MAG2 NEWS MENU

社民党は“会見から追い出し”、共産党は“人格攻撃”。日本の左翼政党が抱える「組織的パワハラ」の深い闇

4月6日の社民党党首選で再選を果たした福島瑞穂氏が、対抗馬の大椿裕子氏を記者会見から事実上追い出す一幕がありました。一方、共産党でも党方針に異を唱えた女性県議へのパワハラが続いています。「リベラル」を標榜しながら、なぜ異論を封じ込めるのか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では、著者でジャーナリストの高野孟さんが、自身の共産党活動経験も交えながら、日本の左翼政党に根づく異論封殺の体質を鋭く解剖しています。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

「左翼」は味方を減らして自分が孤立し、「リベラル」は味方を増やして敵を孤立させる

4月6日に行われた社民党の党首選で再選を果たした福島瑞穂は、その直後の記者会見で、対抗馬だった大椿裕子=元参議院議員が同席していたにも関わらず、彼女に発言の機会を与えなかった。記者が大椿に敗戦の弁を求めると、司会役の党職員が「新党首の会見なので党首への質問に限るように」と遮り、福島も「今日は私の就任会見なので私が答える」とそれに同調した。このため大椿は「ひどい。候補者は平等に扱われるべきだ」と抗議の声を上げて途中退席した。

かつては自民党政権を脅かすほどの野党第一党だった社民党(1996年まで日本社会党)も、今や福島と当選1期目のラサール石井副党首の参議院議員2人だけの小党。コップの中の嵐どころかおチョコの中のさざ波にもならないような話なのだが、後に大椿がSNSなどを通じて明らかにしたところでは、先の衆院選の沖縄2区での候補者擁立をめぐる同党の混乱が背景にあったようだ。

衆院沖縄2区をめぐる社民党の混乱

同区では、社民党唯一の衆議院議員で副党首でもあった新垣邦男が「オール沖縄」候補として次期に挑むはずだったが昨年11月、福島との方針上の意見の相違から離党し、立憲民主党入りした。ところがその後、今年に入って急転直下の総選挙、にわか造りの中道改革連合、辺野古基地建設反対方針の行方不明……という展開の中、福島は急遽、辺野古反対を鮮明にする端慶覧長敏=元衆議院議員/前南城市長を社民党公認で擁立、新垣にぶつけた。もちろん、辺野古反対の旗を意地でも掲げ続けるという意味で、それは1つの決断ではあったろうが、しかし福島のやり方は余りに上から目線で、現地の事情に即して丁寧に合意を作り上げるということからかけ離れていた。結果は、見るまでもなく両者共倒れで、そのため現地組織はますます大混乱。その時に大椿は、福島を公然と批判、服部良一幹事長から「反党行為」と糾弾されて副党首を辞任させられていた。

そういう経緯があったため、福島や党本部職員は沖縄2区での共倒れへの責任を蒸し返されるのを恐れて、大椿に発言させないようにしたものと見られている。しかし、党首の座を今しがたまで争った相手への尊敬の念もカケラもなしに、事実上、会見の場から追い出したに等しいこの所業は、同党のどうにもならない末期症状を示している。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

共産党でも横行する異論封殺のパワハラ

さて、もう1つの左翼政党=共産党でも、党方針に異を唱えた神奈川の女性県議=大山奈々子に対する異論封殺のパワハラ加害が続いている。彼女は、「SNSで党の決定に反する意見を党外に発信を繰り返した」などとして昨年11月に公認を取り消されたため、3月31日までに離党を届け出、来春の統一地方選挙には無所属で挑戦すると発表した。

ことの発端は、共産党の元本部職員・議員秘書で、2006年以後は「かもがわ出版」編集主幹である松竹伸幸が21年に出版した『シン・日本共産党宣言/ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(文春新書)で、これに対し共産党中央が「党の決定に反する意見を勝手に発表してはならない」などの党規違反に当たるとして除名処分にした事件である。これについては、内田樹らが『松竹さんを共産党に戻してください』(あけび書房、25年刊)と呼びかけるなど、マスコミでも大きく取り上げられたので、ご記憶の方も多いだろう。

この松竹除名処分問題を、24年1月に開かれた第29回党大会の席上、代議員として発言した中で正面切って取り上げ、党内民主主義のあり方を問いかけたのが大山県議だった。その発言は、市民社会の常識からすればごく自然な感覚をベースに、松竹から大会宛に提出されている処分の「再審査請求を適切に受け止めて国民の疑念を晴らしてほしい」と要望したもので、発言後半の該当部分を文末に《資料1》として改めて収録する。ところがこれに対する党側の態度は実に驚くべきもので、この大会で初の女性委員長として選出されることになる田村智子が「結語」の中で、こう言った(該当部分の全文は《資料2》)。

