク、ドネツク)の戦いです。少し落ち着いていますが、いつ再燃してもおかしくありません。

次は、中東です。2011年に始まったシリア内戦。これは、ロシア、イランが支援するアサドと、欧米が支援する「反アサド」の戦いです。アサドが優勢に戦いをすすめ、ほぼ全土を掌握するまでになっています。トランプは、イスラエルに敵対的なイランとの関係を悪化させています。アメリカとイランが戦争になる可能性もある。

最後、アジア。南シナ海も問題ですが、やはり最大の問題は、北朝鮮でしょう。これは、緩衝国家北朝鮮を守りたい中国、ロシアと、アメリカの戦い。

そして、ウクライナ、シリア、イラン、北朝鮮問題の背後にあるのは、米ロ対立米中対立です。つまり、世界は、「米中ロ 三国志時代」なのです。

トランプは、「プーチンと和解して、中国を叩きたい」と考えている。しかし、全民主党、共和党反ロシア派、国務省官僚、国防総省、CIA、FBI、反トランプ・反ロシアマスコミは、「プーチンこそ最大の敵」と見ていて、なかなか和解できない。また、トランプは、欧州を叩くので、欧州は中ロの方に接近しています。

というわけで、現状は1930年代並に状況がコロコロ変わる。そういえば、平沼総理は1939年、「欧州の天地は複雑怪奇!」と迷言を残して辞任しました。つまり、日本の総理は、「世界で何が起こっているか、複雑でようわからん」と公言していた。そんな人が総理であれば、もちろん日本は負けます。

ところで、今の日本の政治家で、世界情勢が理解できている人はいるのでしょうか? 残念ながら、安倍総理以外にいないだろうと思います。

なぜ安倍内閣は、【2025年】までつづくべきなのか?

さて、世界はこれからどうなっていくのでしょうか? ディーテールは、もちろんわかりません。しかし、第2次大戦が終わってから80年後にあたる2025年、世界は大きく変わっていることでしょう。

アメリカは、アグレッシブなトランプの外交が没落を加速させます。中国は成長期から成熟期の移行に伴う混乱が迫っています。ロシアは欧米の制裁に苦しめられ、成長軌道が描けないでいます。横暴なトランプに苦しむ欧州は、アメリカと中ロの間で揺れています。

現在混乱期はあと7年ぐらいつづき、その後は新しい秩序が見えてくるでしょう。日本はこの困難な時期を、巧みに乗り切り、新しい秩序、よりよい秩序つくりを主導する側に入る必要がある。その時、日本の戦後は終わります。

安倍総理には、是非あと7年がんばっていただき、日本の戦後を終わらせていただきたいと思います。

image by: 安倍晋三 - Home | Facebook

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け