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菅官房長官「携帯は4割値下げの余地あり」発言は何が衝撃か?

菅官房長官は8月21日、札幌市内で行われた講演の中で、日本の携帯電話の利用料金について事業者間の競争が働いていないとして、「今よりも4割程度下げる余地がある」と発言したことが、携帯キャリアおよび周辺業界で波紋を呼んでいます。この発言を受けて、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の中で、4割値下げは無謀としながらも、その落とし所として「通信料金と端末代金の分離」という解決方法をとってくるだろうと予測しています。

菅官房長官「携帯電話料金は4割値下げの余地あり」の衝撃━━端末代金と通信料の分離プランが加速するか

先週、驚いたのが菅官房長官の発言だ。

携帯電話料金は4割値下げの余地がある

との発言により、業界に激震が走った。

当然、キャリアは民間企業であり、上場している株式会社だ。政府が通信料金に指図できるわけがなく、4割も下げれば当然、株主だって黙っていない。

2007年頃に行われた総務省「モバイルビジネス研究会」は、当時の総務大臣が菅さんであり、担当していたのは当時、料金サービス課長だった谷脇康彦氏であった。先日の人事異動で谷脇氏が総合通信基盤局長になった矢先での「4割値下げ」発言である。

4割値下げは無謀とも言える話だが、これから総務省や公正取引委員会との議論が進む中で、1~2割程度の値下げという現実的な落とし所で政府とキャリアが手を打つということは充分に考えられそうだ。

そこで、最も有り得そうな解決方法と考えられるのが「通信料金と端末代金の分離」だ。

すでに、KDDIが「ピタットプラン」、NTTドコモが「docomo with」を提供しているが、ソフトバンクも分離プランを準備中との報道がある。

端末割引をしない代わりに、通信料金を下げる、あるいは使用状況にあった請求にすることで、見た目上は値下げしたように見えることだろう。

すでに提供されている分離プランをさらに強化する、もしくは対象機種を拡大することで、政府の意向に応えることも不可能ではない。

タイミングよく、NTTドコモがdocomo withでiPhone 6sの取り扱いを始めた。これが試金石となり、対象機種の拡大ということも考えられるだろう。

高額スマホを端末割引無しで売るには、4年の期間拘束などを組み合わせる必要が出てくる。しかし、ここも公正取引委員会の厳しい目が待っている。

やはり、iPhoneであれば、キャリアではなく、アップルが日本でも「アップグレードプログラム」を導入し、通信料金と端末代金を分離したかたちで提供すれば、何ら文句を言われないかたちになるだろう。

もちろん、キャリアは端末割引がないのだから、安価な料金プランを適用できるはずだ。

総務省としては、端末と料金のセット割引を問題視してきた節がある。

菅官房長官の発言に対して、少しでも忖度するならば、端末割引を辞める代わりに基本料金を値下げするというやり方が、最もキャリアの出血が少なく済む最善な方法ではないだろうか。

菅官房長官の発言によって、結果として、日本でも端末と料金の分離が加速していくことになりそうだ。

docomo withにiPhone 6sが仲間入りで大ヒットの予感━━アップルとの契約条件「iPhone Agreement」改定のおかげか

今週、最も驚かされたのが、NTTドコモの「docomo with」にiPhone 6sが加わったというニュースだ。

そもそも、docomo withが登場した頃から「iPhoneは対応しないのか」と吉澤和弘社長は囲みで突っ込まれていたが、その度に吉澤社長は「iPhoneは高価格帯の商品なので難しい。docomo withは4万円以下の端末を想定している」と回答していた。

そんななか、飛び込んできたdocomo withにiPhone 6sが仲間入りというニュース。資料を見てみたら、いつの間にかiPhone 6sが3万9600円(税抜)となっており、4万円を切る値段に値下げされていたのだ。

iPhone 6sは3年前の機種となるが、おそらく海外では継続的に生産されている可能性がかなり高そうだ。やはりiPhone Xなどのフラグシップモデルは海外市場から見ればかなり高額な部類に入る。そんななか、新興国などでiPhoneを手に入れるとなると、iPhone 6sあたりがちょうどいいのではないか。実際、日本でもUQモバイルやワイモバイルではiPhone 6sは現行機種となっている。

9月にリリースとなるiOS12はiPhone 6sもサポートするため、いまから、iPhone 6sを購入してもさほど困ることはないだろう。むしろ、iOS12が高速化が図られているということで、かなり快適にiPhone 6sを使えることも予想される。

また、これまで「docomo with」は専用端末がラインナップされていたが、iPhone 6sに関しては型落ちの製品が仲間入りしたことになる。来年にはiPhone 7がdocomo withにスライドしてくるということも予想されそうだ。

今回、NTTドコモがdocomo withでiPhone 6sを取り扱うことで爆発的なヒットになりそうな気がしてならない。ひょっとすると、すでにサブブランドなどで取り扱っているソフトバンクやKDDIも再び、iPhone 6sを扱うようになる可能性もありそうだ。

公正取引委員会が、キャリアとアップルとの契約条件である「iPhone Agreement」の存在を暴いたが、これによって、キャリアはiPhoneに端末割引を適用してなくてもよいような条件に書き換えられた。まさか、この条件変更によって、こんなにも早く、iPhoneがdocomo withから登場するとは思わなかった。

本来、公正取引委員会は、日本の市場で、iPhoneが優遇されている点にメスを入れたかったはずではないのか。しかし、公取委の取り組みの結果として、iPhoneがdocomo withに登場し、iPhoneのシェアが更に上る可能性が見えてきた。結局、公正取引委員会が頑張ったことで、アップルが得をするというなんとも皮肉な結果となったようだ。

image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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