消費税の減税をめぐる議論が続くなか、その財源をどこに求めるのかという問題も大きな論点になっています。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、法人税の税率や優遇措置、企業の利益と人件費の関係などを取り上げ、法人税の引き下げが賃金にどのような影響を与えてきたのかを考えます。
法人税を下げても賃金は上がらない
ついに消費税の食料品減税が実現されますね。
この食料品減税は2年限定となっており、2年後に税率が戻されることに早くも反対意見が頻出しています。
特に「消費税よりも法人税を上げろ」という意見がよく聞かれます。
また2年後を待つまでもなく、現在の段階でも消費減税の財源として法人税を増税すべきではないか、という意見が与野党の間で生じています。
国会議員のみならず島根県の丸山達也知事も、
「過去最高益を繰り返しながら十分な投資もせず、その企業以外に恩恵を一切感じさせないような状況を作ってきた方々に負担してもらうのは当然中の当然だ」
「(2年限りの)時限の消費税減税の(代替)財源にするということは、法人税増税も時限ということになるが、それでは足りない」
「自分の会社と株主以外に利益還元をせずにやってきた人たちに対して、応能、応益負担を求めるべきだ」
などと述べています。
これらの意見に対して、経団連は敏感に反応し、「日本の法人税は世界的に見て高い」などと厳しく反対しています。
以下の配信記事を読んでください。
法人増税「賛成できない」 消費減税代替論をけん制─筒井経団連会長(時事通信2026年09月07日配信)
経団連の筒井義信会長は7日の記者会見で、食料品の消費税減税の代替財源として法人税を引き上げる案が与野党の一部で議論されていることに対し、「賛成できない」と述べ、けん制した。
筒井氏は、高市政権の経済政策を踏まえ、経団連の掲げる「『投資けん引型経済』の確立に向け、官民一体で歩んでいるところだ」と説明。政府に対し「その動きをサポートしてほしい」と呼び掛けた。
また、「主要国の中で日本の法人実効税率は既に高い」とも指摘。企業立地の国際競争力の観点からも、法人税の引き上げは望ましくないと訴えた。
~配信記事ここまで~
この記事を見ると、経団連の筒井会長は法人税増税には反対であり、その理由は「主要国の中で日本の法人税はすでに高い」ということを挙げています。
経団連が長年法人税の減税を主張してきたのも、この「主要国の中で日本の法人税はすでに高い」ということが理由です。
しかし、実は日本の法人税は、主要国の中で決して高い方ではないのです。
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2023年11月16日号でもお伝えしたように、日本の法人税は名目的には世界で非常に高い部類ですが、抜け穴がたくさんあるので実質的には非常に安いことになっているのです。
たとえば、日本では試験開発費減税というものが行なわれており、事実上、法人税が20%下げられているのと同じなのです。
しかもこの試験開発費減税は適用条件により、ほぼ大企業が独占的に享受しているのです。
外国の子会社から配当を受け取った場合、その95%は課税対象からはずされる、という「外国子会社からの受取配当の益金不算入」もあります。
これにより、海外に子会社や工場を持つ企業などの税金は非常に安くなっています。
これらの抜け穴により、日本の会社の実質的な法人税率は非常に低くなっているのです。
日本の名目上の法人税率は23%ですが、税引前純利益に対する法人税額は15%を切っているのです。
これはタックスヘイブン並みとまでは言えませんが、先進国の中では断トツに安いのです。
また「法人税を上げれば、企業が海外に出ていく」ということもよく言われますがこれもデマです。
消費税導入以降、なぜ法人税が下げられてきたかというと、「国際競争力を上げるため」ということで、財界が働きかけてきたからです。
今の日本では「国際競争力」を持ち出されると、だれも反対できない雰囲気があります。
「このままだと、日本の優良企業はみな海外に移転してしまう」などと言われると、政治家たちは恐れおののいて法人税を下げてしまうのです。
しかし、法人税というのは、実は国際競争力とはあまり関係ありません。
それは、ちょっと会計の知識がある者ならば、すぐにわかるはずです。
というのは法人税(住民税も含む)というのは、企業の支出の中で、わずか1%にも満たないのです。
法人税自体が支出の1%しかないので、税率が10%下がっても企業の支出に寄与する部分はわずか0.1%程度しかないのです。
考えてみてください。
企業がわずか0.1%の支出削減のためにわざわざ外国に進出するでしょうか?
外国に進出するということは、様々なリスクが伴うのです。
相手国の国情など、様々な危険要素があるのです。
支出がわずか0.1%減るくらいでは、到底ペイできるものではありません。
企業が海外に進出するのは、人件費や土地代の安さが最大の理由です。
実際に、今より法人税がはるかに高かったバブル以前よりも、法人税が著しく下げられたバブル以降の方が、日本企業の海外進出ははるかに多くなっているのです。
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また「法人税を上げれば社員の賃金が下がる」という主張をする評論家などもいますが、これも嘘です。
というのも、会計の会計の仕組み上、法人税が下げられれば、サラリーマンはむしろ損をすることになっているのです。
法人税が高い場合は、企業は必要以上に利益を出さないようにします。
利益を出しても、税金に持っていかれるからです。
企業は儲かっている時や金に余裕があるときは、税金を払わないために積極的に経費を使おうとします。
当然、社員の給料もたくさん出そうとします。
これは、もちろん景気対策にもなります。
企業がなるべく経費を使い、社員の給料を上げるようになれば、世間の消費は増えるからです。
ところが、法人税が減税されればどうなるでしょうか?
企業はなるべく利益を多く残そうとします。
となると経費は切り詰める方向に傾き、社員の給料には下げ圧力が加わります。
会社が儲かったとき、その利益にはあまり税金がかからないから、利益として残した方が得になるのです。
実際に1999年に法人税は大減税されていますが、それ以来、サラリーマンの平均年収は下がりっぱなしなのです。
先進国でこの30年、賃金が上がっていないのはほぼ日本だけなのです。
またOECDの発表データでは、2022年には日本の賃金は韓国よりも低くなっています。
この30年の間に、大企業は大収益を上げていたにもかかわらず、です。
法人税が下げられたから、企業としては安心して利益を計上できたのです。
「法人税を下げればサラリーマンの給料が下がる」
というのは、理論的にもそう言えることであり、現実のデータでも証明されているのです。
このように現在の日本で、税金をかけるとするならば、断然、消費税ではなく法人税なのです。
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