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貨幣経済から信用経済へ。キャッシュレスが加速させる「人間らしさ」の逆襲が始まった!

「お金を貯めること」より「信用を積み重ねること」が、これからの時代の本当の武器になります。キャッシュレス化が進む社会では、貨幣の役割はすでに「信用」に置き換わりつつあります。そしてテクノロジーは人間を脅かすどころか、むしろ人間らしさを引き出すものだとしたら?今回のメルマガ『尾原のアフターデジタル時代の成長論』では、著者の尾原和啓さんが、貨幣経済から信用経済への大転換と、その先に広がる「ヒューマナイズ」の世界を解説します。
※この記事は2020年2月10日の動画記事化したものです。

決済の原点は「ありがとう」の交換

「信用経済」に向かっていく中で、なぜ「非認知能力」「パッションの見つけ方」「コンパッション」が大事なのか?という話をしたいと思います。

僕のルーツみたいな話も、この中でさせていただきたいなと思っています。今日は、世の中で話している「キャッシュ経済」「オンラインサロン文化」「コミュニティ文化」が、「どういう交点を結んでいるか?」の基礎的な話をします。その中で、僕がITビジネスとオンラインサロンハックの両方をやっているのはなぜか?みたいな話もします。

というわけで、僕の処女作が「ビジネスの原理」という本です。それを用いて「決済ビジネスの原理」みたいな言い方をしています。では、「決済」って何か?というと、元々は物と物を交換する。

まさに僕がオンラインサロンハックの中で言っている、お互いの中に「ありがとう」を見つけて、自分にとってはないものだからあることが難しい。「あなたのあることが難しいもの」と「向こうから見ると自分のあることが難しいもの」を交換しようという中で生まれたのが、決済ですよね。

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では、決済の中でなぜ「貨幣」が支配的になってきたか。結局ものとものを物々交換とすると、肉と野菜は腐ってしまうわけですよね。腐るものだと野菜とリンゴを何個か交換するみたいなことが大変なわけですね。そのなかで、貨幣が生まれました。

貨幣の大事なことは、「価値の測定」です。いちいち「豚肉1個はリンゴ10個、11個分だよ」みたいな交渉をしていると大変です。なので、「豚肉100グラムは80円で、リンゴ1個は120円ですね」と、それぞれ絶対的な指標にしてしまった方が、交換が楽になるんです。でも、こうやって楽になった分、「数字がおばけ化」するという話の文脈にも繋がるんです。

そうすると、一回豚肉を100グラム80円のようにしていき、8000円分という感じで一回貨幣になると、「流通」することは簡単になり、これがデジタル社会ではラインペイとかペイペイみたいに友達にメッセージで送れてしまうのですね。つまり、デジタルになると距離と時間を超えて、一瞬で相手のところに届かせることができるので便利なんですよね。

更に、貨幣が持ってしまった重力が「蓄積」です。貨幣にしてしまうと腐らないので、貯めておくことができちゃったわけですね。そうすると、今まで豚肉は腐ってしまうので腐る前にみんなに分け与えようと、どんどん交換しよう。「最悪これ腐るなら食べちゃえよ」みたいな感じで分けるものが、これをお金に変えてしまうと1万円、2万円、3万円と蓄積できちゃいます。

そうすると、人間はお金が貯まっていると、将来自分が何か健康を害した時に、何とかなるからやめておこうと、人にシェアすることよりも貯める重力の方が強くなったんですね。

しかも、貯めていくと、価値が流通できるので、今までできなかったことができるようになります。例えば海外に行けるってことだったりとか、車を買えるとかだったりとか、ゴージャスな異性の方と交流するだったりとか、「欲望のインフレーション」が起こっちゃうので、蓄積圧力が生まれちゃうんですよね。なので、シェアが起きにくい構造があります。

あともう1個大事なことは、その人は1000万円の貯蓄ができる人だとか、毎月コンスタントに15万円を貯めることができる人だとか、価値を蓄積できることの信用が高まると、人は信用できる人だからお金貸してあげようということになったりします。あと、あなたは既に1000万円貯めているんだったら、800万円までだったら僕が貸してあげるから、それでさらに「運用すればいいじゃないですか」、さらに「ビジネスをできればいいじゃないですか」と。

こうやって価値が蓄積することから信用を貯めることができることによって、蓄積をした人が更に強くなることが起こってしまった、というのが「貨幣の5大機能」が起こしてしまった便利なことであると同時に、重要なことなんですよね。 

