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岸田首相の「教育未来創造会議」、メディアの捉え方に大きな不安

岸田首相が「教育未来創造会議」を設置し、その意図と顔ぶれが紹介されました。多様性を重んじ、あらゆる人が「教育の機会」から排除されない「新しい学び」の枠組みの提示に期待を寄せながらも、「成長分野の人材育成に議論が集中してしまいそう」と不安を表明するのは、要支援者の学びの場「みんなの大学校」を運営する引地達也さんです。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』で引地さんは、「誰もが」という文言をあっさりと黙殺してしまうメディアの伝え方を不安の一因として上げていて、日本のメディアのリテラシーの欠如を浮き彫りにしています。

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教育の未来の創造に望む「誰もが」への深い議論

岸田文雄首相は今月、安倍晋三・菅義偉首相のもとで教育改革の諮問機関であった教育再生実行会議を廃止し、新たに「教育未来創造会議」を設置した。

12月3日の閣議決定では設置理由を「我が国の未来を担う人材を育成するためには、高等教育をはじめとする教育の在り方について、国としての方向性を明確にするとともに、誰もが生涯にわたって学び続け学び直しができるよう、教育と社会との接続の多様化・柔軟化を推進する必要がある」ため、と明記した。

メディアでは「社会人が学び直す『リカレント教育』やデジタルなど成長分野の人材育成策を検討する」と目的の焦点を絞っているが、学び続けることの意味を深く広く考えるきっかけとして、「誰もが」の目的を最後まで考え続け、何らかの形を提示する議論をしてほしいと思う。

この会議は岸田首相が議長を務め、末松信介文部科学相、萩生田光一経済産業相や後藤茂之厚生労働相などの関係閣僚が参画するから、教育行政のみならず、産業と社会保障を含めての議論が想定され、「誰もが」はインクルーシブかつダイバーシティの社会を目指す中での「新しい学び」の枠組みの提示も期待される。それは私のような障がい者や要支援者の学びを実践してきた立場からすれば希望でもある。

会議のメンバーには、元慶応義塾長の清家篤・元慶応義塾長、日立製作所の東原敏昭会長、安宅和人・ヤフーCSO(最高戦略責任者)、高橋祥子ジーンクエスト社長ら伝統的な産業界と新しい企業のスタイルのモデルとなっている面々で、新旧のバランスを感じさせるが、ここで心配なのは「誰もが」を推進する当事者に近い立場の方がいないことだ。どのように当事者の声を聞き、考えてくれるのだろうか。

会議は2022年夏までに提言をまとめ、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に反映させる予定とされるが、それゆえに人工知能(AI)やデータサイエンスなど成長分野の人材育成に議論が集中してしまいそうで、さらに社会人が大学などで学び直す「リカレント教育」の充実を議論する内容は産業寄りの印象もある。

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日経新聞では「リカレント教育の充実に向け、企業のニーズに合わせたカリキュラム充実など大学改革を議題とする。働きながら授業に参加しやすくしたり、学び直しを適切に評価したりする企業側の取り組みの具体策を練る」との表現で企業のニーズを示すことで、「学び直し」がリスキリング教育とつながり、「誰もが」が限定した人へのスキル教育に帰結してしまわないか不安になる。

多様化と柔軟化、それは「学び」の入口に誰でも立てることの前提の言葉だと解釈すれば、やはり支援が必要な人もこの議論に当然として入れるべきであり、これまでの高等教育がインクルーシブな質を帯びていないことは国際比較を見ても明らかで、さらに地域で障がいのある人も学べる環境もまだまだ未整備である。

成長分野の人材育成に向けても、障がいのある人が学びたい意思を尊重するのも、「学び」への可能性を追究することでは同根で、この深い議論こそが、未来の創造を豊かにする道なのだと思う。

さらに「教育改革」で思うのは、「人はどう生きるのか」という問いかけを考える哲学や倫理を大真面目に議論できる環境を整えるのも根本的な改革につながるのではないかとの思いがいつもつきまとう。

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image by: 首相官邸

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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