「今夜、一つの文明が完全に滅び、二度と取り戻せなくなるだろう」——トランプ大統領がSNSに投稿したこの言葉が、世界に衝撃を与えています。数千年の歴史を誇るイラン(ペルシャ)文明を「丸ごと滅ぼす」と宣言した発言に、ローマ教皇や元側近・元支持者たちまでが声を上げ始めました。今回のメルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』では、著者の辻野晃一郎さんが、この発言の背景と世界情勢への影響を鋭く分析します。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです:トランプ大統領の「文明を滅ぼす」という発言
トランプ大統領の「文明を滅ぼす」という発言
日本時間4月8日未明、トランプ大統領が宣言していたイランへのインフラ攻撃のタイムリミットが迫る中、パキスタンの仲介で、米・イスラエルとイラン双方の間で、2週間の停戦に向けた合意がなされたとの報道が突如流れました。
トランプ大統領が宣言していた攻撃が実行されることになれば、イランの猛反撃による中東のエネルギー関連施設への甚大な被害は必至で、世界的な大惨事は免れないところでしたが、一旦最悪の危機は回避されました。この停戦期間中に、何とか双方が終戦に向けた合意に到達することを願うのみです。
しかしながらその後、イスラエルがレバノンのヒズボラを攻撃したことでイランの態度が再び硬化し、ホルムズ海峡の再封鎖を宣言するなど、早くも停戦合意が危ぶまれる状況になっています。イスラエルは何としてでも停戦を阻止したいのでしょうが、本当にやっかいな連中です。
今回は、これらの報道が流れる直前にトランプ大統領がTruth Socialに投稿した以下のメッセージを取り上げます。
https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/116363336033995961
(日本語訳)今夜、一つの文明が完全に滅び、二度と取り戻せなくなるだろう。私はそれが起きてほしくはないが、おそらく現実になるだろう。しかし、今や完全かつ全面的な体制転換が起こり、別のより賢明で、より過激でない人々が主導するようになれば、もしかすると革命的に素晴らしい何かが起こるかもしれない。誰にも分からない。今夜、世界の長く複雑な歴史の中でも最も重要な瞬間の一つが明らかになるだろう。47年にわたる恐喝、腐敗、そして死は、ついに終わるのだ。偉大なるイラン国民に神の祝福を!
「丸ごと文明を滅ぼす」という脅迫にはさすがに驚きを禁じ得ません。イラン(ペルシャ)にまつわるジョークには、歴史の長さを競うものがいろいろとあります。例えば以下のようなものです。
アメリカ人が言った。「我が国で地面を10メートル掘ったら、100年前の電線が出てきた。つまり100年前から通信網があったということだ!」
するとそれを聞いた中国人が言った。「我が国で地面を50メートル掘ったら、2000年前の銅線が出てきた。つまり我が国には2000年前からすでに電話が普及していたのだ!」
するとそれを聞いたペルシャ人が言った。「我が国で地面を100メートル掘ったが、何も出てこなかった。つまり、我が国は2500年前からすでに無線(ワイヤレス)を使っていたということだ!」
また、かつて中国の周恩来首相がイランを訪れた際に、「中国の歴史は長いと言われるが、あなた方の歴史の長さには敬意を表さざるを得ない」という外交辞令を述べたといわれます。数千年単位で歴史を語れる国同士ならではのエピソードですね。
片や、アメリカ合衆国の歴史は高々250年に過ぎません。その国のトップが、数千年の歴史を持つ文明を「丸ごと滅ぼす」などと発言するとは、どこまで浅はかで、傲慢なのでしょうか。
この記事の著者・辻野晃一郎さんのメルマガ
あの「名演説」はどこへ
かつてトランプ氏は、第1期目の2019年9月の国連での演説で以下のように語っており、本メルマガVol.91でも「名演説」として取り上げたことがあります。
https://x.com/lotl_frodo/status/1637020771959840770
「それぞれの国には大切な歴史、文化、遺産があり、それは守り、祝うに値するものです。そしてそうすることが我々の可能性や強さに繋がっています。自由な世界はその国の基盤を受け入れねばならず、それを消し去ったり置き換えたりしようとしてはなりません。壮大で偉大な地球を見渡せば真実は一目瞭然です。あなたが自由を求めるなら自国に誇りを持ちなさい。民主主義を望むなら主権を保ち続けなさい。平和を望むなら自国を愛しなさい。賢明な指導者は常に自国民を優先し自国を第一に考えるものです。未来はグローバリストのものではありません。未来は愛国者のものです。未来は主権国家、独立国家のものです。国民を守り、隣人を尊重し、違いを尊重することがそれぞれの国を特別でユニークなものにしているのです」
今聞き返してみても、ここで語っている内容は本当に素晴らしいと思います。しかし、今やあのトランプ氏はどこにも存在しないか、あるいはあの時の同氏の言葉は本心ではなく、単なるまやかしに過ぎなかったのでしょうか。
元支持者も「悪であり狂気だ」
トランプ氏の「文明抹殺」発言を受け、ローマ教皇レオ14世が「容認できない」とコメントしていますが、ローマ教皇がこのような形で世界の指導者に直接意見することは、極めて異例だそうです。また、米国内でも、民主党議員のみならず、かつての保守派支持者たちも、JDバンス副大統領と閣僚たちに対し、合衆国憲法修正第25条を発動して、大統領を解任するように求めています。
その中には、かつてトランプ氏の熱烈な支持者だったMAGAのマージョリー・テイラー・グリーン元共和党下院議員(Xのフォロワー540万人)や、保守系ポッドキャスターのアレックス・ジョーンズ氏(同450万人)、保守系活動家のキャンディス・オーウェンズ氏(同785万人)なども含まれています。
グリーン氏はXへの投稿で、「25TH AMENDMENT!!! Not a single bomb has dropped on America. We cannot kill an entire civilization. This is evil and madness.(憲法修正第25条を!!! 米国には爆弾1つ落ちていない。文明全体を抹殺することなどできない。これは悪であり狂気だ)」と投稿しています。
https://x.com/FmrRepMTG/status/2041499550012084690
「終わりなき戦争を終わらせる」と訴えて大統領に返り咲いたトランプ氏でしたが、今の彼は、他国に一方的な戦争を仕掛け、「文明を滅ぼす」などと発言するまでになってしまいました。
トランプ大統領については、質問コーナー「読者の質問に答えます!」でも追記します。
(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2026年4月10日号の一部抜粋です。今号はメインコンテンツ「イラン戦争からの気付きや学び」や「読者の質問に答えます!」、「スタッフ“イギー”のつぶやき」など、レギュラーコーナーも充実。この機会にぜひご登録をご検討ください)
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