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貨幣から信用へ。今起きている大転換

今起きていることは、「貨幣」を全て「信用」と読み替えると、今世の中で起こっていることが分かるわけですね。その人が信用できるかってことが測定できなかったものが、アマゾンのレビュースコアや、メルカリのやり取りの回数や、UberやDiDiのスコアのような形で、この人は信用できるよね。というのが数字でも出せたりするようになりました。

オンラインサロンの中だと、「あの人の発言をよく見るよね」とか「あの人にいいねが付いているよね」みたいな形で信用が測定できるようになりました。しかも、信用がネットによって遠くにつながることができるので、初めて会った人でもメルカリを通して自分の「ありがとう」を交換することができるようになりました。

そして、信用がスコアとして貯まっていきます。スコアが貯まると、中国だと信用スコアが950も貯まったから、海外に行くビザも簡単におりたり、海外に出国する時に専用レーンがあったりします。

そこまでいかなくても、マンションを借りる時に他の人だったら保証人を出さなきゃいけないところをスコアは700以上なら、そんなものを出さなくても「あなたは信頼できる人だから、優先的にうちの部屋を借りてください」みたいな形で、価値の蓄積による行動ができます。

信用ができるということで、信用している人には機会が増えて、機会が増えることによって、新しく信用を蓄積することができるという信用の循環が今起きているわけですね。

こういう世の中の構造を見た時に、残念ながらまだ価値の測定が数字のおばけとして信用を蓄積して測定していて、まだまだ時間がかかっていきます。

なので、どうしてもお金という測定や、偏差値という測定など、既存の物差しの力であり、数字のおばけというものの力を超えたものを僕たちは作っていかなきゃいけないんですね。これが今起きている社会の背景です。

実は僕は「決済のビジネス」をずっとやっていたんですね。実はドコモのi-modeの立ち上げの中で、i-modeって結果的に年間3000億円のコンテンツの流通を生み出したんです。携帯電話はすでに貨幣という情報が付いているし、みんな月額3000円、4000円と、口座から引き落とすというお金を引き渡せるものがありました。

だったら、コンテンツを4桁の暗証番号だけで、「さくっと買えるようにすればいいんじゃないか」というところの仕組みづくりみたいなのに、僕はずっと邁進をしていました。

その後、電子金券開発という、「人にギブをするということで楽しみを増やそう」というお中元をはじめとして、日本最大のギブの会社であるシャディさんと、一緒にジョイントベンチャーを作ったりしました。

また、楽天においては、まさにITとペイメントの執行役員をさせていただいたり、グーグルの中では、メインはモバイル事業開発でしたけど、グーグルペイを立ち上げる時に、i-modeで決済周りも立ち上げの経験があることで、日本ではこういうやり方をやったからグローバルとして「こういうことをやるべきですよ」みたいなことをずっとやっていました。

なので、こういった決済がコミュニケーションとの掛け算になってきた時に、貨幣経済から信用経済へ変わっていく転換点みたいなところが、ものすごく好きです。

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テクノロジーが人間らしさを引き出す

もう1個大事なのが、「2012年に衝撃を受けたSpeech」ですね。後で見ていただきたいんですけれど。https://www.ted.com/talks/sal_khan_let_s_use_video_to_reinvent_education

テクノロジーは、一見すると人間を殺すんじゃないか?みたいな議論があるんです。実は人間性を引き出すものだということを、サルマン・カーンという今世界最大のオンライン教育のプラットフォームであり、ビルゲイツも推している無料で小学校から大学までの基本的な授業を全て受け入れるという素晴らしいプラットフォームをやっている方のTEDでのトークです。

彼は、「学校ほど非人間的なものはない」と言っているんですね。それはなぜかっていうと、学校って90%の時間は、「先生が喋っているだけじゃないか」と。これって生徒のクリエイティビティを殺しているよね。

では、彼がやったオンライン学校は、彼は姪っ子を家庭教師するためにスカイプを使って授業をやっていたんです。授業のまとめをユーチューブにアップしたら、ユーチューブの方が便利だと言われて、衝撃を受けるんです。スカイプでやっていると、「おじさん、今のところ分かんなかったから一回教えて」とか、「実はそこ得意で飛ばしていいよ」みたいなことが言いにくかったりするわけですね。

それに対してユーチューブの動画だと、自分の好きなペースで何回も巻き戻したり、分かっているところはスキップして、テストだけ正解を受ければいいという感じで、自分のペースに合わせた教育ができるようになるわけです。