「まず、発言者〔大山のこと〕の姿勢に根本的な問題があることを厳しく指摘する」「発言者が述べたのは、ただ『党外の人がこう言っている』ということだけで……あまりにも党員としての主体性を欠き、誠実さを欠く発言だ」「発言者は『除名処分というのは対話の拒否だ』と述べたが、党を除名された元党員〔松竹のこと〕は、一度として党の正規の会議で、一度として正規のルールにのっとって党に意見を提出したこともない。党内での一切の対話の努力をしないまま、党外からいきなり党攻撃を開始したというのが事実」と。

これではまるっきりの全面的な人格攻撃で、こうやって田村が叫べば叫ぶほど、大山が言う通り、世間は「やっぱり共産党って怖いね」と思うのである。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

「左翼」と「リベラル」は対立概念である

この田村の言葉は、毛沢東『矛盾論』に照らして言えば、本来は組織内の「対話を通じて意見の違いを熟成させ止揚させていくべき和解可能な内部矛盾」と、それが不可能な「敵対的矛盾」の区別をつけられないという、初歩的な弁証法的理性の欠如の典型である。私に言わせれば、こんな人物に共産党の委員長など務まるはずはないと思うが、まあ人材不足ということなのだろう。

「党の正規の会議で正規のルールにのっとって」だと? 笑わせてはいけない。私は学生運動華やかなりし60年代後半に早稲田の学生総細胞サブキャップとして党員・民青同盟員700人余を率いていた時代に、党の直接の上部に当たる新宿地区委員会の「赤旗日曜版を明後日までに100部読者拡大してこい」とかいった理不尽極まりないノルマの押し付けなどに抗議する手紙を(新宿地区に出しても握りつぶされるから)東京都委員会や中央委員会の正式・非正式ルートに乗せて何通届けたか分からないが、一度として返事すら貰ったことはない。規約にそう書いてあるということと実際にその通りに運用されているかとの間には天と地ほどの違いがあって、この党の問答無用・上意下達の軍隊式の「命令」体質の酷さは経験したものでないと分からない。

私がようやく大学を卒業することになった頃、今度は都委員会のK部長から呼び出しがあり、「憲法会議という団体があり、そこで事務局長の人材を必要としているので、ぜひ君に行ってもらいたい」と言う。「冗談じゃありませんよ。私は今までの活動経験と卒論の内容の延長でジャーナリストの道を選ぼうと決意をしてすでに就職の目処も立っているのでお断りします」と答えると、Kは怒って「何だ君は党の決定に従えないのか!」と怒鳴る。「決定だなんて嘘をついちゃいけませんよ。都の常任委員会で私の就職先を決議したんですか? もし本当にそうなら、再度会議を開いて私を出席させて反論の機会を与えて下さい」「いや、もう決まったことだ」——と廊下の応接セットで押し問答していると、そこへ旧知のT副委員長が通りかかって「おお、高野君、ここで何してるんだ」と言う。これこれだと説明すると、Tは「そんなことを都委員会が『決定』する訳がないだろう。K君、出まかせで『決定』など振りかざしちゃダメだよ。高野君に謝りなさい」と言ってくれて、私の人生は救われたのだった。

しかしその後も、私があらぬ嫌疑で党中央に「拉致・監禁・査問」されて重ねてさらに酷い目に遭ったことについては、『INSIDERの50年』に少しだけ書いたので参照して頂きたい。

共産党は口を開けば「民主集中制」がいかに優れた仕組みかを宣伝するが、実態は無能な党官僚どもの出鱈目な組織運営の道具に成り下がっていて、それこそが同党の長期低落傾向の重要な要因とさえなっているのである。

今回の出来事でも改めて印象付けられるのは、社民党と共産党に共通する古色蒼然の組織感覚である。《表》は、私が以前から講演などで用いてきた「リベラルと左翼の比較対照表」で、以前に立憲民主党の時だったかもっと前だったか、超党派の「立憲フォーラム」で配布してお話しをしたら、すぐに演壇に寄ってきたのは長妻昭=元厚労相と小川淳也=現中道共同代表の2人で、「これ、面白い」「どこの有名な政治学の先生が作った表ですか」と言うから、「何を言うか、私のオリジナルだ」と答えたのだった。

福島の妄言に対する朝日新聞デジタルでのコメントで、中北浩爾=中央大学教授が「社民党はいよいよ存続の危機に直面しているといえます。記者会見の動画を見る限り、現執行部の異論封じは、寛容なリベラルからは程遠いといわざるをえません」と言っているのを見ると、彼はリベラルと左翼は別物であることを理解していないようだ。ぜひこの表を前に、なぜ日本に本物のリベラル政党が育たないのかを一緒に考えて頂きたい。

《表》リベラルと左翼の比較対照表

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Shutterstock.com

高野孟この著者の記事一覧

早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 高野孟のTHE JOURNAL 』

【著者】 高野孟 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週月曜日

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け