アメリカとイランによる停戦交渉が事実上の決裂に至り、先行きの不透明感が強まる中東情勢。戦局はもはや地域紛争の枠を超え、大国同士の直接衝突すら懸念される局面へと移行しつつあります。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、イスラエルが排除された交渉の構図やトランプ大統領が置かれている立場を独自の視点で解説。その上で、イラン戦争の行方と世界構造の再編、さらに日本が果たすべき役割について考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:イスラマバードの交渉にイスラエルは参加できず
核兵器は使われてしまうのか。イスラマバードの交渉にイスラエルは参加できず
パキスタンのイスラマバードでの米イラン和平交渉にイスラエルは参加できない。参加するのは、両当事者と、中国、ロシア、サウジ、カタールであり、イスラエルは招待されていない。この交渉後を検討しよう。
イランは当初、10項目の条件を提出していたが、
- 非侵略へのコミットメント
- イランのホルムズ海峡に対する支配の継続
- ウラン濃縮の容認
- すべての一次制裁の解除
- すべての二次制裁の解除
- すべての国連安全保障理事会決議の終了
- すべての理事会決議の終了
- イランへの補償金の支払い
- 地域からの米国戦闘部隊の撤退
- すべての戦線での戦争の停止、包括的にレバノンのヒズボラに対するもの
でしたが、トランプ氏が「交渉」に同意したイランの条件は、
- すべての攻撃の終了
- 制裁の完全な解除
- イスラエルによる攻撃の停止(ヒズボラを含む)
- 再建支援
- ホルムズへの安全な輸送。
- 将来の攻撃に対する保証。対価として、イランはホルムズ海峡の再開(各船あたり約200万ドルの手数料)を行う
というように、要求を緩和している。
トランプ氏は、「イランを石器時代に戻す」と核兵器使用を仄めかしたが、これにより、米国憲法修正第25条4項の副大統領と閣僚の過半数が、大統領が職務を遂行できないと判断した場合に該当すると米国議会が騒ぎ始めた。
同時に、バンス副大統領、ルビオ国務長官は、ヘグセス国防長官の解任をトランプ氏に要求した。核兵器使用については、米軍将校、将軍も命令拒否をしたことで、実行できない事態になったようだ。
そして、それと同時に北朝鮮、中国、ロシアが核兵器を米国が使用した場合には、米国本土に核兵器を打ち込むと脅されて、イラン攻撃での核使用ができないことになった。
このため、交渉に向かうしかないことになった。
UAEは、この交渉に呼ばれなかったことで、パキスタンにUAEからの35億ドルの融資返済を迫ったが、サウジとカタールが急遽50億ドルの融資を行い、即刻UAEに返済した。UAEも米国と組んでイラン攻撃をしたことで、難しい立場になっている。
イランが要求するウラン濃縮については、平和利用について容認する可能性がある。クシュナー氏は容認し、バンス副大統領は容認しないとしている。戦争を続ければ、イスラエルの亡国になることを、ユダヤ人のクシュナー氏は心配しているようだ。
イスラエルが交渉に参加できない状況で、イスラエルの国益を代表するのがクシュナー氏のようだ。仲介のパキスタンは、イスラエルと国交を結んでいないことで外交パスがない。このため、イスラエルは交渉に参加できない。
そして、米国が交渉条件で大きく譲歩した理由は、イスファハンの核施設から核濃縮物運び出しのために、130人程度の特殊部隊を送り込んだが、失敗して大きな損失を出したことと、米艦艇が正確なミサイル攻撃が予想できるホルムズ海峡に近づけないことなど、地上作戦が無理なことで、トランプ氏が中国に頼んで、イランを説得したからのようだ。トランプ氏は戦争を終結させたいのである。
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停戦交渉成立でもネタニヤフに引きずられる可能性が残るトランプ
しかし、イスラエルのネタニアフ首相は、参加できない交渉を妨害するために、イラン攻撃を行う可能性があり、これに対して、パキスタン空軍は、戦闘機とAWACSの支援により、イランとペルシャ湾全域に「保護シールド」を構築し、イスラエルによるあらゆる不測の事態からイラン代表団を守った。
到着後、イラン国会議長ガリバーフは、交渉開始前にイスラエルのヒズボラ攻撃の中止とイランの凍結資産の解放を要求したが、即刻、イラン凍結資産70億ドルの解除が行われたが、イスラエルのヒズボラ攻撃中止はトランプ氏がネタニアフ首相に要求した。
この見返りに、ホルムズ海峡が解放されるはずが、機雷の位置が分からなくなり、解放できないとイラン革命防衛隊は表明した。ホルムズ海峡は解放されないままになっているが、米中央軍は「ホルムズ海峡」での「機雷除去任務」を開始し、複数の米海軍艦艇が11日にホルムズ海峡を通過した。この行動に革命防衛隊は攻撃するとの警告を出した。
イスラエルのネタニアフ首相は、トランプ氏に電話して戦争の続行を要求したが、現状の状況では戦争に勝てないし、中国とロシアがイランをバックアップしているので、このまま戦争を続けると、米国・イスラエル対中露イラン・トルコ連合軍との戦いになる可能性があり、世界的な核戦争に発展する可能性が出てきたことで、ネタニアフ首相の要求を蹴っている。
その上、中国がレアアースの輸出を止めただけで、米国兵器は製造できなくなり、米軍が上陸作戦を行えば、ロシアはチェチェン軍を送り込むという。そして、米国が上陸作戦を行えば、ロシアはウクライナ戦争でウクライナの条件での停戦を行うとプーチンからウクライナのブダノフ大統領府長官に電話があったとも言う。
