【高城剛×けんすう 賢者の未来予測】 「進化する脳と停滞する脳」VR革命で起きる人類を二分化する超格差社会

2023.11.07
by gyouza(まぐまぐ編集部)
 

書店の本も超速自炊。電子書籍に適合した高城式読書術

高城:確かに当時の日本は1人当たりのGDPが世界トップ1、2位で、今はもう20台後半ぐらいですからね。その間に、恐ろしい格差も生まれたし、国力自体が低下していますよね。自由民主主義国家の三大国力と言われる経済力(ファイナンシャル・パワー)、文化力(ソフト・パワー)、軍事力(ハード・パワー)の、どれもが周辺国家に抜き去られています。それに対して、けんすうさんは危惧していますか?

けんすう:そうですね…日本は150年以上前にはちょんまげを結っていたり、日露戦争(1904~1905年)のころは、すごいライジングしている感じだったんだろうなと考えると、30年や50年も先の未来はどうなるのか、全然わからないなという気持ちになります。

高城:2019年にノーベル経済学賞を受賞したMITのアビジット・バナジー教授とエステール・デュフロ教授は、「テクノロジーやインターネット、イノベーションが経済成長を促進させるという証拠やデータは一切ない」」と言っています。たとえばビジネス系の映像メディアを見ると、イノベーションが肝心だと言い、インターネットやデジタル、情報化が、これからの生活を変えていくと伝えていますよね。でも、デジタルイノベーションが経済成長を牽引するのは幻想で、経済成長したことは一度もないのが歴史的事実ですが、たぶん多くの起業家はイノベーションを探し求めています。そう考えると、我々はまるで熱にうなされるように、何か変わった物語の中に生きてるんだと思うんですよ。

けんすう:つまり、成長しないけど成長していると思っていることが変わってるということですね。そもそも、インターネットという大きなものが出来ているのに成長しない世界に入っているということですか。

高城:おそらく両方だと思います。インターネットは平準化や利便性を高めたのは事実ですが、これは成長にはあまり関係ない要因なのではないかと。

けんすう:なるほど。面白いですね。

高城:非常に面白いと思っているんです、バナジーの考察は。いまも多くの人は、インターネットというか、デジタルや情報化、透明化やイノベーションが起きれば、日本は成長できるという論調が圧倒的ですよね。でも、それが錯覚だとしたら。

けんすう:かなりまずいことになりますね。

高城:ええ。だから今回、けんすうさんに未来はどうなるのかと感じているのかすごく聞いてみたいと思っているんです。ちなみに少しだけ僕の話をすれば、全く紙の本を買わなくなりました。これにはいくつかの身体的な理由があるのですが、まず、光ってないと読めなくなっちゃったんです(笑)。

高城剛氏

けんすう:光ってるから読みづらいという人は見たことがありますが、光っていないと読みづらいという人は珍しいですね(笑)。目がデジタルの本に適合したということですか?

高城:そうかもしれません。身体的な変化なのか、進化なのか……あえて今日は、進化としましょうか。ただ、紙の本でしか出版されていないものもたくさんあるので、仕方がないから自炊というか、断裁してデジタルで読むんです。先ほど、身体的な感覚のお話が出ましたが、もはや身体感覚が希薄になり、浮遊しているような感覚があります。

けんすう:高城さんは適応するスピードが速いんですよ。きっと。

高城:これは遺伝子というかSNPs(一塩基多型)の問題でもあります。多くの人類は変化に対応しづらくて、だから保守的になる。特に日本人は変化に強い遺伝子を持っている人が少ないことがわかっています。ただ、人類史で捉えると、6万5000年前に人類がアフリカを出て海を渡ったのは、変化を求めたからです。変化していく人たちだけが残り、結局彼らは淘汰されるのが人類史なわけですよね。進化論でも同様です。だから、遅かれ早かれ紙の本ももっと淘汰されていくのではないでしょうか。実際、僕の読者の8割が電子です。進化中の読者が多いんだろうなと勝手に夢想しています(笑)。

けんすう:では、高城さんはもう書店に足を運ばないのですか?

高城:そんなことはありません。書店も好きで、特に古書店には定期的に足を運びます。ただ書店で見つけて、後からAmazonで買って、直接そこから自炊屋に送ってデータにしてもらうことも多々あります。書店で買うと自分で発送しなければいけませんので。

けんすう:いきなり紙の本を自炊している人は聞いたことがないです(笑)。確かに電子書籍なら、暗いところでも読めたり、すぐに辞書で検索できるとかいろんな機能があるので、慣れると便利ですよね。私は今、折りたたみスマホを使っていて、右側に画面分割でChatGPTを出しておき、電子書籍で気になったところを読み上げ続けるんです。そして最終的にChatGPTにまとめてもらうということをしています。これは確かに電子でないとできないし、いろいろと得るものが大きいですね。

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高城:また、電子時代らしいと言いますが、僕は一つの本を最後まで読み通せません。その代わり、同時に7冊くらい並行して読みます。

けんすう:その感覚はすごくよくわかります!

高城:紙の本だと、7冊持って歩かないといけないので物理的にも難しいですよね。たとえば、けんすうさんの「物語思考」を読んでいると、途中で何かが閃いてジョーゼフ・キャンベル(米出身の神話学者)とか読みたくなるわけですよ。キャンベルを読んだら、多分ギリシャ抒情詩を読みたくなる…みたいな広がり方です。ある意味、インターネット的というかハイパーリンク的というか。

けんすうさんの「物語思考」の本のカバーに「やりたいこと」って書いてありますね。となると、「ホモ・ルーデンス」(1938年)を書いたヨハン・ホイジンガに飛びたい。人間の基本は遊ぶ人だと喝破しました。20世紀最大のオランダの歴史家ホイジンガは、「ホモ・ルーデンス」の中で、文化から遊びが生まれたのではなく、遊んでいるうちにそれが文化になってきたと言っています。考えてみれば、AppleだろうがGoogleだろうが、ガレージに集まって、みんな遊びから始まっているわけですよね。遊んでいた場所がたまたまガレージだっただけ。だから、「やりたいこと」という言葉を見たら、ホイジンガが読みたくなるじゃないですか。

けんすう:「ホモ・ルーデンス」は結構前の本ですよね。何度も同じ本を読み返したりするんですか?

高城:僕の人生、基本「ループ」です(笑)、テクノみたいに。思いついた時に読むたび、その本が違って読めるのも楽しみです。ジョーゼフ・キャンベルの40年ぐらい前の「神話の力」か「千の顔をもつ英雄」など、久しぶりに戻って読むと全然違って感じます。こうして、自分の成長にあわせるように、頭のなかで勝手にリミックスが起きて、それが、けんすうさんが書いたものなのか、自分でリミックスしたものかわからなくなってくる。これが楽しい僕の本の読み方です。

けんすう:それは最終的にメルマガとかのアウトプットに繋がっていくんですか?

高城:いいえ、全然(笑)。自分の中で終わってしまっているんですよ。メルマガのアウトプットは、週に6〜8時間向き合って書くということだけが決まっています。その時も読者の質問を読んでその質問に答えているというよりは、質問に自分が感じたことをただ答えているだけなんです。

けんすう:確かに、それは高城さんのメルマガを読んでいて思いました。より本質的な部分に対して答えているというか。

高城:質問に答えている意識はなくて、質問をしてきた読者は何を考えていらっしゃるんだろうということに対して答えている感じですかね。

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