だとしたら、授業の90%は動画的なダウンロードで済むわけです。この部分は「家でやってこればいいじゃないか」というのがサルマンが言ったことです。その時に学校の役割は、「人間しかできないこと」になるんですね。こうやって動画を「誰が何回も見直したのか」という状態で、「誰がどこに詰まったか」が記録できるわけです。

一方で、「誰が得意か」というのも分かるわけです。そうすると先生の役割は、一時的には分からない人を個別指導するというのもあります。

さらにいいことは、授業の時にこの子に「ここ分かんないでしょ?でもあの子はそこ得意だから、聞きにいきなよ」って背中を押してあげたり、できている子に「他の子がまだまだついていけないからその子に教えてあげなよ。でも教えるということを通して、あなたもより自分で学んだことが言語化できるからきっとすごく得するよ」と、また背中を押してあげたりする感じですね。

ネットでお互いにできることをやっていけばいいということなんですよね。それを持ってサルマンは「ヒューマナイズする」という言い方をしています。

もっと大事なことは、ヒューマナイズをすることが、スクエアやツイッターのCEOをやっているジャック・ドーシーが言ったことです。決済って味気ないんですよね。レジでお金のやり取りするところが手間暇かかるから。でも相手によって見えなくしてしまうんです。

例えば、スターバックスの中では顔認証みたいなことが実験されているんですけど、お金のやり取りをする時間がなくなれば、「○○さんまた来てくださったんですね」「○○さんってこういう苦みばしったコーヒーが好きだから、今度チャレンジしてみませんか」みたいなことで決済は、仕方なくやっているから、それを消してしまえば、人間らしいコミュニケーションに戻るということなんですよね。

僕は楽天に行った時に楽天ってまさにそういうもんだと思いました。つまり、ものだけじゃなくて、物語を売るということです。それは、ものは機能だけだと、コピーを簡単にされてしまう時代なので、物語価値に人はお金を払います。

楽天の中では卵を1つ10円みたいなものがスーパーの安値で売られているものが、「こんなに元気で箸で掴める黄身ですよ」みたいな、元気をいただけて、鶏を大事にしている物語をいただくと1つ70円になるみたいな世界があるわけですね。そうやって物語を流通させることによって元気を売っていくということです。

面白いのですが、さっきの卵で一番売れるパック数は、1パック160個らしいんですね。なぜなら、人って物語をいただいて元気になったら、誰かにお裾分けしたくなるんです。小分けパックで160個入りが売られていて、「昨日楽天さんでスゴい美味しい卵が売っていて、笑顔になるから食べてよ」といって、他の人にお裾分けしていくわけですね。

大事なことは、1個10円から70円になったからといって60円上がっただけじゃないですか。そうすると、友達に2個お裾分けしても120円のプレゼントなんですね。これって、言い方は悪いですが、義理チョコを渡すよりもずっと効率が良い人を幸せにすることですよね。そういう、徹底的に機能をきれいにしていくことで、人間らしさを引き出していくんです。

そうやって、物語を人に伝えたくなると自己伝播していくんです。これは楽天では「Shopping is Entertainment」と言っています。僕はそういうことを引き出したいから学んできます。

ITが人間らしさを引き出していく、人を楽しくしたり元気にしたりしています。そういうエンパワーメントをやっていくということが大事だと思っています。それは、リッツカールトンのプレートの中にもあります。

なぜリッツカールトンという1泊5万円するホテルに人が泊まるのか。というのは、機能が見えなくなるくらいに徹底された世界の上にほんの少しの「悪戯」。ミスティークというのは、妖精の悪戯なんですけど、それがあるからお客さんがめっちゃハマってしまうエモーショナルエンゲージメントを起こすので、お客さんは1万円で泊まれるところを5万円の部屋にお金を払ってもらえるということです。

そういう世界観を作っていくことは、僕が大好きな話なので、どうしても数字のおばけに負けやすい中でみんなの力でどうやって歩んでいくのかということ、深ぼっていければという話です。

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image by: Shutterstock.com

尾原和啓この著者の記事一覧

IT批評家、藤原投資顧問 書生 1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。 マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタート。 NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援を経て、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業立ち上げに従事。 経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。 現職は14職目。シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡ぐカタリスト。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。

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【著者】 尾原和啓 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 月・木曜日 発行予定

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