それと、上陸作戦を行えば、中国は台湾進攻を始めて、台湾の半導体工場を潰すとトランプ氏を脅している。AI半導体が亡くなる危機でもある。米国は武器製造で脆弱である。
そして、第1回目の直接協議が終了した段階で、パキスタンでの交渉は行き詰まりに達したようで、イランは海峡の支配を維持し、通過船に通行料を課したいと望んでいる。一方、米国は共同管理を強く求めているが、イランはそれをきっぱり拒否している。しかし、決裂はしていない。交渉は続いている。
そして、ネタニアフ首相は、汚職の容疑で刑務所行きが確実であり戦争の継続を図っている。トランプ氏が要求するレバノンとの停戦交渉を拒否して、ヒズボラに対して空爆を続けている。
交渉成立時には、米国は助けないので孤立した状態での戦争への再突入となる。負けそうになった時は核兵器に頼る可能性が出てきた。まだ、戦争の推移は分からない。交渉成立でも、トランプ氏もネタニアフに引きずられる可能性もある。
そして、交渉不成立に備えて、米国は停戦中にもかかわらず中東へ米軍増派を継続し、第82空挺師団から約2,000人の兵士とともに、追加の戦闘機が同地域へ移動中であり、追加の海兵隊と海軍も同地域へ向かっている。
12日9時時点の情報であり、その後、状況に変化があるかもしれないので、X上の情報も見てほしい。
もはや同盟国の安保や経済すらも保証できないアメリカ
欧州は、米国のNATO脱退を見越して、次の世界的な秩序体系を模索することになり、ゼレンスキー大統領は、EU+ウクライナ、トルコ、ノルウェー、英国を含む防衛軍事同盟を提案した。
これにより、米国がNATOから撤退する中、全ヨーロッパの海、空、陸を支配することが可能になる。そして、NATO諸国は日本にも参加を要請するために日本に来るという。
一番大きいのは、米国のミサイル防衛が完全な失敗で、日本、オーストラリア、英国などの同盟国が、ワシントンを見限っているからで、米国がもはや彼らの安全保障や経済を保証できないからだ。
この失敗を修正するために、ドローンや新しい形の日英伊の戦闘機開発が必要であり、それにカナダが参加の意向であり、その他のEU諸国も興味を示している。米国兵器を欧州は買わないで日本、韓国、欧州企業から買う方向にシフトした。
それと、ホルムズ海峡の解放と通過料の人民元支払いから、ペトロダラー制は崩壊して、中露イラン連合と欧日豪加の自由諸国連合、米・中南米連合の3つの勢力に分裂することになる。日本は米国連合にも参加するようだ。米国の産業を日本企業の元で復興させる役割がある。
フランスのマクロン大統領は、ニューヨークに保管されていた129トンのフランス金地金を売却し、欧州の金に置き換えた。フランスは現在、全ての金地金をパリに保有したことで、戦略の大転換したことになる。米国を信用しないということだ。ドル基軸通貨制度は崩壊し始めている。
多くの中央銀行の外貨準備金をドルから金、人民元などに変える動きが出ている。このため、10年米国債の金利は4.3%と上昇している。ベッセント財務長官も、なすすべがない状態になっているし、米国債は40兆ドルにもなっている。戦争で歳費が積みあがっている。
金利が上がり、米国債が積みあがると、利払いができなくなる心配が出てくる。債務の再編成という棒引きが必要になる。その方向に米国は向かっている。ベッセント財務長官もそれを止める手立てがなくなっている。
一方、日本は、湾岸諸国の石油関連施設の復興を支えること、ウクライナの迎撃ドローン製造を行い湾岸諸国の安全に寄与すること、停戦後の機雷の除去などができるようだ。また、ホルムズ海峡を迂回するUAEの運河建設にも協力できることになる。日本が和平成立後は、湾岸諸国で大きな力を発揮することになる。
停戦後、英仏独などもホルムズ海峡に機雷除去の部隊を送るはずで、ホルムズ海峡を解放しなければ、英国を中心に40ケ国で共同して、イランに要求することになる。
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中国からの飽和ミサイル攻撃を迎撃できる手段など持たぬ日本
現時点で、米国の覇権はない。次の時代をどう作るのかが、今問われている。その前に中国との関係をどうするのかという問題が出てくる。
そろそろ、中国との関係を正常化させる必要がある。国会答弁を削除するだけであるし、米国が台湾有事でも助けに来られないことは確実である。来たとしても、物の役に立たない。飽和の正確なミサイル攻撃に米艦隊は、台湾に近づけない。
もし、日本が、中国と戦うなら、主要軍事施設を山の頑丈な地下に作り、長距離ミサイルで攻撃するしない。この準備は短期間ではできないことが明白である。それなら、日中正常化をするしかないし、台湾の非武装統一を容認するしかない。
そして、高市首相は、シェルターを全国に作るというが、間に合わない。早く、ビーム砲の完成が必要になっているように思う。それまでは、飽和ミサイル攻撃を迎撃できる手段がない。
それと、日本は平和の使者として、中東諸国に復興支援を行うことである。
イスラエルの人たちも助けることである。日本は民族を問わずに、全員を助けていくことが、使命であると思う。
そして、日本の「他者を配慮する」という心を世界に示すことであるし、日本の良さは、「相見たがえ」であり、苦しむ国を何の見返りも求めずに助ける文化だと思う。これが次の秩序維持には必要なことだと世界に示すことだと思う。
さあ、どうなりますか?
(『国際戦略コラム有料版』2026年4月13日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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