メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』の著者で時代の最先端を常に切り開いてきたデジタル開拓者の高城剛さんと、ネットコミュニティの創成期から活躍するアル株式会社代表取締役でメルマガ『「アル開発室」サービスづくりとスタートアップの“今とこれから”をのぞけるメディア』の著者である古川健介(けんすう)さんによる異色の対談。インターネットやコミュニティーの将来はどうなるのか?混沌とする世界の政治や経済の行き着く先は? 衝撃的な近未来予測が飛び出します。
ネットコミュニティが作り上げた「けんすう」という存在
高城剛氏(以下、高城):さっそく、お話しをお伺いしたいと存じますが、毎週金曜日にメールマガジンを出しておりまして……。
けんすう氏(以下、けんすう):はい。僕も読ませていただいています。
高城:ありがとうございます。たまに号外を出していて、その時に今ご活躍されている方にお会いして、お話を伺っております。今回は、インターネットを中心とした次のコミュニティを探りたく、お会いする機会を頂戴しました。ちなみに「けんすう」さんというのはご本名ではないですよね? なぜ、その名前で活動しているのですか。
けんすう:本名は古川健介といいます。インターネットを始めるときに、みなさんハンドルネームを使いますよね。僕がインターネットに触れ始めた当時は、いろんなサイトでいろんなハンドルネームを使っていたんです。そのうちの一つが「けんすう」で、それがそのまま生き残っているんですよ。
高城:インターネットを始めた当時というのは、1990年代ですか?
けんすう:はい。おそらく99年か2000年ぐらいですね。
高城:というと、ITバブルが弾ける前ですね。
けんすう:ええ。その時は学生の中で匿名掲示板が流行っていて、僕はその運営をやっていて、そこで使っていた名前が「けんすう」です。
高城:当時からのファンが今もけんすうさんを追っかけていらっしゃるんですか?
けんすう:はい。たまに声をかけられてびっくりします。
高城:インターネットでのご活躍が長く、けんすうさんは、コミュニティ形成に関してピカイチだと思います。今回は、コミュニティの未来がどうなるか、次の社会がどうなるかというお話を聞ければと考えています。
そういえば、最近本を出版されたそうですね。「物語思考」という本ですが、すでに手に入りにくいそうですね。
けんすう:ありがとうございます。売れているからなのか、販売の問題なのかは不明ですが(笑)。ありがたいことです。
高城:この時代、いわゆる街中の書店は1日1店舗が潰れていくとも言われていて、紙の本は大変貴重だと思います。この「物語思考」は電子でも人気だと思いますが、あえて紙と電子で出される目的や、その違いをどう実感なさっているかお聞きできますか?
けんすう:そうですね。やっぱり身体的な感覚は大事だなと思っていて、電子の伝え方と紙の伝え方は、全然違うと感じています。僕は両方のタイプで出しますが、個人的な思いとしては紙の方をけっこう重視していますね。
高城:けんすうさんご自身が本を買われる時は、電子と紙、どちらが多いのでしょうか?
けんすう:半々ぐらいですね。
高城:ということは、書店にも行かれる?
けんすう:はい、よく行きます。代官山の蔦屋書店や渋谷のTSUTAYAにも行きますし、六本木にある「文喫」に行ったり、くまざわ書店みたいな感じなところにも行きますね。
高城:書店で新しい本との出会いはありますか?
けんすう:ありますね!電子だと出会えない感じがします。書店では、リコメンドされないのがいいと思っているんです。
高城:自分の力で見て、拾っていくってことでしょうか?
けんすう:それもありますし、Amazonだと「こういう傾向ある人はこうだよね」って通り道に運ばれていってしまって、常に一定の本しか出てこない感覚があるんですよ。外れた道に入ることがないから、新しい情報を獲得できないというか。
高城:自分の射程距離の外にあるものが見えてこないと。AIに理解されていないご自分に興味があるんでしょうか?
けんすう:はい。興味もあるし、仮に興味が無くても本棚にこんな棚がある。それを横から読んでいくと、こんな世界観なんだ…というようなことを知るのって大事なんじゃないかと思うんです。
高城:そうした書店で、最近お買いになった珍しい本はありますか?
けんすう:珍しい本というと…新刊ではないですが、20~30年ぐらい前に書かれた、未来はこうなるという予測をしている本を見るのが面白いですね。最近「2050年の世界」という本が出たんですが、その著者で経済ジャーナリストのヘイミシュ・マクレイが、30年ぐらい前に2020年の金融世界について書いた本があって、それもあわせて読みました。
高城:2020年についての予測については、実際に検証できますよね。だいぶ当たってると思われましたか?
けんすう:当たっているとは思いますが、当時と2020年の今の日本ではテンションがかなり違うと感じました。1995年ぐらいに書かれた本では、まだ日本は元気なイメージで、中国に対してはまだ懐疑的だったりする。現在書かれたものとニュアンスが違うので、そこを読み解くのが面白かったですね。