【高城剛×けんすう 賢者の未来予測】 「進化する脳と停滞する脳」VR革命で起きる人類を二分化する超格差社会

2023.11.07
by gyouza(まぐまぐ編集部)
 

拠点を分散せよ!80年周期の壊滅的事象が日本を襲う

けんすう:なるほど。面白いです。逆に高城さんに伺いたいのですが、経済成長ゼロの日本、2023年の今をどのように見ていますか?

高城:アメリカは5年後の2028年にミレニアル世代とZ世代が選挙のマジョリティーになることが決定しています。それがどんなものになるかわかりませんが、今まで政治と関係ない人たちが政治に大きく関わりはじめるだろうと推測していますし、これまでと価値観が違う世代が社会の主導権を握ると思われます。一方、日本では急速な少子高齢化により、若い世代の主張が通りません。これが日本の現在地で、人工分布を見ても20年後も同じ構造なのが確かな日本の未来なのです。個人的には、地震とか経済破綻をしない限り、日本は再スタートできないだろうと正直思ってます。実は、このような大動乱や大転換は80年周期で繰り返されてきました。太平洋戦争終戦からもうじき80年。きっと外的な要因で、それまでの常識が非常識になる。経済破綻なのか、地域紛争なのか、大地震が起きるのか、わかりません。その後、40年かけて立て直していけるかどうかが、日本の未来の分岐点になるでしょう。戦後の昭和のように。

けんすう:確かに、経済破綻しそうな状況ですし、大地震とかが原因となるうことも十分にありえますね。

高城:けんすうさんは東京ご出身ですか? 大地震になったらどうしようとお考えですか? インターネットは生きているかもしれないですけど…。

けんすう:どうしようかなと思います。高城さんはどうですか?

高城:僕は極端に荷物が少なく、家ではなくホテルに住んでいるから、どこでもやっていけます。

けんすう:拠点がたくさんあることは、これからは大事になってきますよね。

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高城:インターネットの基本は“分散”です。もし、原爆が落ちたら全滅するから分散しようという意図でインターネットの原型のARPANETは始まったわけですよね。我々の生活も、インターネットに寄り添ってる間は分散しなきゃいけない。だから、本も含めて全てのものをデジタル化し、瞬時に流動的できたり、バックアップがあるという考えが、僕の源泉に流れているんだと思います。

けんすう:そうですね。高城さんは生活拠点も分散していますよね。

高城:もはや、拠点がないんですよ(笑)。二地点居住とか、15年ぐらい前のトレンドでしたが、僕の中では棲家も仕事もインターネット同様に「メインフレーム」がない。つまり、無拠点居住。紙袋一つを持って、世界中どこにでも行けます。基本手荷物だけ。ガラガラするキャリーケースとか、恥ずかしくて持ち歩けないんです。

けんすう:なぜ、恥ずかしいんですか?

高城:みんなが同じような鞄を持って歩くことに、社会主義的なものを感じてしまうんです。同じ理由でユニクロにも社会主義を感じます。確かに、平等の皮を被った社会主義も一つのトレンドで、リベラル側は民主社会主義であったり、最近は保守社会主義というのも出てきています。いわゆるミレニアル世代がそこで戦ってるわけですけど、保守社会主義は面白くなるかもしれませんね。それが、トランプの次の保守派の指針になるでしょうから。

けんすう:確かに、政治も新しい段階に入っている感じはしますね

高城:最近、イギリス第二の都市・バーミンガムが財政破綻しました。イギリスに限らず、アメリカの西海岸もひどいですよ。サンフランシスコは物価が高くて治安も悪くなり、中心部のユニオンスクエアにあったヒルトンホテルは撤退しました。シアトルはAmazonの本社があり、コロナが終わった後にリモートを止めて出社させるようにしたんです。でも、街の治安が悪くなりすぎていて、もう1回リモートに戻しました。あまりに略奪が多すぎて、もはや950ドル以下の万引きは罪に問われなくなり、ウォルマートも全米で次々と閉店しています。インターネットで起きてることは現実社会でも起きると僕は長年主張していますが、現在、悪い意味も含むフリーミアムが今起きているんです。物は取り放題というか、フリーエコノミクスが起きているから、小売はもう成立しないですよね。

