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とうとう日本にも。トランプが突きつけた貿易戦争を避ける手段

中国、欧州相手に貿易戦争を仕掛けてきたトランプ大統領ですが、ついに日本との貿易協議に関しても強行姿勢を示し始めました。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、トランプ大統領の性格の知っておくべき3つの特徴をあげた上で、日本政府はその特徴に即した対応策を取るべきだと論じでいます。

トランプ、シンゾーとの緊密な関係は「終わる」

皆さんご存知のように、私の「トランプ観」は複雑です。まず、「アメリカ・ファースト」というスローガン自体がまずい。これ、「国益を最優先するのは当たり前」という意見もあるでしょう。

それなら、なぜどの企業も、「わが社ファースト! わが社の目的は、わが社の利益をマックスにすることです!」といわないのでしょうか? もしどこかの会社がこう宣言すれば、嫌われて誰もその会社の製品を買わなくなるからです。

誰かが、「私の哲学は、『自分ファースト!』です。まずは、自分の利益を最優先させます!」と宣言したらどうでしょうか? この人に友達はいなくなるでしょう

「この世界に、自己中心の人、自己中心企業のいる場所はない」

こんなことは、誰にもわかっていることですが、話が国家になると、「別の原則で動いている」とカン違いしてしまうのです。

というわけで、私は大昔から、「アメリカ・ファースト」というスローガンは「ヤバい!」と感じていました。

実際、彼が大統領になるよりずっと前、2016年4月に、「トランプ大統領誕生なら米国は覇権国家から転落する」という記事を書いています。

しかし、トランプに対する期待もありました。それは、彼が選挙戦中、一貫して「親ロシア」「反中国」だったこと。

皆さんご存知のように、私は15年ぐらい前から、「日本最大の脅威は中国である。しかし、日本アメリカロシアが組めば中国を封じこめることができる」と書いてきました。リアリスト神・ミアシャイマーさんも、世界最強の戦略家ルトワックさんも、同じことを主張しています。

ところが、現実はなかなか厳しい。主な理由は、「米ロ関係がとても悪い」こと。ところが、「親ロシア」「反中国」のトランプが大統領になった。安倍総理は、誰もよりも速くトランプと会い、良好な関係を築いた。それで、「いよいよ日米ロ同盟にむかうのか? トランプにはそういう戦略があるのか?」とかなり期待しました。

ところが、「トランプは戦略家」というのは、どうも違うようです。戦略家であれば、敵ナンバーワン中国に対抗するために、その他の国々とは和解していくはずです。しかし、トランプは、中国と貿易戦争をはじめただけでなく、欧州とも開始した。それで、欧州は中国ロシアに接近し、「一緒にトランプに対抗していこう!」というムードになっている。

本来であれば、

という構図にもできるはずなのです。

トランプが、ついに日本を標的に

「トランプは戦略家」と信じる人は、「トランプは、安倍、プーチンと組んで、悪(グローバリスト集団)と戦っている」といいます。トランプがナショナリストであることは間違いありません。しかし、「戦略的ナショナリスト」なのかは、大いに疑問です。その証拠に、トランプさん、ついに日本に目をつけた

<米大統領>日本に交渉入り圧力「取引しないと大問題に」

毎日新聞 9/8(土)11:18配信

 

【ワシントン清水憲司】トランプ米大統領は7日、対日貿易協議について「日本は米国とディール(取引)しなければ、大問題になると理解している」と記者団に述べた。「日本との交渉を始める。事実、日本が呼びかけてきている」ともし、2国間交渉入りに強い自信を示した。また、「日本は(オバマ前政権時には)『報復はない』と感じていたが、(今は)正反対だ」と指摘、貿易赤字削減へ強硬措置も辞さない姿勢を示唆した。

アメリカが、「対日制裁」…。トランプさんだったら、やるでしょう。

日本は9月下旬のFFRや日米首脳会談で自動車・同部品の輸入制限の発動回避を取り付けたい考え。だが、トランプ氏は6日、安倍晋三首相との親密な関係についても「(通商問題で)どのぐらい(対価を)払わなければならないかを伝えた途端、(関係は)終わるだろう」と語り、日本を貿易問題の「次の標的」にする姿勢を強めている。
(同上)

トランプさん、安倍総理との緊密な関係は、「(通商問題で)どのぐらい(対価を)払わなければならないかを伝えた途端、(関係は)終わるだろう」だそうです。

どうすればいいのか?

日本は、どうすればいいのでしょうか? 「日本」というか、「日本政府」「安倍内閣」ですね。

まず、知っておくべきなのは、「トランプさんの性質」です。トランプさんには、「ツイッターでは厳しいことをいっているが、会うと優しくなる」という特徴がある。安倍さんの時も、習近平の時も、金正恩の時もそうでした。例外はドイツのメルケルさんですね。トランプは、メルケルさんとは、あわないようです。

二番目の特徴は、「彼が『陽』の人だ」ということ。それで、人の話をよく聞く、「陰タイプの人を好むのです。ですから安倍総理は、トランプさんの話をじっくり聞き、「日本は、アメリカの貿易赤字問題を真剣に解決したいのです!」と伝えることが必要です。

三番目、トランプさんをだませる期限は1年ぐらいがマックスだということ。

トランプさんは選挙戦中、大いに中国を非難していました。ところが大統領に就任し、習近平に会って、彼のことが「大好き」になってしまった。それで、しばらく米中関係は穏やかでした。しかし、今年、結局米中貿易戦争がはじまりました。つまり、トランプさんは、だまされているようで、相手の真剣度を見極めている。「見極め期間、「1年ぐらい」でしょう。

今、トランプは、「金正恩の真剣度」を測っています。1年後進展がなければまた米北関係は悪化することでしょう。ですから、安倍総理も、「その場しのぎでうまく乗り切ろうと考えない方がいい

これらの特徴を踏まえて、日本がやることは二つあります。一つは、アメリカからの要求で、呑めるところは呑むこと。二つ目は、日本側から、「アメリカの対日貿易赤字を減らす提案」をすること。

日本は、いらないものを買うのではなく、いるものを買う必要がある。一つは、「攻撃型の武器」です。もう一つは、「シェールガス」「シェールオイル」です。これだけで、アメリカの対日貿易赤字7兆5,000億円を消せるわけではありません。それでも、日本には必要なものですし、トランプさんの怒りを鎮静化させることができるかもしれません。いずれにしても、「厳しい交渉」になりそうです。

強固な日米関係は、絶対必要

反米の方は、「そこまでアメリカに気を使わなければいけないのか? 属国根性だ!」と批判したくなるでしょう。私も、書きながらうれしい気持ちにはなりません。しかし、アメリカとの良好な関係は、「日本には、沖縄の領有権はない!!!!!!!」と宣言している中国に対抗するために必要なのです。完全証拠はこちら。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

アメリカの理不尽な要求に対し、中国のように、「日本も報復制裁を科せ!」という考えもあるでしょう。日米貿易戦争がエスカレートすれば喜ぶのは中国です。そして、尖閣は再来年には中国のものになっているでしょう。

image by: doamama / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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