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プーチンの危険な決断。ロシアが大規模ネット規制に踏み切る理由

2月12日、「国内のインターネット通信を国外サーバーから切り離す」という、現在の日本では考えられない事態も含んだ法案の採決を行なったロシア。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、ロシア動向を懸念する読者のメールを切り口とし、今、ネット規制強化対策がロシアで重要視されている理由について持論を展開しています。

北野がモスクワを離れた理由、その後

先日、シリコンバレー在住Aさまから、こんなメールをいただきました。

以前ご指摘のロシアのインターネット事情ですが、ますます険しくなってきたように見受けられます。アメリカ情報ピラミッドの情報で恐縮ですが、以下にようと、ロシア全体をインターネットから切り離す実験が計画されているようです。

 

Russia to disconnect from the internet as part of a planned test

 

取り急ぎ、お知らせのみにて失礼致します。

皆さんご存知のように、私は28年モスクワに住んでいました。モスクワは、なかなか快適でした。なんといっても28年住んで、一度も反日ロシア人にあったことがないのです。周りが「親日だらけ」というのは、すばらしいこと。その辺、中韓とロシアは違います。

しかし、去年の11月離れることにした。いろいろ理由はありますが、最大のものは、「インターネット規制で実害がではじめたこと」でした。

この記事も閲覧できない。いまロシアで起きている信じがたい現実

シリコンバレー在住のAさまは、このことを覚えておられ、「北野さんが離れた後も、プロセスは進行していますよ」と伝えてくださったのです。その後、日本の新聞にも出てきました。

ロシア下院、インターネット隔離法案を支持 「北朝鮮式」可能に

2/13(水)8:30配信

 

【AFP=時事】ロシア下院は12日、同国のインターネット通信を国外のサーバーから切り離すことを可能にする法案の1回目の採決を行い、賛成334、反対47で可決した。反対派は、これは検閲強化の取り組みだと批判。さらに、北朝鮮のような外部から隔離されたネットワークの構築につながる可能性があるとしている。

ところで、なぜロシア政府は、ネットを規制するのでしょうか?私の理解は、以下のようなものでした。

プーチンは、ロシアのメディア、特にテレビを支配しています。ロシアのテレビでプーチン批判を聞くことは、一切ありません。ところが、ネットは反プーチン派の天下。それで、ロシアでは、「テレビ中心の年配層は親プーチン」「ネット中心の若い層は反プーチン」というはっきりした傾向がみられる。

「テレビ中心の年配層」(親プーチン)は、毎年たくさん天国に旅立ちます。一方で、「ネット中心の若い層」(反プーチン)は、年々増えていく。クレムリンが、「ネットを支配しなければ政権は危うい」と考えるのは当然でした。

それで、私が未来を考えたとき、「規制がどんどん強まるのは当然だな」と見通しをもった。だから、モスクワを離れることにした。今回、「やはりそっちの方向にむかっている」ことが明らかになりました。

ロシア政府の説明

ところで、ロシア政府は、ネット規制の必要性について、別の説明をしています。

法案の目的は、米国がサイバー空間でロシアのネットワークを脅かす行動に出た場合に「ロシアのインターネット通信の長期的かつ安定的な機能を確保する防御機構」を設けること。法案は「インターネット通信の経路を確保・制御する」中核施設の創設を提案。また、「脅威に耐えるための技術的施策」の導入をインターネット接続業者(プロバイダー)に求めていくとしている。さらに法案は、ロシアのインターネットが国外から隔離された状態で機能できるかを確かめるため、定期的な「訓練」を行うことを規定している。
(同上)

要するにアメリカがロシアのネットを麻痺させたりサイバー攻撃したりといった事態に備えなければならないと。クリミア併合後、アメリカはロシアを世界の金融界から隔離する政策をとっています。ですから、ロシア政府からすると、「あり得るよね~」ということなのでしょう。

反対派の主張

一方、反対派はどんな主張なのでしょうか?

ロシアでは過去、世界的な交流サイト(SNS)に対する統制や、メッセージアプリ「テレグラム(Telegram)」の利用阻止を試みる措置が取られており、インターネットの自由を訴える活動家らは、今回の法案も検閲強化の試みだと指摘している。
(同上)

検閲強化の試み」。

これもその通りなのでしょう。たとえば、当局が「電話を盗聴する」「メールを読む」「SNSをのぞく」などの行為をする。これ、二つの意味があります。

まず、テロを防止できる。確かにその通りだと思います。テロリスト同士だって、今の時代、メールでやりとりしたり、スマホで話したり、SNSで交流したりしている。それを「こっそり」のぞけば、確かに「テロ計画」を実行前に阻止できるでしょう。一方で、当局は、「テロリスト」ではないただの「反政権的人」の動向も把握できるようになります。二面性があるということですね。

こういう情報を見ると、日本はまだまだ自由ですね。

「俺は、毎日安倍さんの悪口を書いているが、何も起こらない」

そういうのが、大事です。もちろん、「サイバー攻撃対策」「テロ対策」「スパイ対策」はしっかりやるべきですが。

image by: Eugeniya Trastandetskaya / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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