けんすう:車も停めているときに窓を閉めていると割られてしまうので、全部開けっぱなしにして、ものを取り放題にしておいた方がいいというのをサンフランシスコの人から聞いて、アメリカはすごいことになってるなと思っていました。

高城:80年代のニューヨークもそうでしたよ。当時、僕はABCD アベニューっていう、いわゆる一番街二番街にはない番外地の「アルファベットジャングル」という地域に住んでて、毎晩、必ず銃声が聞こえていました。街灯は全部壊れているから真っ暗ですし、車で走っていても絶対に信号で止まっちゃいけないんですよ。止まったら最後、四方八方から来きて、タイヤを外すんですよ、F1のコックピットみたいに(笑)。そういう戦場のようななかで本当に銃弾を掻い潜って遊びに行くのがクラブだったんです。だからパリピがいる場所なんかじゃなくて、みんな命がけでクラブに行っていたんですよ。

けんすう:覚悟が違うわけですね(笑)。

高城:そう、覚悟が違う。そういう危ないところの公衆電話からハッキングするのが、当時の僕の稼ぎだったこともありました。ハッキングといってもデータを取るわけじゃなくて、倉庫のデータを調べて、倒産して閉まってる倉庫を開ける権利を商工会議所にオファーして買うんです。当たりだったら、ロレックスやジュークボックスが入っているし、外れるとデニムが倉庫いっぱいにあるという感じなんですね。それを仲間たちと大量に集めて日本に売って、ヴィンテージデニムブームがはじまりました。そうやって凌いでたんですよ。

そのような銃声が鳴り止まない危ない地域には、ギャングとドラッグディーラー、売春婦とハッカーしかいないけど、お互いゾーニングがわかっているから揉めないというのが、ニューヨークのストリートのルールでした。サンフランシスコも90年代初頭までは荒地の中の倉庫を利用して、そこから1992年に「ワイヤード」っていう雑誌ができて、それがテックカルチャーのサンフランシスコの源流になりました。強いクリエイティビティを伴うなにかは、オフィスや美術館では生まれないんですよ。危ない地域にある倉庫やボロボロのガレージこそが、本当のホットスポットなんです。

「ドーパミン至上主義」に侵されてしまった世界

高城:一方、いま日本でスタートアップをやっている人達は半端に賢いから危険なところに行かないビジネスマンばっかりですよね。これが多分面白くない、というか本当のイノベーションが起きない本質的理由です。だって、なにも困ってないから。会議でKPI(重要業績評価指数)がどうのとか言った瞬間に、僕は帰るんですけどね。

けんすう:めちゃめちゃわかります! 数字を効率よくあげる「最適化ゲーム」の方に今は比重がいってしまっているから、つまらなくなっているのはありますね。

高城:けんすうさんはインターネットの黎明期から活躍なさってきていますが、現在ではビジネスマンにその場所は占められてしまっていますよね。お金儲けが得意な人がいっぱいいて、みんなイノベーションだとか言ってるわけですよね。

けんすう:はい。いかにSNS中毒にさせて、広告をクリックさせるかということに頭のいい人たちのリソースが大量に割かれています。遊ばせるということよりも、どうクリックさせるかだけをやっている方が儲かるとなった結果、クリエイティビティが下がったと思っています。

 

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高城剛(たかしろ・つよし)
Louis Vuitton、SONYなど100本を超えるCMやミュージックビデオ、連ドラなどの監督およびプロデュースを務める。東映アニメーション社外取締役や総務省情報通信審議会専門委員など歴任後、2008年より拠点を欧州へ移す。著書は『不老超寿』『2035年の世界』『いままで起きたこと、これから起きること。』など、累計100万部を超える。著書の販売やカスタマーレビューにおいて最も成功をおさめたKindleダイレクト・パブリッシングの著者に対して授与するAmazon KDPアワードを受賞。2022年には自身が脚本/監督/撮影を務めた初の長編映画『ガヨとカルマンテスの日々』を公開した。 

古川健介(通称けんすう)

アル株式会社代表取締役。学生時代からインターネットサービスに携わり、2006年リクルートに入社。新規事業担当を経て、2009年に株式会社nanapiを創業。2014年にKDDIグループにジョインし、Supership株式会社取締役に就任。2018年からアルを創業。

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