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元CIA工作員が分析。中国対策で「安倍プーチン」急接近の皮算用

日ロ両国が北方領土問題で歩み寄りを模索している背景には、やはり台頭する中国への対抗手段という側面も大きいようです。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、元CIA工作員グレン・カール氏の見解を引用しつつ、「アジアの地政学的変化」がプーチン大統領の「北方領土政治的利用手段」に与えた影響は大きいと分析し、2島返還実現の可能性を探っています

元CIA工作員は北方領土問題をどう見る???

安倍総理は、「日ソ共同宣言」をベースにロシアと交渉していくことを決めた。つまり、「平和条約締結 → 二島返還」。これについて、ニューズウィーク11月22日に、元CIA工作員グレン・カールさんの見解がでていました。ご紹介します。

北方領土「2島返還」が動き始めた理由

Newsweek 11/22(木)16:49配信

 

安倍とプーチンの大胆な政治決断の背景には中国の台頭という東アジアの地政学的変化がある

 

少し皮肉めいた話だ。ドナルド・トランプ米大統領がもたらした破壊と混乱。習近平(シー・チンピン)国家主席の下でアジアの覇権を目指す中国の歴史的台頭。そして、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と日本の安倍晋三首相の強い決意を秘めた外交手腕。どうやら、この3つの組み合わせがアジアの地政学的状況に歴史的変化をもたらすことになりそうだ。

グレン・カールさんは、

アジアの地政学的状況に、「歴史的変化」をもたらすと予想しています。

そして安倍は、いわゆる「北方領土」4島のうち少なくとも2島を取り戻し、残る2島へのアクセスを大幅に強化することになる。安倍の決断と自らチャンスをつくり出し、それをつかむ能力によって、日本は第二次大戦で味わった恥辱のかなりの部分をすすぐことが可能になるだろう。ロシアとの北方領土交渉で必ずや突破口を開くという安倍の決意は確かに目を見張るものがある。
(同上)

グレン・カールさん、ずいぶん安倍総理を高く評価しています。日本は2島を取り戻し、残り2島へのアクセスを大幅に強化するそうです。安倍総理の決意のおかげで、日本は第2次大戦の恥辱から解放される?

しかし、この交渉で少なくとも一定の成果が見えてきた理由は、アジア太平洋地域の地政学的環境が変化したからだ。
(同上)

安倍総理の決意も大きな要因ですが、「地政学的環境の変化も理由」だそうです。なんでしょうか?

中国の国力増大と、強引とも思える南シナ海への進出。唯一の超大国の名を汚し続けるアメリカの行動と、トランプの孤立主義、日本の同盟国としての信頼性の欠如。ロシアと日本は以上の要因から、台頭する中国への対抗手段として互いに手を組もうとした。
(同上)

グレン・カールさん、ずいぶんトランプさんに厳しいですね。「唯一の超大国の名を汚し続けるアメリカの行動」だそうです。そして、日本の同盟国として信頼される行動をとっていないと。

まとめると、

と。

「ディール」の中身

2島といえども、「戦争で奪った土地」です。プーチンが返還を決意するとすれば、どういう見返りが期待できるのでしょうか?

ロシアにとって、対日交渉には特別な意味がある。北方領土交渉がまとまれば、ほとんど無価値な島々(近海には好漁場や豊富な鉱物資源がありそうだが)と引き換えに、日本から1,000億円とも言われるロシア極東の経済開発援助と、国営エネルギー企業ガスプロムの液化天然ガス開発プロジェクトへの8億ユーロの融資を引き出せる可能性がある。
(同上)

ロシアが日本から得る(得たい)のは、

である。

日本はもちろん第二次大戦終結から70数年ぶりに島を取り戻せる。安倍は「金と領土の交換」の受け入れをロシアに促す追加の呼び水として、日本は取り戻した領土に米軍事基地を造らせないと約束したようだ。
(同上)

日本のメリットは、

そのために安倍総理は、「2島に米軍基地はつくらせない!」と約束した。

プーチンは変わったのか??

グレン・カールさんは、「プーチンは変わった」と見ています。

変わり始めたプーチン

 

島々の戦略的・地政学的役割を重視するロシアは、16年に最新鋭ミサイルシステムを北方領土に配備している。近年は10万人規模の軍事演習も行っている。プーチンとロシア政府は台頭する中国への対抗上、安倍が領土返還の見返りにちらつかせる経済的支援よりも島の軍事的価値を重視している──欧米の専門家はそう評価していた。しかしここにきて、プーチンの計算が変わり始めたようだ。

(同上)>

なぜ変わったのでしょうか???

しかしここにきて、プーチンの計算が変わり始めたようだ。もしかすると、日本側から提示される経済的メリットが大幅に積み増しされたのかもしれない。プーチンとしては、成長著しい経済と莫大な人口を擁する中国がロシア極東地域に隣接して対抗するためには、北方領土を軍事拠点として軍事力中心で中国を封じ込めるよりも、日本の莫大な投資を受け入れて極東地域の経済開発を加速させるほうが好ましいと、プーチンが考え始めた可能性がある。確かに、ロシアが東アジアでの地位を強化する上では、このアプローチのほうが有望に見える。それに、日本からの投資という目先の恩恵も得られる。北方領土の軍事拠点化にこだわれば、莫大なコストがかかる半面、経済的恩恵は得られない。期待されるメリットは、紛争が起きて初めて生じるものだ。
(同上)

プーチンは、北方領土を軍事拠点化して中国を封じ込めるより、日本から莫大な投資を入れて極東を経済発展させた方がいいと判断したと。

すべては中国ファクター

中国がアジアで国力と存在感を増し続け、自己主張を強めるとすれば、日本とロシアは2国間の関係を緊密化することが理にかなっている。ロシアにとっては、日本との約束を守るのが合理的な行動だ。
(同上)

中国が強くなっているのだから、日本とロシアが接近するのは合理的だと。そのとおりですね。そして、グレン・カールさんは、安倍ープーチンのディールをこう評価します。

評価すべき点は評価しよう。プーチンと安倍が政治手腕を発揮して大仕事を成し遂げる可能性は十分にある。
(同上)

安倍首相とプーチンが「大仕事を成し遂げる可能性は十分あるそうです。

この記事からわかること

この記事からわかることはなんでしょうか?元CIA工作員のグレン・カールさんは、

このことは、親トランプも反トランプも、「反中国」で見方が一つになっていることを示しています。

日米ロ同盟。これが成れば、日本は中国に完勝できます。昔からの読者さんはご存知でしょうが、RPEでは15年ぐらい同じ話をつづけてきました。いよいよ、実現に向かうのでしょうか??

また世界一の戦略家ルトワックさんの言葉を引用しておきましょう。

もちろん日本自身の決意とアメリカからの支持が最も重要な要素になるのだが、ロシアがそこに参加してくれるのかどうかという点も極めて重要であり、むしろそれが決定的なものになる可能性がある。
(『自滅する中国』)

安倍総理の決断に反対している人も、「大戦略的視点」で総理の行動を分析していただきたいと思います。あるいは、ただ反対するだけでなく、「4島一括返還を実現できる具体的方法」を提示してください。代案なしで反対することは、幼稚園児でもできるのですから。

image by: 安倍晋三 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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